ファンタジーと銃
黒崎 「今回の小粋なネタは『ファンタジーにおける銃の是非』」
チ 「この場合の〝ファンタジー〟は〝中世ヨーロッパ風味の剣と魔法の世界〟って解釈でバッチグーなのです?」
黒 「うん。そこに銃砲を登場させるのは是か非かって話」
チ 「好きにすればいいのです」
黒 「だよな。よし、終わり。──って、もっとグダグタかつネチネチめかしてダラダラと語らせろ」
チ 「好きにすればいいのです」
黒 「むう。次回の挿絵は貴様のM字開脚フルヌード無修正に決定でよろしいか?」
チ 「BANされる覚悟があるなら、好きにすればいいのです」
黒 「くっ……! 絶対的権力を盾にするとは卑劣な」
黒 「冗談はさておき本題。この『ファンタジーと銃』の問題、ざっと見たところ否定派が多いみたいね」
チ 「ファンタジーに銃は要らないと?」
黒 「そう。で、その論調はおおむね三つに分けられる。順にネチョっと考察してみよう」
①【世界観に合わないから不要】
黒 「まずは『剣と魔法の世界に銃はそぐわないから要らない』という意見。もう一歩踏み込んで『ファンタジーに銃が出てくるのは邪道』と言い切る人もいるとか、いないとか……」
チ 「おー。いろいろな作品を全否定とは、豪気な猛者なのです」
黒 「そのあたりは掘り下げると面倒臭いから傍観な」
チ 「さすがは蝦夷のチキン太郎。祟りそうな神には触らずにイキるナイス害ぶりに拍手喝采なのです」
黒 「勝手に嫌な異名を作らないように」
チ 「ところで文明水準的にはどうなのです? 中世欧州ベースの世界に銃があってもいいのですか?」
黒 「それは時代考証による。西洋史の〈中世〉はすごく長くて、どの時期を切り取るかによって文明水準が大きく異なるから。
ただ、いわゆる〝なろう的異世界〟の大半は生活様式からして中世末期か近世初期って感じだから、火打石型の前装式滑腔銃ぐらいはあってもいいと思う」
チ 「三銃士が持ってるやつみたいな?」
黒 「そう。ちなみに中~近世の日本では、複数の銃身を束ねて連射できるようにした火縄銃が作られたりもしてるんで、そういうのがナーロッパにあっても不自然ではないだろうね。あくまでも技術考証的には」
チ 「なるほど。じゃあじゃあ、お主も悪よのぉ~な越後屋さんとかが懐に隠し持っていそうな短銃は?」
黒 「あってもいい」
チ 「マックイーンが『拳銃無宿』で使ってたみたいな、ストックと銃身を切り詰めたウィンチェスターは?」
黒 「ランダル銃? それはさすがに無いわ。つーか、若人そっちのけのマニアックなチョイスやめいw」
チ 「ふっふふーん♪ 御主人のイマジナリー相棒なボク様に銃を語らせたら木下優○菜のインスタよりウザいこと必定なのです」
黒 「こじらせ信者が多い界隈の実名あげるのもやめような」
②【魔法があるから銃は無用】
黒 「続いての意見はこちら。『〝武器〟としての魔法が発達した世界だと銃は必要とされないだろうから存在しない』説。これ、どう思う?」
チ 「うーん。確かに、誰もが気安くメラとかヒャドとかザラキとか使える世界なら、銃は発明されないかも」
黒 「誰もが気安くザラキを使う世界って嫌すぎるけど……まぁ、言いたいことは分からないでもない」
チ 「おや? なにやらネチっこい反論がありそうな口振りに聞こえるのは気のせい?」
黒 「残念ながら気のせいではない」
チ 「さすればレッツ粘着なのです」
黒 「様々な魔法がごく一般的な職能として普及し、街で石を投げれば魔法使いに当たるってぐらいにありふれた世界であれば、銃なんてもの発明されないかもしれない。──が、その論法だと、銃以外の様々な事物も否定されちゃうんだよねぇ」
チ 「たとえば?」
黒 「魔法でバトるから銃は無用というなら、弓も要らなくない? つーか剣も槍も要らなくない? 鎧だってほとんど意味無くない? 結果、それらを造るための様々な技術&理学は発達しないし、そこから派生するであろう多くの文明の利器や英知も存在しえなくない?(にちゃあ)」
チ 「おー、思ってた以上にネバついてるのです」
黒 「粘着、粘着ゥ!」
チ 「なんか半端にDIOってるから紫外線ライト当てちゃおうかな。超強力なの」
黒 「普通に失明するからやめて。ともかく、魔法があるから銃が発達しないって論法は色々と矛盾をはらんでるのよ。もっと単純に、高性能の火薬がまだ発明されていない、みたいな設定のほうがいいんじゃないかな。
んじゃ、次いこう」
③【書きにくいから要らない】
チ 「……きゅ? どゆこと?」
黒 「そのままの意味だよ。銃撃戦あるいは銃対剣の戦いだと、剣戟みたいな〝力と技の応酬〟にはならないだろうから、見せ場を作りにくい。なので銃なんか無いほうがいい、ってこと」
チ 「ほほー…………」
黒 「言いたいことは想像つくけど言うなよ。書きにくいから書きたくないとか思う人は、ぶっちゃけ物書きに向いてない気がする──とか迂闊に言うなよ」
チ 「勝手に代弁してくれてメルシーボク様なのです」
黒 「しまった。僕様としたことがっ!」
チ 「そういう茶番を平気でやりきる御主人に敬意を表するのです。でもって質問。銃と剣のバトルって、チャンバラよりも書きにくいものなのですか?」
黒 「うーん……どうだろ。個人的には、さほど変わらないと思うけど」
チ 「でも、銃のほうが圧倒的に有利だろうから、一瞬で終わっちゃうのでは?」
黒 「そうとも言い切れないんだな、これが。FPSが好きな人なら分かると思うけど、条件次第ではナイフ一本で自動小銃に勝つことも充分に可能だよ。ナーロッパにあっても不自然ではない技術レベルの銃なら、わりと面白い勝負になるんじゃないかな」
チ 「しからば具体例ぷりーず」
黒 「そうだな……たとえば市街地の広場で二人の男が決闘するとしよう。一人はショートソードと鉄の円形シールドを持った剣士。相手は単発のフリントロック式短銃を持った銃士。二十メートルほどの間合いで、いざ勝負! さて、どうなる?」
チ 「バーンと一発で勝負あり?」
黒 「それはどうかな。短銃(拳銃)は基本的に護身用で、実戦における有効射程距離は意外と短いし、命中精度も低い。二十メートルも離れた標的を撃つには、しっかり構えて狙う必要がある。ましてや盾を構えて動き回る人間の急所を一発で撃ち抜くのは、至難の業だろうね。
さらに言うなら、フリントロック式の銃は引金を引いてから発射されるまで一秒ほどの間隔があるんで、なおさら当てにくい。しかも単発で再装填に時間がかかるから、数打ちゃ当たる戦法は使えない」
チ 「てことは、もしかして剣士のほうが有利?」
黒 「このケースなら、そうかも。もちろん剣士は近づかないと攻撃できず、近づくほどに急所を撃たれるリスクは増すわけだけど、鉄製の盾を持ってることが大きいな。盾を正面に構えて左右にステップを踏みつつ接近し、銃士の虎の子の一発をしのぎさえすれば──勝負ありさね。
ドンデン返しが欲しいなら、銃士が投矢や手裏剣等の暗器を持っていたとか、単発だと思っていた銃が実は連発式だったとかいうのもいいかも。ちょっと小狡いけど」
チ 「なるほど。そう聞くと、剣と銃の戦いも面白そうなのです」
黒 「だろ? シチェーション次第で充分に盛りあがると思うよ」
チ 「──そういえば、肝心の御主人の意見をきいてなかったのです。ファンタジーと銃について、御主人はどう思ってるのです? 無用? 歓迎? 容認?」
黒 「どうでもいい」
チ 「……んきゅ?」
黒 「だから、どうでもいい」
チ 「さんざんネチっと語っておいて?」
黒 「うん。どうでもいい。というか、そもそも〝ファンタジーはかくあるべき〟みたいな発想は窮屈で嫌なんだよね。それを違和感無く許容しうる世界観なら、ゴブリンの大群をガトリング砲で蹴散らしたっていいし、機銃掃射をステッキで弾き飛ばす魔法少女がいたってよくない?」
チ 「まぁ、それはそうですけど……」
黒 「大事なのは〝それが存りうる世界観なのか〟だと思うんだ。そりゃあ『指輪物語』にキラーマシンが出てきたら噴飯ものだけど、ドラクエなら別に違和感無いだろ? そういうことさね」
チ 「うきゅー。いかんともしがたく丸め込まれた感を拭えないボク様でありますが──ま、いいや。おしまいっ♪」
──終劇──