御厨さんの両親と会うことになった
心実に会う為に校内を散策する。懐かしい景色だが所々改修はされているようだ。部室棟も少し変わっているかもしれない。
「…さて心実は何処にいるか。高校の体育祭は縛りがキツくなかったから自分のクラスの場所にいるとは限らないんだよね。」
仲の良い友達と写真を撮ったり駄弁ったり。ちゃんと自分の出る競技さえ忘れなければ問題ない。
僕も体育祭の時は学食に行ってきた。文化祭や体育祭など外部から人が来るときは定食などの提供はなくなるがカレーパンやおにぎりなどの気軽に食べられる物が豊富に仕入れられていたのだ。
「そうですね、…先ずは…あら?…電話が…。心実からです。…もしもし、心実?。」
美咲に心実から電話がかかってきたようだ。丁度いいタイミングだ。居場所を聞けばすぐに会える。と思っていると少し先に心実の姿を発見した。手に持つスマホを耳に当てているから間違いない。隣にいるのは…御厨さんのようだ。僕らは心実の方へ向かって歩いていく。心実は電話からの声と実際に美咲が話している声が被って聞こえて不思議そうな顔をしている。
「後ろだよ、心実。」
「…きゃ…⁉︎。」
僕が声をかけると心実が驚いて倒れそうになってしまったので慌てて抱きとめる。少し驚かせようと思っていたけど思ったより衝撃があったようだ。
「もう!本当にびっくりしたんだからね!。」
心実が立腹のようだ。これは今度出かける時に何か買ってあげた方がいいかもしれない。悪いのは完全に僕なわけだし。子供相手だろうと自分が間違ったことをすれば詫びる。当然だけど出来ない親は結構多いらしい。謝罪すると心実は落ち着いたようだ。そして電話をしてきた要件を伝えられた。何でも御厨さんのご両親が僕達に挨拶とお礼がしたいらしい。
「いや、そんな。お礼を言われるようなことなんてしてないよ。」
「いえ、何度もご飯をご馳走になってますし、車で送っていただいた事もあります。うちの親も今日は揃って来ているそうなのでお時間をいただきたいんです。」
挨拶はまだしもお礼を言われる覚えがないので断ろうとしたが御厨さんが是非にと訴えてくる。ここまで言われて断るのも逆に失礼だ。それに今日来ているのなら負担にもならないだろう。僕は御厨さんに会う事を伝える。すると御厨さんの両親は既に食堂の前にいるらしい。僕たちは連れだって食堂に向かうのだった。
「あ、そうだ。心実、今日の玉入れの作戦って誰かが考えたやつだよね。」
「うん、そうだよ。見てたんだ。凄いよね、事前に玉入れのポールが高いって情報を仕入れて、その結果球数が入らなくなるから最後に高さを下げる事まで予想してたんだよ?。」
「そのお陰で私たちのクラスの圧勝だったもんね。常理さんのおかげだよね。」
「常理さん?。」
「うん、常理さん。普段はほんわかしてるんだけどなんて言うのかな…、んー、切れ者って感じ。頭の回転が早いのかな。」
「あ、そうだ。常理さんといえばこの前の…」
「あー、あれ!。凄かったよね。」
「何があったんだい?。」
「常理さん、南京錠を2秒で開けちゃったんだよね。鍵をなくした子がいて困ってたんだけど髪につけてたヘアピンでカチって。鍵の仕組みは知ってるから後は手の感触で問題ないって。」
「…それは凄いね。」