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留守番 心実

「いつ来ても思うけど…心実の家おっきいねー。」


「ほんとそれ。羨ましいよ。お父さんとお母さんも優しいし良いよね。」

 今日は友達を家に呼んでいる。パパとママはデートに行っているので不在だ。今日は嵐山に行くと言っていた。京都デートなんて大人なデートの定番だから羨ましくはあるけど私が行っても多分良さは分からないだろう。それなら私はシンプルに繁華街とかカラオケに行くことを選ぶ。そんで今は私の部屋で駄弁ってたんだけど優香と御厨がジェンガをしながらそんなことを言う。そのジェンガに向ける視線は女子高生が遊びでやるものとは一線を画しているけど。


「そんなこと言われても私は知らないよ。…まぁパパがお仕事頑張ってくれてるのは知ってるけど。」

 パパのお陰で私は何不自由ない生活を送れている。私立の高校に通えているし多分大学も奨学金を借りずに私立に行ける。


「それにさ、この前心実のパパに作って貰ったパエリア美味しかったなぁ。うちのパパは料理なんて全然しないんだよ。むしろ料理なんて男のする事がないって感じ。」


「そうそう、たまに作っても焼飯とかスパゲティーとか。そんなの作っても別に家庭的じゃないからって感じ。…って待って、抜くとこ無いんだけど。」


「いけるいける、御厨ならいけるって。…うちのパパはママよりも料理が得意だからね。」

 私は誇らしげに言う。実際これは誇って良いことだ。優香と御厨は私のパパの料理を食べた事がある。その時2人は感動していた。それ以来うちに遊びにくる時はパパがいるか確認するようになった。現金なやつらめ。…あ、御厨がなんとか抜きやがった。…このままでは負けてしまう。そうなったら…代償を支払わないと。


「…ほらほら、心実。抜いちゃいなよ。倒したらパパさんの料理だぞぉ。」


「ふふふっ、そもそもこのジェンガは二対一なのだよ、心実君。端からきみは不利だったのだ。」

 優香と御厨が勝ち誇ったように言う。…ぐっ…パパの料理は私だけのものなんだ。そうそう何度も食べさせてたまるか。私は一つの棒に狙いを定める。繊細かつ大胆に少しづつ突いて押していく。来てる、流れは私の手の中に。


『…コトン…』

 遂行。私はジェンガを抜ききることに成功する。


「…うそ、…えー!…もう抜くとこないよ。」

 私がそっと抜いた棒を上に重ねると次の順番の優香が悲鳴を上げる。私達のルールでは抜いてもいいのは初めからあったところだけ。つまり抜かれた棒で出来た階層には手出し不可。そして下の階層は真ん中だけか、左右しか残っていないか。つまり優香がやり過ごすには階層一つ分をぶっこ抜くしかないのだ。


「…まさか、心実ここまで読んでいたの?。」


「当然でしょ、代償がパパの料理である以上私に一切の手抜かりはないわ。さぁ、優香、奇跡を起こしてみるがいい。」

 この展開になるように序盤から抜く事ができる本数と2人の抜く場所を照らし合わせて何処を抜くか決めてきた。因みにルールの抜いていいのは初期の部分のみもこの為の布石だ。


「…え、えぐいよ、心実!。私達友達でしょ!。」


「例え友達でも…譲れないものがある。」


「…うわーん、心実が黒いよぉー。」

 優香は決死の覚悟で残り一本の階層に挑戦する。両手の人差し指で短い方の面を挟み、ふー、と息を吐く。…いくのか。


「…てーい!…あ、あぁー、。」

 一息で棒を抜き去る。だが残念だったな。ジェンガは脆くも崩れ瓦礫と化す。


「私の勝ちだ!。」

 これが花の女子高生と呼ばれる者達のなんでもない休日だ。

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