表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/48

私の夫は世界一

 私の夫は最高の夫だ。温和でそれでいてウイットに富み家庭では笑顔が絶えない。その大きな体はヒトに対しての威圧に使われることは殆どなく包み込む包容感がある。家事をするのも大好きで彼の大きな体で裁縫をする姿はとても癒される。私の夫は最高の夫だ。




 私の夫は歳上だ。彼と私は2歳差。初めて会ったのは高校生の時。ゴリゴリの運動部である彼と文化部所属の私。学年も違うのだけど何故出会えたのか。彼はラグビー部、私はブラスバンド部だった。ブラスバンド部は大人数なのでパートごとに分かれて練習をする。その度に楽器を運ばなければならないのだけど私と彼はその時出会った。1年生の私がティンパニーを運んでいる時突然手を差し伸べてくれたのだ。多分私がフラフラと運んでいるのを目撃したからだと思う。優しく微笑むとひょいと持ち上げ運んでしまった。その時は状況が理解できず、ただ頭を下げることしか出来なかった。私の中に初めて彼の存在がインプットされた。でもその時はただの優しい先輩としか思ってなかった。だけどそれも変わる。次の日からブラスバンド部の楽器運搬をラグビー部が引き受けてくれるようになったのだ。ブラバンの先輩から話を聞くとどうやら前日の件が発端らしい。それ以来、今でもその伝統は続いているらしい。




 私の夫は人たらしだ。彼はいつでも人に囲まれていた。高校生の時も男女を問わず人を惹きつけていた。大学生になってその人たらしは人脈という力になっていた。そして夫は起業した。仕事内容は人と人を結ぶこと。夫の持つ人脈同士、必要な人達を結ぶ仕事。夫はみんなにとってWin Winな仕事だと笑顔で言う。その笑顔に私は夢中になる。




 私の夫は愛妻家だ。記念日などを忘れたことはないし、いつも喜ばせてくれる。記念日になると思い出す。彼と初めて行ったデート。実は彼はデートに行くのが初めてだったのだ。私も初めてで、二人でオロオロしたのを覚えている。私が彼の初めての彼女、そう知った時嬉しくて飛び上がっちゃった。2回目のデートから彼は卒なくこなしてきてそっちにも驚いたけど。



 私の夫は料理が上手い。休みの日には手の込んだ料理を振る舞ってくれる。特に庭にある石窯を使った料理が得意で彼が前日から石窯の掃除を始めると私と娘はソワソワする。まるでパブロフの犬のように。彼は私の料理も美味しいと言ってくれるけど敗北感はあった。そう、…あった。今では彼の料理は別物と考えるようにしている。ほら、外食に行くと特別な感じがするでしょ。それと同じ。でも私達の娘はまだ夫に挑み続けている。若さ故の無謀なんじゃないかな。




 私の娘が怪しい。私と夫の娘は親として言うのはあれだけど大変可愛らしく育った。恐らく学校では告白されまくりだろう。だけどその娘は彼氏を作ったことがないらしい。不思議なことだ、私譲りの美貌と彼譲りの人当たりの良さを持っているのに。と思っていたけど最近その理由が分かった気がする。私の娘は…ファザコンっていうやつなのかもしれない。思い返してみれば娘はいつも夫の事を大好きと言っていた。5歳の時には私より夫を選んでいたし、中学生になっても夫とお風呂に入ろうとしていた。それにその頃から私と夫だけが話していると割り込んでくるようになった気がする。そして最近では夫とデートするようになった。そのせいで私が彼とデート出来るのは2週間に1度になってしまった。流石にその時は怒りが湧いたわ。私だって女だもの。




 でも夫が楽しそうにしているから文句は言わない。娘はいずれ誰かに嫁いでしまう。それまでの期間を大事にしたいという彼の気持ちもわかる。…だけど彼の1番は私。それだけは譲れない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ