美咲とデート 嵐山2
お土産の豆腐ドーナツを購入した後は近くにある竹林に向かう。その道中でも美味しそうな食べ歩きスイーツとかがあったけど今はやめておこう。
「…凄いわね。…別空間にいるみたい。」
「そうだね、…圧倒されるよ。」
竹林に到着して最初の感想がそれだった。青々とした竹が生い茂っている。その中に一筋の道がありそこを通る事が出来るのだ。その道はまるでこの世界と別の世界を繋ぐ回廊のようだ。僕が愛読しているラノベでも定番の異世界転移に使われそうだ。トンネルを抜けるとそこは異世界でした。…戻ってこれるなら体験したいけど…僕が一番大切なのは家族だからな。今は物語の中だけで十分だ。
「うーん、陽の光がこっちから差しているから…この角度がいいわね。…善一さん、…一緒に。」
なんて僕がどうでもいい妄想に耽っていると美咲がこの竹林での写真のアングルを考えていた。竹林の間から差す陽の光が神秘的な雰囲気を醸し出しているのでそれを考慮してアングルを決めたようだ。そして今度は2人で写真に写ろうとしているみたいだ。さっき不意打ちを思い出したの顔が少し赤いけど。
「それじゃあ…あ、すいません。写真撮ってくれますか?。」
「ええ、勿論。…良い夫婦ですね。お似合いです。」
美咲が探し出してくれたアングルに2人で収まる為歩いていた人に撮影をお願いする。快く撮影をしてくれたその人は僕たちに向かってそう言い去っていく。仲が良いつもりだけど他の人からもそう見えるなら間違い無いのだろう。竹林を通り抜け次の目的地に向かう。次に向かうのは渡月橋と並ぶ嵐山の観光名所だ。
「ここが天龍寺なのね。確か世界文化遺産に登録されてるだっけ?。」
「うん、そうだよ。足利尊氏が後醍醐天皇を弔う為に建立した寺院なんだって。」
やってきたのは天龍寺。嵐山に来たらここの庭園を見ないわけにはいかないだろう。参拝料を払って中に入る。まずは雲龍図を見にいく。法堂の天井に描かれているその龍はどこから見ても人を睨んでいるように見えることで有名だ。
「…うわー、迫力が凄いな。それに本当にどこにいても目線が合う。」
「こんな高さにどうやって書いたのかしら。…笑点みたいに下に座布団を敷き詰めて描いたのかしら。」
僕が絵の迫力に圧倒されている中美咲はどうやってそこに雲龍図がもたらされたのかが気になるようだ。だけど多分美咲の予想は違う気がする。
「…ここが曹源地庭園か。」
「静かな景色ね。」
本堂に入り曹源地庭園を眺める。この庭園こそが天龍寺が世界文化遺産に登録されている理由になっている。天龍寺の境内は何度も戦乱に巻き込まれて焼失しているのだがこの庭園は殆ど建設当時の姿を残しているらしい。その事を美咲に伝えると何年前⁉︎と驚いていた。大体700年前ぐらいかな。
「そろそろ行こうか。」
「そうね、なんか時間を忘れてしまったわ。」
庭園を眺めていると思ったより時間が経っていた。僕達は本堂から続く多宝殿に向かう。そこにある木造は誰もが一度は目にした事のある木造だった。
「…あ!あれ、…教科書で見たことある気が…」
「正解だよ、あれは後醍醐天皇天皇の木造なんだ。日本史の教科書で見たことあるよね。」
教科書に載っている知ると改めてありがたみが出てくるのが面白い。その後御朱印をもらい天龍寺をあとにする。写経体験とかも出来るらしいけど今日はやめておこう。天龍寺を出たあとはぶらぶらと散策する。嵐山の街並みは見て歩くだけで楽しいものだ。
「善一さん、この店によってもいいかな。」
美咲がある店の前で立ち止まりそう言う。中を覗くとちりめん細工のお土産屋さんのようだ。ちりめん細工もこの辺の伝統細工だったな。僕は勿論了承する。中には色々な形の細工が置いてあり目移りする。
「そうだ、家族でお揃いの細工を買おうか。」
「そうね、何がいいかしら。」
2人でどれがいいかを検討する。その結果招き猫のちりめん細工のストラップを買うことにした。これならカバンにでもつけられるしいいだろう。お会計を済ませてあとは電車で帰宅するだけだ。
「今日は楽しかったです。」
「うん、僕もだよ。また京都に来たいね。」