12月26日のメリークリスマス
その雪だるまは、12月26日に生まれました。
もうすこし生まれるのがはやければ、クリスマスイブだったかもしれません。
クリスマスのまちのなかは、きっと、たくさんのひかりがきらきらかがやいていたことでしょう。
ケーキやさんのまえには、チョコレート。イチゴのショートケーキ。アイスクリームのケーキがたくさんならんでいたことでしょう。
おとうさん、おかあさんとあそびにきたこどもたちが、雪だるまをみて、てをふってくれたかもしれないし、がんばってよるまでおきていたら、サンタクロースにあえたかもしれません。
どうしてぼくはクリスマスに生まれなかったんだろう。
雪だるまは、はあと、ためいきをつきます。白いいきが、おなじくらい白いそらにのぼっていきました。
そんな雪だるまのところに、小さなおんなのこがやってきました。
雪がたくさんつもったこうえんでは、たくさんのこどもたちが、雪がっせんをしたり、かまくらをつくったりたのしそうにあそんでいます。
けれど、そのおんなのこはみんなといっしょにあそぼうとはせず、雪だるまのとなりにたって、あそんでいるこどもたちをみているだけでした。
こんにちは。と雪だるまがいいました。
こんにちは。とおんなのこもいいました。
どうしてみんなといっしょにあそばないの? と、雪だるまはおんなのこにききました。
うん。なんだか、とってもかなしくて。と、おんなのこはいいました。
どうしてかなしいの?
雪だるまがきくと、おんなのこはそのわけをおしえてくれました。
おんなのこは12月23日にかぜをひいてしまい、きょうのあさまで、ずっとおふとんのなかでねているしかなかったのだそうです。そのあいだに、クリスマスがおわってしまって、だからかなしいの、とおんなのこは雪だるまにはなしました。
そうなのか。それは、とてもかなしいね。と雪だるまはこたえました。
雪だるまにはおんなのこのきもちがよくわかりました。雪だるまも、クリスマスというものを、とてもみてみたかったからです。だから、雪だるまとおんなのこは、すぐになかよくなることができました。
おんなのことはなしをしているうちに、雪だるまはとてもいいことをおもいつきました。
じゃあ、ぼくとふたりでこれからクリスマスをしようよ。
おんなのこはとてもよろこびました。おんなのこのわらったかおをみていると、雪だるまもとてもうれしくなりました。
けれど、雪だるまはすぐにこまってしまいました。
クリスマスってなにをすればいいのかなあ?
雪だるまは、クリスマスをいわったことがなかったのです。
雪だるまはおんなのこにきくことにしました。
おんなのこは、いっしょうけんめいかんがえましたが、やっぱりわかりませんでした。
クリスマスには、おかあさんが、ごちそうをつくってくれます。
おとうさんは、クリスマスツリーにかざりつけをしてくれます。
プレゼントはサンタクロースがもってきてくれます。
おんなのこは、ただよろこんでいればよかっただけなのです。だから、どうしたらクリスマスをいわうことができるのか、おんなのこにもわからなかったのです。
ふたりはいっしょうけんめいかんがえましたが、いいかんがえはうかびません。
おんなのこは、かんがえてもわからないから、おとうさんとおかあさんと、サンタさんのまねをしてみようとおもいました。
おんなのこは、雪のつもっていないところから、おちばをたくさんあつめて、雪だるまにかざりつけをしてみました。クリスマスツリーのつもりでした。
いままでは、おとうさんがかざりつけるのをよこでみていただけです。
すこしだけつかれてしまいましたが、雪だるまがよろこんでいるのをみていると、ふしぎとうれしいきもちになります。
おんなのこは、雪をあつめておにぎりをつくることにしました。クリスマスのごちそうのつもりです。
いままでは、おかあさんがつくるごちそうを、ぱくぱくたべていただけでした。
すこしだけ手がつめたくなりましたが、雪だるまがおいしいおいしいとうれしそうなのをみると、ふしぎとこころはぽかぽかとするのです。
おんなのこは、じぶんのかぶっていたぼうしを雪だるまにかぶせてあげました。サンタクロースのクリスマスプレゼントのつもりです。
いままでは、めがさめたとき、まくらもとにおいてあるプレゼントをよろこんでいただけでした。
雪だるまはびっくりしたあと、ありがとう、ほんとうにありがとうと、おんなのこになんどもおれいをいいました。
だれかにプレゼントをするのが、プレゼントをもらったあいてが、よろこんでいるのをみるのが、こんなにもしあわせなきもちになるなんて。おんなのこはついさっきまでしらなかったのです。
そのとき、おんなのこはきづきました。クリスマスはしあわせをうけとるだけの日でなく、だれかにしあわせをあたえる日でもあるのだということを。
それにきづいてしまったら、らいねんのクリスマスが、もういまからまちどおしくてたまりません。
らいねんのクリスマスは、おとうさんといっしょにクリスマスツリーのかざりつけをしよう。
おかあさんといっしょに、ごちそうをつくろう。
サンタさんにも、おてがみといっしょに、なにかプレゼントをわたそう。
おんなのこはもうちっともかなしくはありませんでした。
とてもすてきなことに、とてもだいじなことに、きづけたようなきがしたからです。
おんなのこは、雪だるまにメリークリスマスというと、ほかのこどもたちのほうへはしっていきました。
雪だるまは、げんきになったおんなのこをみおくりながら、とてもしあわせなきもちでいっぱいでした。
落ち葉のかざり。雪のおむすび。赤い毛糸の小さなぼうし。
12月26日に生まれて、よかったと雪だるまはおもいました。
ふわふわとそらからおちてくる雪をみながら、雪だるまはいいました。
メリークリスマス。