御厨さんのご両親
「初めまして。御厨の父の幸一といいます。日頃娘が心実さんだけでなく親御さんにまでお世話になっているということで。お礼をしたいと思っていたのですがタイミングが合わず遅れてしまい申し訳ありませんでした。」
「御厨の母の桂香です。いつも御厨がお世話になっております。心実さんのお母様は紅茶に造詣が深いとのことですので宜しければ私がやっている喫茶店にお越し下さい。小さな店ですが精一杯おもてなしさせていただきます。」
食堂の前に着くと2人の男女がこちらにこちらに歩いてくる。御厨さんの両親だった。ここで初めて知ったのだが御厨というのは下の名前だったようだ。てっきり苗字が御厨なのかと思っていた。御厨さんの父親の幸一さんは地方銀行で働いており
うちの会社とも取引のある銀行だった。最近の景気の動向について話が広がる。美咲は桂香さんと紅茶について語り合っていた。僕と心実は紅茶についてそこまで詳しくないので話が出来る人に会えて嬉しいのだろう。
「ちょっと、パパ!。今日は何しに来たのか忘れたの?。体育祭を見に来たんでしょ?。」
「そうだよ、お父さん、お母さん!。もうお礼は言ったんだから失礼しないと。」
放ったらかしにされた娘2人がご立腹のようだ。それぞれ娘に怒られる。僕は幸一さんと連絡先を交換させてもらった。人脈は力だ。人との繋がりはなによりも大切にしないといけない。これからもし仮に心実が反抗期に入ったりしたら是非連絡させてもらいたい。その気持ちは幸一さんも同じようで娘を持つ父親としてのシンパシーを感じながら握手を交わして別れた。美咲も桂香さんと連絡先を交換していた。今度早速お邪魔するようだ。
「…さてと、…心実の次の競技はいつぐらいだい?。」
御厨さんの家族と別れた僕達。この後の予定を立てる為に心実に出る競技を尋ねる。
「午前中はもう出番はないよ。午後は部活動対抗リレーとイス取り合戦にでるよ。」
「イス取り合戦?。…ってあのイス取り合戦かい?。体育祭であれをやるのか。」
今年の生徒会役員は中々ユニークな子達のようだ。体育祭でイス取り合戦は中々聞かない。
「うん、各クラス男女2人づつで学年ごとにやるから40人だね。その中から三人になるまでやるんだって。」
しかも男女合同!。…危険はないのだろうか。
「常理さんが言うにはこのルールなら残る三人は確実に女子になるから競争率は低いって。上手く立ち回るのが大事なんだって。」
「…………ぁあ。そう言うことか。確かに…男の子はやり辛いだろうな。」
一見すると圧倒的に男子有利に見えるルールだが高校生男子が女子も参加する競技で本気を出せる訳はないのだ。なので上手く立ち回るとは男子が狙った椅子を目掛けて狙う事を指しているんだろう。そうすれば男子は譲らざるを得ない。女子同士での争いを避けながらやり過ごせば結構良いところまでは残れるのだろう。
「…心実の競技が午後からになるなら…ちょっと校内を見てそれから食堂で昼ごはんを食べることにしよう。」
「私は昼ごはんはみんなと食べるから一緒に食べれないから。」
まぁ、高校生にもなるとそんなもんだな。そもそも親が来ている家庭が半分にも満たないだろうし。
「分かった。それじゃあ楽しみにしてるから頑張れ。」
「うん!。」