1/6
序章
序章 エンドロール
主演、月影 織。
演出、多喜 巌。
美術、古怒田 九郎右衛門。
衣装、哀矢 楓。
音響、永楽 篝。
協賛、獄釜組。
監督、雲越 零士。
●
見事な焼け野原だ。
火に焦がされた電柱と、燃えた木だけが目に入る。
舗装されていない道路を米軍の車が走る。
ぽつんと焼け残った一軒家から男2人がそれを眺めていた。
「死に損なったわ」
「そうか」
蝉の声がジリジリと沈黙を焼く。
雲ひとつ無い空、強すぎる日光が窓際に座る男を苛立たせている。
「こっちに来たらどうだ」
「……」
部屋の奥、机に向き合っている男が作業をしながら声をかけてきた。
コップと水差しを持ち、男にもたれかかる。
「零士ー? 何書いてんだ」
「脚本」
「そうかい」
素っ気もない返事に男はコップの水を飲み切ろうと口を付ける。
零士の手がコップを取り上げ、中の水を横取りされた。
「ここどう思う」
「あ?」
零士の質問に手元を覗き込む。
この男が自分の作品に口を挟ませるのは珍しい。
「そうだなぁ、どうせなら」
桜の下で死なせてみたらどうだ。






