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違和感の正体

(…なんだ?…いつもと雰囲気が違う。)

 会社から帰るとすぐに僕は違和感を感じた。いつも通り出迎えてくれる美咲。だが何故かソワソワしている。視線に落ち着きがない。


「お帰りなさい、善一さん。お風呂の用意は出来てますよ。」

 美咲は僕から鞄を受け取りお風呂へ向かうように告げる。…いつもより余裕がない気がする。いつもなら一応お風呂にするか聞いてくるのに。


「うん、ありがとう。」

 でも別に嫌なわけではないのでお風呂をいただくことにする。僕が脱衣所に入るとバタバタと美咲が階段を駆け上がる音がする。それから多分自分の部屋に入った。そのあとは音がしない。まるで此方の様子を伺っているかのようだ。


(…これはもしかして。)

 僕は自分の立てた仮説を確かめる為浴室には体は入れずシャワーだけ流す。するとその音を合図に美咲が階段を駆け下りて来て慌てて玄関から飛び出していった。僕はシャワーを止めてリビングに向かう。いつもなら既に9割がた用意が出来ているはずの晩ご飯。今日はその姿が一切なかった。


「やっぱりか。言ってくれば良かったのに。」

 恐らく美咲は昼寝をしていて寝過ごしたのだろう。だから晩ご飯の用意が出来ておらず僕をリビングに近づけたくなかったのだ。多分今は近くのスーパーにダッシュでお惣菜を調達しに行っていると思う。流石に手料理ぐらいわかるんだけど。普段はそんなミスをしないだけにテンパったのだろう。中々に可愛らしいが…さてどうしよう。そもそも僕はそこまで長風呂じゃない。だから普通に上がったら美咲はまだ帰ってきてないと思うんだけど。


 仮定1 お風呂で待機、気づかないふりをする。

 お風呂場にて美咲が帰ってくるまで待機。そして出された料理を食べる。その時に特に何も言わない。

 メリット 一番波風が立たない。美咲の失敗もなかったことになる。


 デメリット 心実が指摘する可能性がある。心実も手料理かそれ以外からわかる。指摘してしまえば気まずい空気が流れる。それと手料理と区別がつかないことに美咲がむくれる可能性がある。


 仮定2 お風呂で待機 料理には気付く

 お風呂場にて美咲が帰ってくるまで待つ。料理に関しては指摘する。

 メリット 美咲が自ら話しやすい状況に持っていける。


 デメリット テンパっているであろう美咲が素直に話せるか分からない。


 仮定3 お風呂から出てリビングで待機

 リビングにて美咲を待つ。

 メリット 美咲が後々にまで引き摺らない。


 デメリット シンプルに美咲が落ち込む可能性がある。


(…一見すると1が良いけど…やっぱり3だよな。)

 1と2を選んだ場合美咲が罪悪感を覚える可能性がある。それなら初めから向き合う方がいい。僕はそう決断するとお風呂に入りに行く。お風呂から上がってもやはり美咲は帰ってきていなかった。


「…味噌汁くらい作っておくか。」

 どうせならと味噌汁を作り始める。美咲がどんなお惣菜を買ってくるか分からないけど味噌汁ならなんとかなるはず。


『…ガチャ…』


「…ただいま…」

 美咲が帰ってきた。声が沈んでいるのは電気で僕が既にお風呂から上がっていることを知っているからだろう。


「…善一さん!ごめんなさい!。私…お昼寝しちゃって…。…晩ご飯の用意が…」

 美咲が素直に謝ってくる。ここまでは想定通りだ。だが美咲が手ぶらであることに気づく。


「…だからスーパーに買いに行ったんだけど。…やっぱり私が作りたくて。…ごめんなさい。」

 美咲は何も買っていなかった。お惣菜を買うという回避策を避け怒られるのを承知で手作りしに戻ったのだ。


「美咲、僕は別に怒ってないよ。ミスなんて誰でもするものだし。むしろ嬉しいかな、美咲がそこまで家族の事を考えてくれて。」

 僕は美咲を抱きしめる。美咲は走って帰ってきたからか息が乱れていた。


「今味噌汁は作ったんだ。残りは一緒に作ろうか。」

 久し振りに2人で料理をした。最近は2人ですることはなかったから少し懐かしい気持ちになった。

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