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食堂での思い出

「あ、私はもう行かないと。一応学校の見回りの担当なので。生徒達に自由を与える為には大人が頑張らないといけないから。」

 腕時計をチラッと見た鈴木さんはそういうと校内の見回りに行ってしまう。校内に学生以外が入れるこのタイミング。いくら正門での確認をしていると行っても万全ではない。学生達も比較的自由に行動しているから不審者に気を配らないといけないようだ。学生の時には気づけなかった先生達の苦労を同級生から感じることになるとは。歳をとったな。


「…学校の先生って大変なのね。」


「うん、やっぱり好きじゃないと出来ないよね。」

 教師になる為には大学で正規の科目以外に膨大な教職課程を履修し取得しなければならない。その上で教育実習をこなすのだ。それでも教員になれるとは限らない。更に地方自治体や学校の採用試験に合格しなければならないのだ。なった後にも苦労が多いときく。それでも教員という仕事が成り立つは凄いことだと思う。


「さて…鈴木さんと話していたらまぁまぁ良い時間になったな。この時間なら食堂でいいか。」

 期せずして時間を潰すことに成功した僕たちは食堂に向かう。外観は僕が学生の時から変わっていないがパンなどを売っている購買部の業者が変わっている。僕は食堂の中の席に腰を下ろす。


「昔は手作りのチャーハンとか唐揚げとかがあったけど既製品が多くなってるね。」

 やはり大手にはそれだけのノウハウがある。一括仕入れによって材料費を削減できるし同一規格の物を生産する方が効率も良い。手作りの弁当とか、ホットスナックは採算に合わなかったようだ。


「何にしようかしら?。…カップ焼きそば…。…ダメダメ…、今日はそんなにカロリーを消費してないわ。じゃあ、おにぎり?。…あ、ツナマヨ…エビマヨ…、高菜。」

 美咲が吸い寄せられていく。普段外食をしない美咲にはコンビニで売っているようなおにぎりが新鮮なようだ。コンビニのおにぎり美味しいよね。日本に生まれて良かったと思う瞬間だ。そんなおにぎりが安価で購入できるのは大手があるおかげだ。大手は悪じゃない。ただ中小と共存が難しいだけなんだ。


「…買ってきました。…こ、これはその…楽しくなっちゃって。」

 僕が小売業の行く末に思いを馳せていると美咲が帰ってきた。その手に持つ袋からはおにぎりが3つとフランクフルト、そして唐揚げ棒が姿をのぞかせている。中々思い切った買い物だ。チラチラとこっちを見てくる。


「別にそれくらい食べても全然大丈夫だよ。それじゃあ僕も買いに行ってくるよ。」

 不安そうな顔をしていた美咲にそう告げるとぱっと笑顔を浮かべる。


(…うーん、おにぎり、それにサンドイッチ。まぁ、今日は場所を取らなくて数を確保できる物がメインになるよな。…お、これは…)

 棚を物色していく中でめぼしい物を数点見つけて購入する。そして食べる為に必要な下準備を終えて席に帰る。


「…うわっ、おっきい。これぞ高校生サイズって感じね。」

 美咲が僕が持ってきた物を見て驚愕の声をあげる。カップラーメンの超ビックサイズである。普段は中々見ないがこんな所にあったとは。


「そしてサンミーだよね。僕、これを部活前に食べるのが好きだったんだよね。」

 神戸屋が発売しているサンミー。関西でも知らない人がいるらしいが是非食べてもらいたい。


「へぇー、あー、そういえば男の子達が食べてたかも。私それ名前は知ってるけど食べたことなかった。」

 なんとこんな所に未サンミーの者が。僕はサンミーを千切り美咲に渡す。


「…美味しい。基本はデニッシュなんだけどそこにクリームとチョコ、後生地がケーキみたいね。…カロリーは高そうだけど。」

 僕は美咲にサンミーの袋を裏返して見せる。


「…え‼︎…500kcal!。パン一個で⁉︎。…それなら私はおにぎりで良かったわ。」

 菓子パンは総じてカロリーが高い。学生の時は1日に六千キロカロリーぐらい取らないと大きくなれないから菓子パンが重宝したのだ。


「あー、懐かしいな。このセットとかまんま僕の部活前(ウエイト限定)のルーティンだったからね。」

 流石にグランドでの練習前は普通サイズのカップ焼きそばとかだけだった。


「…私も特に何もせずに太らなかったあの頃にもっと菓子パン食べておけば良かったわ。」

 歳を取れば取るほど食べたい物が食べられなくなる。だからこそ学生の時の食事制限はやめたほうがいい。痩せたいのなら運動量を増やせばいい。


「心実には私の後悔をしっかり伝えないとダメね。」

 そう決意した美咲を見ながら僕はカップ麺を啜るのだった。

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