サンドイッチをつくる
美咲との買い物を終え帰宅する。すると玄関に行く時にはなかった靴が二足あった。既に心実の友達は到着しているようだ。冷蔵庫に買ってきた物を入れていると階段を降りてくる音が聞こえる。
「あ、パパおかえり。」
「お邪魔してます!。今日は心実さんにお世話になります。」
「お邪魔してます。あの、これ…どうぞ!。」
心実と一緒に友達もリビングにやってきた。確か…優香さんと御厨さんだ。2人とも心実と同じクラス、同じ部活らしい。2人は僕と美咲に挨拶をして、…何かを差し出してきた。手土産だろうか。高校生がそんな物を用意する必要はないのだが、断るのも違う気がする。取り敢えず受け取っておくことにする。
「…これは、コーヒー豆かい?。」
御厨さんが手渡してくれた袋は想像よりずっしりとした重さがあった。中を開けてみると黒い豆が詰まっている。
「はい、うちの母が喫茶店やってるんで。持って行けって。」
成る程。普通の女子高生がコーヒー豆を持ってくるのは渋いと思ったがそれなら納得できる。コーヒーは好きだしありがたく受け取ることにする。
「どうもありがとう。今日の昼は用意するから時間になったら降りてくるといい。」
僕の言葉を聞いて嬉しそうにする2人。何故か心実は不満そうだが。3人は美咲が用意した飲み物を持って二階に上がっていった。僕と美咲は暫くリビングでテレビを見て過ごす。テレビでは路線バスを乗り継ぐ番組をやっていて中々面白い。いつかやってみたいと思っている。
「…よし、それじゃあサンドイッチを作り始めるか。」
僕は時計を見て時間を確認する。時間は11時半、そろそろ良い具合だろう。サンドイッチはシンプルな料理だ。だけどいくらでも手を加えることが出来る。手土産を貰ってしまった以上此方も本気を出さざるを得ない。先ずは卵を茹でる。タマゴサンドは王道にして覇道。外すことは出来ないだろう。それから…BLTサンドも必要だろう。BLTサンドに使うパンはオーブンで焦げ目をつけた方が美味しいと思う。
「善一さん、…私の分も…そのサンドイッチを…」
「勿論だよ。ちゃんと美咲の分も作るよ。」
「…手伝います。」
美咲が手伝ってくれるようだ。僕は美咲に野菜のカットをお願いする。その間にベーコンを焼いて焦げ目をつけていく。それと並行してパンもトーストしていく。パンはサンドイッチ用の耳がないパンを用意している。
「お野菜の用意が出来たから…卵の殻を剥いておきますね。」
美咲が切ったレタス、トマト、そしてきゅうりを渡してくる。きゅうりはタマゴサンドに挟む。食感のアクセントになるので僕は結構好きだ。
「…ベーコンが焼けたな。パンが焼けるまでの間に…ホイップクリームを出して…フルーツをカットする。」
僕は三種類目の用意を開始する。ホイップクリームを冷やしておいたパンに塗りその上に苺と蜜柑を切った物を並べる。そしてその上から蜂蜜を垂らしパンで挟めばフルーツサンドの出来上がりだ。これが一番手間がかからない。
「善一さん、パンは私がやっておくから味付けをお願いします。」
美咲が卵の殻を全部剥いてくれた。美咲は2人で料理をする時味付け関連を僕に一任する。なんでも自分の味付け以外を食べる機会を無駄にしたくないらしい。
「うん、オッケー。パンが焼けたらBLTサンドにしといて!。マスタードは置いてあるから。」
僕は茹で卵のうち半分を荒く、もう半分を細かく砕きながら美咲に言う。同じ荒さにしてしまうと面白くない。念入りに潰した卵フィーリングに荒い卵を混ぜる。マヨネーズと辛子、塩胡椒を入れて軽く混ぜる。そしてそれをパンに乗せその上にきゅうりを乗せる。
「…よしっ、三種類だけどこれで良いかな。…」
美咲も終わったようで机の上には三種類のサンドイッチが並んでいる。そしてタイミングよく心実達が下りてきた。
「…疲れたぁ。…あ、サンドイッチ!。」
「うわぁー、フルーツサンドめっちゃ好きなんだけど!。」
「美味しそう。…お母さんのより…。」
「見ての通り沢山あるから遠慮せずに食べて欲しい。」
僕の言葉に歓声を上げる3人。これだけ喜んでくれると作った甲斐がある。
「…善一さんのタマゴサンドは絶品!。」
歓声を上げていたのは4人だったようだ。