堀田家、女性陣の慟哭
「………太った…。」
心実は驚愕していた。いつものように来たる外部テストに向けて勉強をして、ご褒美に頭に糖分を補給、気分転換に風呂に入る。そこで気紛れに乗った体重計。そこに示されたのは心実のワースト記録を更新する数字だった。
(…な、なんで?。…ご飯の量は変わってないはずだし…あ、間食。)
心実はすぐに答えに辿り着く。最近は以前にも増して夜勉強をする様になった。頭を使えば腹も減る。幸か不幸か堀田家には娘の美味しい物を食べる顔が大好きという父親がいた。善一は心実や美咲が好きそうなお菓子やデザートなどをよく持ち帰る。更にそれらがない時も心実がお腹を空かそうものなら何かを作り出してしまうのだ。
(…いつも間食するのは勉強の終盤。そしてそれが終わったら寝る。つまり夜食として食べた物は寝ている間にじっくり脂肪になっている。…)
「…やばっ…」
気がついた負のサイクルの強烈さに思わず声が漏れる心実。
(…こ、このままじゃ大学が決まるまでに恐ろしい体重になっちゃう。)
今の増加ペースを保ってしまった場合のことを考え表情を青くする心実。心実はダッシュで部屋に駆け戻る。
『間食は寝る3時間前まで!。食ったら寝るな!』
白紙のルーズリーフにそうデカデカと書く心実。そしてその紙はベッドから一番よく見える位置に貼り付ける。これでもし間食を就寝3時間前にしていた場合でもなんとか思いとどまらせる。因みに間食をしないという選択肢は最後の手段である。
「…取り敢えず今日はもう一踏ん張りしないと。…後…2時間?。…はぁー。」
心実の戦いが今始まる。
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それはほんの少しの違和感だった。いつもスムーズに着れていた服が少しだけ引っかかる。指輪の周りに跡が残る。それらの違和感の正体を美咲は知っていた。
「…そんな…。一度は元に戻ったのに。」
美咲は体重計の表示されている数字に目を疑った。更に一度降りて表面をサッと払いもう一度測定。勿論そんな事で数値が変わるはずはない。
(…なんで…、ジョギングだって週に3回も頑張っているのに。)
美咲は以前スポーツウェアを購入してから週に3回1時間程度のランニングを続けている。その成果もあり、体重は順調に目標体重に達したのだがそれが何故か戻ってしまっていた。
(…理由は…何?。…心実と一緒に間食をしているから?。…でもそれは前からもそうだったし…寝る前には食べるないようにしている。)
美咲は心実に付き合って間食をすることが多いが時間はきっちり気にしているし、流石に夜食のような重めの物は食べない。
(…そう言えば…。…もしかして…原因はお昼ご飯とお昼寝⁉︎。)
原因を探っていく中で一つの可能性を思い当たる。美咲は基本的に家事を終えた昼前にランニングに行く。そして帰ってきてからシャワーを浴びて昼ごはんを食べるのだが最近昼ごはんが美味しく感じるのだ。その理由は疲れた体がエネルギーを欲しているからなのだがこれまでそんな経験などしたことがない美咲はついつい昼食を食べ過ぎてしまう。そして食べ過ぎた後に起こるのが猛烈な睡魔。消化の為、胃に血液が集中して思考力が低下するのだ。運動をしてお腹いっぱい食べてそして昼寝をする。それはまるで力士の生活であった。
(…なんて事…私は知らず知らずのうちに自分の首を…。)
「…えーと…何々…。炭水化物を摂る量を減らす。へー、それ以外なら別に食べてもいいのね。」
美咲はスマートフォンでダイエットについて検索。今の自分に合っているのが炭水化物を減らすダイエットだと確信する。だがそれには懸念が。美咲の昼食、その王に君臨するのがカップ麺なのだ。だが、
「…これから出来るだけお昼に炭水化物を摂らないようにする!。…で、出来るだけ!。」
美咲も戦いはまだまだこれからだ。




