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筋肉痛の来訪日

「…それじゃあーね!。また明日ー!。」

 授業が終わり帰路につく。3年生は今日から1週間部活禁止だ。外部テストに向けて勉強に専念させる為である。


「…おぉ…やっぱり…足が重い。」

 友達と別れた私は自転車で家に帰るんだけどその足取りはいつもより重い。何故なら昨日ママと一緒にパパからスクワットを教えてもらったからだ。これまで体育とかでもスクワットをやったことはあったんだけどパパの教えてくれるスクワットは次元が違った。色々びっくりしたけど一番の驚きはスクワットは速く上げ下げするイメージがあったんだけど全く違うらしくてゆっくりと下げて素早くあげるのが筋肉に効くということ。その方法でやるとママは7回で、私も10回で限界がきてしまった。


『痛みなくして成長無し』

 これはパパが筋トレをする時にはいつも考えていることらしい。まるで人生そのものの教訓のようだけど筋肉痛は筋肉が立ち上がろうとしている合図という意味らしい。それは無駄に荘厳だなと思った。


「…本当に明後日までに治るのかな。」

 因みに筋トレは3日おきだ。なんでも筋肉痛の時に激しいトレーニングをすると成長が妨げられるらしい。パパはこれを筋肉の反抗期と呼んでいた。反抗期はあまり干渉せず自由にさせた方が良いということらしい。これもちょっと意味が分からなかったけど。


「…ただいまー!。」

 自転車から降り足を引き摺るように家へと入る。なんだが時間をおく毎に痛みが強くなっている気がする。普段から少しは動いている私でこれなのだから主婦であるママはどんな事になっているのだろうかと心配になったが、


「あら、お帰り。…あ、今日からテスト期間だったのね。」

 ママは普通に二階から降りてきた。その手には洗濯物の入った籠を持っている。どうやら外に干していた洗濯物を取り込んでいたようだ。


「…ママ、凄いね。普段から走ってるから平気なのかな。」

 …あれ?でも昨日は私より早くへばっていたけど。


「…ん?なんのこと?。」


「足だよ、足。私、今日筋肉痛で大変だったよ。階段上がるのも一苦労でさぁ。友達に掴まって登ったりしてたんだよ。」

 流石に筋肉痛でって言うのは黙っていたけど。戯れる感じでそれとなく体重を預けながら階段をやり過ごした。私の教室が一階でよかった。


「…筋肉痛…。そういえばなってないわね。昨日の感じだとなるはずなんだけど…だるさはあるんだけど…あ!…えー、…ショック。」

 ママは本当に筋肉痛になっていないようだった。だけど何かに気づいたのか一気に落ち込む。


「え、何?どうしたの?。」


「…人間はね、歳を取ると筋肉痛が次の日じゃなくてその後に来るんだって。…だから多分私には明日くるんじゃないかな。」


「…あ、うん、…その……ごめん。」

 なんとも言えない空気が私とママの間に漂う。いくらママが若く見えるといっても実際は40を過ぎている。意図せずその事を突きつける形になってしまった。


「…ううん、気にしちゃダメね。むしろこの段階で気付けたのは僥倖だわ。これから体を改革するの。体年齢は若返りが出来るんだから!。」

 ママが立ち直る。この切り替えの速さはやはり人生経験の違いか。ママの言うことは最もだ。体の衰えから目を背けていたら気づいた時には手遅れになってしまうかもしれない。ママならここから挽回出来ると信じている。


「そうだよ、ママ!。…これから一緒に頑張ろうね!。」


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