買い物行こう、知識は一生の財産。
朝ごはんを食べた後は買い物に向かうことになった。基本的に家族で買い物に行くのは土曜日が多い。何故なら日曜日は心実か美咲と一対一でデートをすることが多いからだ。行くのはショッピングモールになることが多い。色々な物を一気に見ることができるからだ。勿論、観光地に行くこともあるけど。
「ねぇ、ココ、本屋さん行きたい。受験勉強の本買わないと。」
ついて早々心実がそんな事を言う。心実も、もう高校3年生。だけど多分普通の大学受験とは違う。僕と美咲の母校でもある心実の通う学校は大学の併設高なのだ。なので余程成績に問題が無ければ大学には行くことが出来る。その大学も関西ではそれなりに名の通った大学だ。なら何故受験勉強をするのか。内部進学の選考方法に関係するからだ。高校3年間の内申点、それに加えて高校3年生で受ける外部模試の成績3回分によって生徒は順位付けされ上の学生から志望する学部に合格するのだ。この外部模試3回というのは曲者で例年内申点は最底辺ながらその模試で大逆転を起こす生徒がいる(僕もそうだった)。だから普段から真面目に授業を受けている心実も油断は出来ない。
「あぁ、良いよ。僕も本屋には行きたかったし。そろそろ新刊が色々出てる頃なんだよね。」
僕はハイブリッドオタクだと思う。運動は嫌いじゃない。けど漫画やアニメ、ラノベにプラモなんかも大好きだ。この体に似合わないかもしれないけど、漫画にはそこにしかない世界がある。読んでいてワクワクするという感情を僕は大事にしたい。だから心実や美咲にも是非にと薦めている。僕たちは連れ立って本屋へ向かう。到着すると美咲は調理本のコーナーに心実は宣言どおり大学受験のコーナーへ。僕はコミック売り場へ向かう。
「…お!…この本ネットで広告流れてたやつ。今のところ五巻までか。…買いだな。…それから…うーん、この作品の休載いつまで続くんだろう。面白いのになぁ。」
僕は新刊コーナーから既刊売り場へと順番に見ていく。今はまだ読んだことなくても興味を惹かれる作品が出てくる可能性もあるからだ。そのままラノベコーナーへと向かう。ラノベは漫画より更に発売日が予測しにくい。文字だけで表現する産みの苦しみというものがあるのかも知れない。結局僕は漫画7冊、ラノベ3冊、プラモデル雑誌2冊を購入することに決めた。
「心実、もう決まったかい?。」
学習本コーナーの心実は2冊の本を手に取って見比べていた。どうやらその2冊までは絞ったようだ。
「パパぁ…こういう本って何を基準に選べば良いの?。」
中々難しいことを聞いてくる。
「…んー、心実が何をしたいかによると思う。科目は…数学と政治経済か。数学に関しては答えが分厚い本が良いかな。問題数をやるよりも丁寧な解説の問題を一問やる方が良い。政治経済はその逆。これは数をこなすべき。出てくる単語は限られていてその問い方が違っているだけだから。」
朧げな知識を引っ張り出し懸命なアドバイスを送る。そこに2冊ほどの雑誌を持った美咲がやってくる。心実は美咲にもアドバイスを求める。美咲は高校の時ブラスバンド部所属だった。だから多分真面目に授業を受けて成績も優秀だったに違いない。そちらのアドバイスの方が良いだろう。いやー、実際ブラスバンド部の子達にはお世話になった。テストのたびにノートをコピーさせて貰ってたから。自分のノートで勉強するより遥かに効率が良かった。
「お待たせパパ、決まったよ。」
結局心実は参考書を3冊買うことにしたようだ。美咲の分も合わせて僕がお会計をする。僕は書籍に関する出費は家計から省いて別立ての会計をすることにしている。本でしか知れない事は絶対にあるし。僕が読む漫画に関しても話の種になったりもする。人生、何が役に立つか分からない。だから心実にも本を買ってレシートを出したらその額は返すようにしているし、会社でも書籍購入費を福利厚生として毎月3万円まで払っている。
「一回車に荷物を乗せてくる。2人は先に何か見てるかい?。」
会計を終え受け取った本は結構な重さで持ったままこのモールを歩くのは現実的じゃない。2人に一度車に荷物を置きにいくと告げる。
「…んー、どうする?ママ。」
「そうね、…まだお昼には少し早いし。食料品は最後に見たいし。…あ、そうだ!。スポーツ用品店に行きたいわ。」
2人にどこで待っているかと尋ねたら想定外の答えが返ってきた。僕はスポーツ用品店には良く行くけど美咲はそんなイメージはない。
「ん?…美咲がそこで何を見るんだい?。」
「ランニングを始めたいと思ってたの。その為のウェアとかを見てみたいの。」
「…ママ、少し太ったんだ。」
「そ、そんなことないわよ。ただ健康の為に始めようかと思っただけよ。他に行く所がないなら決定で良いわよね。」
美咲が強引に会話を切り上げる。まぁ、僕としては見たいものもあるし全然構わない。
「それじゃあ荷物を置いたら行くから先に行ってて。」
2人にそう告げて僕は車に向かうのだった。…なんか海外の映画とかだと何かに襲われそうな別れ方だった。