第12話 兄として、言わねばならぬことがある
魔獣狩り当日。
本番を前にして、俺たちの教室では事前説明が行われている。
「このブリーフィングが終わり次第、全員で城山に向かう。到着後、出撃メンバー4人は愛美先生と一緒にロープウェイに乗って頂上まで山登りだ。それから、演習中の4人の行動は、偵察兼記録用ドローンから、麓の司令棟にあるモニタールームへ送られることになっている。他の連中は俺とモニタールームで見学だな。加えて、今回の演習にはオペレーターも起用する。同じくモニタールームで活動するから、見学の諸君はそっちにも注目すると良い。準備が整い次第、作戦を開始する。」
活動手順の説明に加え、
「皆さんも知っていると思いますが、2年生に進級する際には、大きく分けて『戦闘』『整備・開発』『通信』『医療』の4分野から専攻科目を決めてもらうことになります。まだまだ先の話ではなりますが、今回の演習における各員の活動を見て、自分ならどう動くか、何ができるかなどを考えて、専攻科目選びの一助にしてください。」
この活動の意義と修学の手引き。
重要な説明がなされていくなかで、俺はイマイチ集中できていなかった。
その理由は明白だ。
「先生、質問いいですか?」
「秋か、どーした?」
「なぜ冬華がここにいるんですか?」
それは、冬華がこの場にいることだ。
そう、中学校の授業をほっぽりだしてきたらしい冬華がいることだ!
「なんだ、そんなことか。」
なんだ?
そんなこと?
何を言っているんだこいつは!
これは家族会議確定レベルの重大案件だ!
妹のサボりを容認するほど兄は甘くはないぞ!
「おーい、また出てるぞー。収納しろー。まあいい、冬華ちゃん、自己紹介してくれ。」
「はい!わかりました。」
夏先生に促され、冬華が前に出る。
「椿原中学校3年生の和泉冬華です。にぃに…。兄の俊秋がいつもお世話になっています。今回、本作戦のオペレーターを担当することになりました。拙いところもあると思いますが、皆さん、よろしくお願いします!」
え?なんだって?
「冬華ちゃんは『通信士』の技能を持っている。それに、以前にもこの4人のオペレーターを担当したことがあるらしーので、椿原中から拉致ってきたというわけだ。」
冗談めかして言う夏先生を、俺だけではなく愛美先生も鋭く睨みつける。
その結果────
「えー、椿原中と交渉して、丁重にお借りして参りました。はい。」
ちょっとした訂正が入った。
いや、そんなことはどうでもいい!
冬華がオペレーターをするなんて一言も聞いていないぞ!
『どういうことだ⁉︎』
教室がざわめくなか、俺は冬華に視線を向け、声は出さずに口の動きで不満をぶつける。
『ビックリした?』
すると、そんな言葉とともに、イタズラっぽいウインクが返ってきた。
どうやら、兄として妹に言うべきことがまた一つ増えたようだ。
「静かにしろー。ブリーフィングを続けるぞー。」
愛美先生にお小言をもらっていた夏先生の一声で、再び生徒が聞く態勢に移る。
「そんじゃ、敵さんの情報と、現地の状況を説明する。まず城山に入り込んでいる魔獣だが、監視カメラの映像と目撃情報から、『猿型』と『猪型』の、いずれも幼少の個体で、少なくとも各5体ずつ以上いることがわかっている。つーことで、4人には、確認されている10体の討伐を目標に行動してもらう。」
幼少の個体ということは、凶暴性はそんなにないはずだ。
「猿型も猪型も、幼少個体は集団で行動する傾向にある。群れを見つけて一網打尽にするのが手っ取り早いだろーな。ただ、確認はされていないが、成体がいる可能性もまったくないとは言い切れない。警戒は怠るなよ。」
特に、猪型の成体は厄介だ。
だが、それゆえにわかりやすい。
現時点で確認されていないということは、猪型についてはいないと考えてもいいはずだ。
猿型を重点的に警戒すればいいだろう。
「次に現地の状況だが、正午まで一般人の立ち入りを制限している状態だ。後片付けの時間もあるし、とりあえず11時30分をタイムリミットとする。活動時間はおよそ2時間といったところだな。まあ、無理せず頑張ってくれ。」
いずれにしても、俺たちがこれまでこなしてきた中では、比較的簡単な部類の作戦になりそうだな。
「ここで話せる内容としてはこんなものだろう。現地では設備について軽く話すつもりだが、今のうちに聞いておきたいことはあるか?」
夏先生が静まり返っている教室を見渡す。
「ないみたいだな。そんじゃ、移動を開始するとしますか。全員、遅れずについてこいよー。」




