心実、美咲のお供をする。
パパが車に荷物を置きに行ってくれている間に私とママはスポーツ用品店に向かう。私は部活も文化部だからこういう店に来る機会はあまりない。ママも同じだろう。早速携帯会社の人に声をかけられて立ち止まってしまっている。最近のスポーツ用品店にはこんな店も併設されてるんだなと感心.してる場合じゃない。ママが話に聞き入ってしまっている。私は慌てて『スマホに変えたばかりでしょ』と言いながらママをその場から引き離す。危ない、危ない。もう少しで詳しく話を聞く流れになるところだった。そうなったら30分ぐらいロスしちゃうからごめんだ。パパがいればこういう勧誘とかは声をかけてこない。一見するとパパの体格には恐怖を感じるのだろう。
「…ママ、いつも言ってるけどああいう人達は無視されるのを前提で勧誘してるんだから。立ち止まっちゃ駄目だよ。」
「そうは言っても目が合うと申し訳ないのよね。」
「だから目を合わしちゃ駄目なんだって。サッと横を素通りしないと。ゲームのNPCだと思って。」
ママに注意するけどあまり気にしていないようだ。恐らく今度も引っかかるだろう。まぁ、実際に契約するとなったら財布の紐は硬いから問題ないと思う。それじゃあランニング用品のところに行こう。
「…凄い沢山あるのね。私メーカーなんて分からないのだけど。」
「そんなの私だって詳しくないよ。」
有名メーカーの名前ぐらいは分かるが生地によってどんな効果が有るのかとかは全然わからない。…取り敢えず無難な装備を集めるべきだろうか。一通りランニングを始めるのに必要そうなものを集めていく。
「心実、この長いの何?。これから暑くなるから半ズボンが良いんだけど。」
ママが私がカゴに入れたロンスパを手に不思議そうな顔をしている。マジか、普段ランニングしている人とか見たことないのかな。なんて思っているとパパの姿が。パパは大っきいから見つけやすい。何かを見ていたようだが私の声に反応してこっちにきてくれた。
「…ねぇ、心実。本当にズボンだけじゃ駄目なの?。この長いスパッツにそんなに意味があるのかしら?。」
ママはまだロンスパの意義を見出せていないようだ。私はランニングしている人はみんな履いていると教える。あと、ズボンじゃなくてパンツね。ランニングパンツとかランパンって略すでしょ。
「そうなのね。…善一さんはどう思う?。」
ママは私の話だけでは完全には納得しきれなかったようでパパにも聞き出した。確かにこの家族でスポーツアイテムに一番詳しいのはパパだ。でも少し酷くないですか?。ママに聞かれたパパはちゃんと何故ロンスパを履いた方が良いかを説明してくれた。私も詳しい理由までは知らなかったけど為になった。ママはパパの話を聞いて購入を決意したようだ。だけどちょっと待って、パンツ↑がパンツ↓になってる。それだと下着と同じイントネーションだから。
「決まった?ならお店を一周して回ろうよ。」
ママの用事が終わったようなので提案してみる。普段こういう店に来ないからさっきから興味が惹かれていたのだ。店の中を見ているとやっぱりスポーツ毎に専門の道具とかあって面白い。ふとママが立ち止まったので何かなと思うとダイエット器具を見ているようだ。私はその隣のダイエット食品を見る。朝の食事を置き換えるとか鳥ささみとか色々あるけどそこまで不味くなさそうだった。でも食べたいとは思わない。もしダイエットが必要になったら運動をメインにしよう。ママも器具は買わないようだ。そのあとレジまで来たのでお会計を済ませる。時計を見ると昼ごはんにちょうど良い時間になっていた。
「…そろそろお昼ご飯にちょうどいい時間だ。何か食べたいものはあるかい?。」
パパが聞いてくれる。パパは外食の時私達に決めさせてくれる。
「…うーん、……あ!串揚げ食べ放題が良い!。」
悩んだけど揚げ物が食べたいと思った。多分さっき鳥ささみを見た反動だと思う。私の提案にママは一瞬戸惑っていたけど問題はないようだ。私の提案が通って串揚げ食べ放題に行くことになった。
心実サイドの串揚げはなしにします。…多分同じよう内容になってしまうで。