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星の瞳症候群  作者: solar
1/3

2030/07/06

「お父さん、ただいまー」

「おっ、おかえりー」

 とうの昔に日は沈んで、時計の針は21時を指していた。

「瞳、 今日は遅かったじゃないか」

「明日休みだからって、友達に祝われてきた」

 私は自室に向かい、部屋着に着替えながら答える。

「良かったじゃないか、それじゃあ明日は一日家にいるのか?」

「そのつもりー、お姉ちゃんも帰ってくるんでしょ?」

 着替え終わってリビングに向かうと、夕食を温めているお父さんがいた。

「久々にな、お前の誕生日だって言って張り切ってたぞ」

「来年には高校生なのに、お父さんもお姉ちゃんも大げさだよ」

「いいじゃないか、朝子もお前が好きなんだよ」

 そう言ってお父さんは、食卓にご飯を並べながら、私の頭を撫でる。

「もちろんお父さんもな」

「もういいよ、それより早くご飯にしよ」

「食べてきたんじゃないのか?」

「夕ご飯は別腹なの」

 私はそっぽ向きながらご飯を出すのを手伝った。

「いただきます」

「いただきます」

 お父さんに続いて私も手を合わせる。

 箸を進めているとお父さんが明日のことを言ってきた。

「明日、9時ぐらいに朝子が来るからドライブにでも連れて行ってもらうといい」

「どうして?お父さんは来ないの?」

 そう聞くと、お父さんはニヤリと笑いながら

「まだ内緒だ、帰ってからのお楽しみにな」

 と人差し指を立てながら言った。

「お父さん、キモいよ」

「ひどいなぁ、そんな事ないだろう」

 それからほどなくしてご飯を食べ終わると

「今日はあまり外でないで早めに寝ろよ」

 と、お父さんが言うので適当に返事しながらお風呂場へ向かう。

 手早く入浴を済ませて自室へ戻ると、そのまま望遠鏡を担いで庭へ出る。

 予め組み立ててある望遠鏡を、事前にアウトプットしておいた星図を見ながら向きとピントを合わせる。

「今日はどの星見ようかなー」

 そのまま上を見上げれば、満天の星が広がっている。

 天の川が静かに流れ、月はいつにも増して輝いているように見えた。

 朝も早いので、今夜は適当に目についた星を見ることにした。

 望遠鏡を覗くのもそこそこに、私は部屋から持ってきたアウトドア用の椅子を広げて、腰をかけながら星空を見上げた。

「明日で15歳かぁ」

 そう呟きながら、ぼんやりと受験や将来の事を考えてるとうとうとし始め、つい寝てしまった。


 夢を見てる。

 誰かに抱かれながら空を見ると、天上に大きく十字を描き輝く星があった。

 誕生日が近くなるといつも見る、不思議な夢。

 本当にあったことのような気もするけど、記憶の中には存在しない。

 普段はもっとぼやけて見えるのに、今日はいつもより鮮明に見えた。

 ふと周りを見てみると、そこは少し広めの部屋で、私を抱く腕は太くて大きかった。

 窓を覗く十字の星を見ていると、吸い込まれそうな、でも私の中に入ってきているような変な感覚。

 そして――


肌寒さを感じて目を覚ますと既に深夜だった。

「なんで今日に限ってお父さん来ないのよ……」

もうすぐ夏とはいえまだ夜は寒く、パパッと片付けて部屋に戻る。

「早く寝よ……」

スマートフォンを軽く確認してすぐに布団に入る。

画面の時計は1時23分、日付は7月7日を示していた。

今日は私の誕生日だ。

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