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善一とのデート 嵐山

 今日は善一さんとのデートの日。行き先は嵐山。これまで色々な所に連れて行って貰った。京都にも何度かきたことがあるが嵐山は初めて。まず連れてこられたのは長い橋だった。大きな川にかかるその橋は一見した感じ木造に見えたが基礎は鉄骨らしい。


「…ふわぁ、…綺麗ね。丁度良い季節に来たみたい。」

 善一さんに目を瞑るように言われて手を引かれる。その時も私がよろめかないように注意を払ってくれているのがわかる。そして目を開けて良いよと言われ開けると素晴らしい景色が広がっていた。桜が咲いているのは知っていた。だけどこの橋の上からの眺めは別格だ。川と川に反射する陽の光、散る桜の花びら。それらのコントラストが絶妙な景観を生み出している。橋から身を乗り出して景色を見ていると善一さんが河原に行こうと言った。少し物足りない気がしたけど我儘は言いたくない。大人しくついていく。


「川と橋、それに嵐山の自然が1枚の絵みたい。あ、写真を撮らないと。」

 私は即座に善一さんに心の中で謝罪する。物足りないと思ってごめんなさい。善一さんは更に上の景色を用意してくれていたのだ。言わばサプライズ。橋の上からの景色も凄かったけど、橋全体を含めた景色の方が映える。私は鞄からカメラを取り出してベストアングルを探す。まだ付き合っていた頃に善一さんに褒めて貰って以来私は旅の写真を残すのが好きだ。だって写真が有ればいつでもその時の思い出を話し合える。心実と善一さんと、私。それだけで幸せだと思うわ。会心の写真が撮れたので善一さんに見せにいく。善一さんはいつも私の写真を褒めてくれる。今回も良い写真だと褒めてくれた。と、その時…


「…それじゃあ美咲こっちに寄って。また自分の写真を撮り忘れているよ。」

 善一さんの右腕に抱き抱えられる。ぐっと体を寄せられて私の体は善一さんの体の中に収まる。ち、近い!。突然な善一さんの行動に冷静さを失う。そのまま善一は左手でスマホを操作してツーショットを撮った。多分今、私はまともに喋れていない。言葉にならない音だけが漏れている気がする。それも仕方がない。善一さんといると私の心はいつまでも少女でいられる。だから取り乱しても仕方ない。


「…ちょっとだけ早いけどお昼ご飯にしようか。京都らしいものを食べよう。」

 私が平静を取り戻した頃善一がそう提案してくれる。私もお腹が減っていたし問題ない。…いや、あったわ。今日からダイエットする宣言を出しているから…。なんて考えていると善一さんがある店の前で止まる。その店はお豆腐の専門店だった。


「…お豆腐の専門店。…お豆腐はヘルシーで体に良いって聞くもんね。この店がいいわ。」

 僥倖。今の私にぴったりの食材だわ。私はこのチャンスを逃すまいとアピールする。豆腐を逃せばお腹いっぱい食べることは難しい。カロリーが低い豆腐なら…多少食べても問題ない。私のアピールの成果でこの店に決定する。店の中に入るとお座敷に通された。店の中には濃い豆の匂いがする。善一さんもそれを感じているのかキョロキョロしていた。


「お勧めでお願いします。」

 メニューに迷ったんだけど善一さんが店員さんに聞いたお勧めを2人とも頼む事にした。詳しい内容は聞いていない。その方が楽しみが増えるじゃないかと善一さんは言う。…いつまで経っても子供心を忘れない善一さん。そのお陰で私も若くいられる気がする。


「お待たせしました。こちらおばんざい御膳でございます。」

 頼んでいた料理が届いた。お盆の上には美味しそうな料理が並んでいる。


「うん、思ってたより味が濃く感じる。なんだろう、出汁の味かな。旨味を感じる。」

 善一さんも言うように並ぶ料理はどれも思っていたより味わい深かった。もっと淡白だと思っていたわ。でも味が濃いと言っても調味料の濃さではなく自然の旨味の重なりによるものだと思う。がんもどき…えーと、ひろうすも想像より美味しくてびっくりしちゃった。


「…ふー、お腹いっぱいになっちゃった。」

 私は想定外の満腹感に驚く。豆腐だから満足感はあんまり得られないと思っていたけど…間違いね。善一さんも同じ感想だったみたい。食べ終わったらお会計。店も混んできているからマナーとしてあまり長居はしない。


「…お、豆腐ドーナツか。心実食べると思う?。」

 お会計をしていた善一さんが尋ねてくる。視線の先にはコロコロとしたドーナツ。見た目はサーターアンダギーに近いわね。でも材料が豆腐のドーナツがあった。


「そうね、多分食べると思うけど。電話してみましょうか。」

 あれならリビングにある置いておけば食べると思う。…問題は食べるのが心実だけじゃなくて私も可能性があるって事。少し悩んだ善一さんが購入する事に決めた。でも頼む数は少なそう。……駄目、やっぱり私も食べたいわ。


「わ、私も食べたいわ。」

 我慢出来ずに善一さんにおねだりする。善一さんは一瞬びっくりしていたけど嬉しそうに「なら僕も」と言って15個購入した。ドーナツでも材料が豆腐なら…大丈夫…だよね。

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