表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

12月26日のメリークリスマス

作者: 蝋燭屋


 その雪だるまは、12月26日に生まれました。


 もうすこし生まれるのがはやければ、クリスマスイブだったかもしれません。


 クリスマスのまちのなかは、きっと、たくさんのひかりがきらきらかがやいていたことでしょう。


 ケーキやさんのまえには、チョコレート。イチゴのショートケーキ。アイスクリームのケーキがたくさんならんでいたことでしょう。


 おとうさん、おかあさんとあそびにきたこどもたちが、雪だるまをみて、てをふってくれたかもしれないし、がんばってよるまでおきていたら、サンタクロースにあえたかもしれません。


 どうしてぼくはクリスマスに生まれなかったんだろう。


 雪だるまは、はあと、ためいきをつきます。白いいきが、おなじくらい白いそらにのぼっていきました。

 

 そんな雪だるまのところに、小さなおんなのこがやってきました。


 雪がたくさんつもったこうえんでは、たくさんのこどもたちが、雪がっせんをしたり、かまくらをつくったりたのしそうにあそんでいます。


 けれど、そのおんなのこはみんなといっしょにあそぼうとはせず、雪だるまのとなりにたって、あそんでいるこどもたちをみているだけでした。


 こんにちは。と雪だるまがいいました。


 こんにちは。とおんなのこもいいました。


 どうしてみんなといっしょにあそばないの? と、雪だるまはおんなのこにききました。


 うん。なんだか、とってもかなしくて。と、おんなのこはいいました。


 どうしてかなしいの?


 雪だるまがきくと、おんなのこはそのわけをおしえてくれました。


 おんなのこは12月23日にかぜをひいてしまい、きょうのあさまで、ずっとおふとんのなかでねているしかなかったのだそうです。そのあいだに、クリスマスがおわってしまって、だからかなしいの、とおんなのこは雪だるまにはなしました。


 そうなのか。それは、とてもかなしいね。と雪だるまはこたえました。

 

 雪だるまにはおんなのこのきもちがよくわかりました。雪だるまも、クリスマスというものを、とてもみてみたかったからです。だから、雪だるまとおんなのこは、すぐになかよくなることができました。


 おんなのことはなしをしているうちに、雪だるまはとてもいいことをおもいつきました。


 じゃあ、ぼくとふたりでこれからクリスマスをしようよ。


 おんなのこはとてもよろこびました。おんなのこのわらったかおをみていると、雪だるまもとてもうれしくなりました。 


 けれど、雪だるまはすぐにこまってしまいました。


 クリスマスってなにをすればいいのかなあ?


 雪だるまは、クリスマスをいわったことがなかったのです。

 雪だるまはおんなのこにきくことにしました。


 おんなのこは、いっしょうけんめいかんがえましたが、やっぱりわかりませんでした。


 クリスマスには、おかあさんが、ごちそうをつくってくれます。

 おとうさんは、クリスマスツリーにかざりつけをしてくれます。

 プレゼントはサンタクロースがもってきてくれます。


 おんなのこは、ただよろこんでいればよかっただけなのです。だから、どうしたらクリスマスをいわうことができるのか、おんなのこにもわからなかったのです。


 ふたりはいっしょうけんめいかんがえましたが、いいかんがえはうかびません。

 

 おんなのこは、かんがえてもわからないから、おとうさんとおかあさんと、サンタさんのまねをしてみようとおもいました。


 おんなのこは、雪のつもっていないところから、おちばをたくさんあつめて、雪だるまにかざりつけをしてみました。クリスマスツリーのつもりでした。


 いままでは、おとうさんがかざりつけるのをよこでみていただけです。

 すこしだけつかれてしまいましたが、雪だるまがよろこんでいるのをみていると、ふしぎとうれしいきもちになります。


 おんなのこは、雪をあつめておにぎりをつくることにしました。クリスマスのごちそうのつもりです。


 いままでは、おかあさんがつくるごちそうを、ぱくぱくたべていただけでした。

 すこしだけ手がつめたくなりましたが、雪だるまがおいしいおいしいとうれしそうなのをみると、ふしぎとこころはぽかぽかとするのです。


 おんなのこは、じぶんのかぶっていたぼうしを雪だるまにかぶせてあげました。サンタクロースのクリスマスプレゼントのつもりです。


 いままでは、めがさめたとき、まくらもとにおいてあるプレゼントをよろこんでいただけでした。

 雪だるまはびっくりしたあと、ありがとう、ほんとうにありがとうと、おんなのこになんどもおれいをいいました。


 だれかにプレゼントをするのが、プレゼントをもらったあいてが、よろこんでいるのをみるのが、こんなにもしあわせなきもちになるなんて。おんなのこはついさっきまでしらなかったのです。


 そのとき、おんなのこはきづきました。クリスマスはしあわせをうけとるだけの日でなく、だれかにしあわせをあたえる日でもあるのだということを。


 それにきづいてしまったら、らいねんのクリスマスが、もういまからまちどおしくてたまりません。

 らいねんのクリスマスは、おとうさんといっしょにクリスマスツリーのかざりつけをしよう。

 おかあさんといっしょに、ごちそうをつくろう。

 サンタさんにも、おてがみといっしょに、なにかプレゼントをわたそう。

 

 おんなのこはもうちっともかなしくはありませんでした。

 とてもすてきなことに、とてもだいじなことに、きづけたようなきがしたからです。


 おんなのこは、雪だるまにメリークリスマスというと、ほかのこどもたちのほうへはしっていきました。


 雪だるまは、げんきになったおんなのこをみおくりながら、とてもしあわせなきもちでいっぱいでした。

 

 落ち葉のかざり。雪のおむすび。赤い毛糸の小さなぼうし。

 12月26日に生まれて、よかったと雪だるまはおもいました。


 ふわふわとそらからおちてくる雪をみながら、雪だるまはいいました。


 メリークリスマス。


  


 


 





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 大切なものに気づかせてくれる作品でした。 Merry Christmas !
2023/05/02 08:04 退会済み
管理
[一言] 瑞月風花様の活動報告からお邪魔しました。 まさしく冬童話!と言いたくなる作品でした。 女の子の心の動き(他者への思いやりとその喜びを知ること)が、とても自然な流れで描かれていて、押し付けが…
[一言] 「クリスマスってなにをすればいいのかなあ?」 その疑問からクリスマスについて考え、何かをやってもらうのではなく、誰かのために準備することの大切さを知る、とても素敵なストーリーでした。 ク…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ