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Final Gift  作者: トキハル
本編
11/49

第8話 『最強』はいいものです

 それは、今日の授業もすべて終わり、放課後を迎えるための最後の儀式、HR(ホームルーム)の時間で起こった。

「さて諸君。いきなりだが、明後日、『城山』で楽しい魔獣狩りをすることになった。秋、新、綾音、奏の4人は狩りに参加。残りのメンバーは、麓にあるモニタールームでその様子を見学(モニタリング)してもらうことになる。質問はあるかー?」

 そう、徴兵である。

 しかも、スタメンに俺が起用されてしまっている。

 いやまあ、交代要員とかいないだろうけど。

「夏先生。」

 クラス中が呆然とするなかで口火を切ったのは、同じ徴兵仲間である綾音だった。

「いきなり狩りに参加しろと言われても困るわ。詳しく説明をして欲しいわね。」

「まあ、当然だろーな。」

 明らかに不機嫌な綾音に対し、夏先生は悪びれる様子もなく答える。

「諸君も知っているとは思うが、城山には魔獣が入り込むことがある。つか、今まさに入り込んでるわけだ。んで、あそこはこの街きっての観光地ゆえに、放置することもできない。つーわけで、4人に狩ってきてもらうことになった。」

 むしろ、どこか楽しんでいるようにも見える。

「最初は、俺と愛美先生で行ってこいって言われてたんだけどな。めんどく、もとい君らの後学のためになればなーと思って、生徒に任せることにしてみたわけだ。参加メンバーについては、実戦経験があり、それなりに連携が取れそうなメンツを選んだにすぎん。まあ、運がなかったと思って諦めるんだな。」

 どこか本音が見え隠れしているが、筋は通っているようにも思える。

 だが、それだけで納得できるわけがない。

「ちょっと待ちなさ…」

 やはり綾音も同じようで、すぐに意見しようとするが…

「ああ、いい忘れてたが、すでに学園長の決裁は通ってるんだ。諸君が納得しようがしまいが、よほどのことがない限りこの決定は覆らないからよろしく!」

 夏先生は強引にその言葉を遮り、

「そーいうわけで、4人はこの後すぐに、職員室の俺のとこまで来るよーに。以上。かいさーん!」

 半ば強引にHRを締めくくった。

 どうやら俺たちに、拒否権なんてものはないようだ。



「綾音、そろそろ機嫌を直したらどーだ?」

 HR後に夏先生を訪ねた俺たちは、職員室の隣にある小さな会議室に通された。

「先生がやれと仰るなら、拒否権のない綾は、ただそれをやるだけ。綾のことなんかいちいち気にしてないで、さっさと始めたらいいわ。」

 トゲトゲしさが残る発言に、「綾音は手強いなー」と呟きつつも、その言葉通りに説明を始める。

「作戦行動中は2人1組(ツーマンセル)で活動してもらう。確か、主兵装は、秋と新が刀剣、綾音が短機関銃(サブマシンガン)、奏が狙撃銃(スナイパーライフル)だったな?」

「はい。」

「そうっすよ。」

 夏先生からの問いに、奏と新が肯定して返す。

「なら、秋と新はコンビで前に出て、魔獣相手に切った張ったと頑張ってもらうおーか。そんで、奏が二人を後方から索敵と狙撃で支援。綾音には大切な狙撃手のボディガードを任せる。お前らは入学以前からの付き合いみたいだし、チームワークの方も、まあ大丈夫だろう。」

 そんな問答だけで、あっという間にチーム分けが決まった。

 しかも、4人それぞれの能力(アビリティ)と、戦闘スタイル生かした最適な組み分けがなされている。

「作戦行動についてだが、基本的には決められた区画を移動しつつ、魔獣を発見次第始末して、一つずつ潰していくというオーソドックスなやり方でいかせてもらう。8つある区画をすべて潰せばミンションコンプリートだ。索敵は奏にも頼るが、UAV(無人偵察機)を飛ばす手筈にもなっている。オペレーターもつけてやるから安心しろ。」

 作戦が決まるのもあっという間だ。

 しかも、その内容にも抜かりはない。

 どんなに優れた作戦でも、それが複雑なものだった場合、俺たちに遂行することができるかどうかはあやしい。

 オーソドックスなんて言っているが、経験の浅い俺たちにはそのシンプルさがちょうど良いといえる。

「あー、そうそう。全員、拳銃(ハンドガン)は持っていくように。秋と新もだ。まずは持つことに慣れないとな。ただし、勝手に抜くんじゃねぇぞ。」

 こういう指導もまったく抜かりない。

「それから、全ての銃に消音器(サイレンサー)をつけとくよーに。作戦行動中は城山を封鎖するが、どこで誰が聞いてるかわからんからな。うるさい奴もいることだし、対策するに越したことはないだろう。」

 まさに完璧な計画(プラニング)だ。

 この時までは、俺もそう思っていた。

「夏せんせー。」

「ん?なんだ?新。」

「俺の銃、サイレンサーつけれないっす。」

 突然のカミングアウトに、夏先生が目を丸くする。

 夏先生だけじゃない、その場にいた全員がそうだった。

「え?どゆこと?」

 今回のように市街地近辺での戦闘では、一般市民に配慮して、極力銃声を響かせないようサイレンサーを使用することが多い。

 そのため、一挺はサイレンサーを使用できる銃を持っておくのが定石だ。

 それは銃を選ぶ前に、愛美先生から念押しされていたはずだが…

「お前、何選んだの?」

「M500っす。」

「マジか…」

 一般的に、回転式(リボルバー)の銃はサイレンサーをつけることができない。

 より正確に言えば、つけようと思えばつけれるが、構造上つけたところで意味がない。

 俺も詳しくは知らないが、シリンダーギャップというものが関係しているらしい。

 だが、そんなことはもはやどうでもいい。

 今一番問題なのは、新が選んだ銃がM()5()0()0()であることだ。

「初めての銃、なんだよな?」

「そうっす!」

 元気に返事をする新を前に、夏先生が頭を抱える。

「一つ訊くぞ。どうしてM500にしたんだ?」

 愚問だ。

 夏先生にしては珍しい、意味のない質問だ。

 なぜなら、答えは訊かずとも明らかだからだ。

「『世界最強の拳銃』って聞いたからっす。」

「なんでやねん!」

 俺たちにとっては予想通りの答えに、夏先生(ボケ担当)がお手本のようなツッコミを入れる。

 その気持ちもわからないではないが…

「ブレないわね。」

「あはははは…」

 新の好きな言葉の一つに、「最強」の二文字がある。

 そしてM500の火力は、確かに「最強」を名乗るに相応しい。

 その一方で、M500の持つ反動(リコイル)も、文字通り「最強」といえる。

 あまりにも強すぎるそれは、安易に撃つと何らかの身体的異常をもたらすほどだ。

 いずれにしても、初心者が手を出すような代物ではないことは確かだろう。

 中学生の頃から、このどこか憎めない、間の抜けた古川新という人間を知っているが、思っていた以上の逸材だったようだ。

「一通りの説明はしたし、とりあえず解散だ。新は俺と来い。M500の代わりになるもんを貸してやる。」

「了解っす!」

 夏先生はため息をつきながら、新を連れて会議室を後にする。

 そして俺たちには、一抹の不安だけが残されるのだった。

<古川新のM500>

・製造メーカー「Smith & Wesson (スミス アンド ウェッソン)」

・製造国「アメリカ」

・正式名称「M500」

・通称「M500」

・リボルバー式ハンドガン

・シルバーカラー (ステンレス)

・装弾数5発

・Xフレームを採用する、50口径の大型拳銃。

・新が「最強の銃」という肩書きに惚れて選んだ。

・あまりの威力と反動に、製造メーカーも「人間の限界に迫ったスペック。安易にこの銃を撃った場合、射手の健康は保障できない。」と言ってしまうほどの代物。

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