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隻腕剣士の英雄譚  作者: 蒼空
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プロローグ

~~ホーエンツォ邸~~


『オギャー!!オギャー!!オギャー!!』


王国南方のとある小貴族の屋敷。


その一室の大きな扉の奥から聞こえてきた元気の良い泣き声に屋敷の主であるアルベルト・ホーエンツォは歓喜の表情を浮かべ廊下に置かれた長椅子から立ち上がろうとする。


だが、自分の膝の上で軽い寝息をたてている息子を思い出し、はやる気持ちを抑え優しくその頭を撫でた。


「カルロス…、お前はいま兄になったぞ…」


息子の頭を撫でながらもアルベルトはいまだ泣き止まぬ新たな我が子がいる部屋へと再び視線を向けると、不意にその扉が開き中から出産に立ち会っていた医師が額に汗を浮かべながら出て来た。


「おめでとうございます、男の子でございます」


笑みを浮かべ慇懃な礼をしながら医師は告げると、開かれた扉の奥から今まで以上に大きな泣き声が聞こえる。


「ん……」


泣き声に気がついたのか、それまでアルベルトの膝の上で寝息をたてていたカルロスが身動ぎして薄らと目を開ける。


「カルロス?」


アルベルトは息子に優しく声を掛けると、カルロスは眠い目を擦りながら父親へと顔を向けた。


「とうさま…?」


「カルロス、弟を見に行こう」


言うが早いかアルベルトは息子を抱え上げ、医師が開いた扉をくぐり抜けた…



息子を抱えながら部屋へ入ったアルベルトはベッドの上で産着に包まれた新たな我が子を愛おしそうに抱いている妻のベアトリクスの隣に立つ。


それまで烈火のごとく泣き声をあげていた赤子は泣き疲れたのか、時折その小さな口を大きく開いてまるで欠伸あくびでもするかのようにしていた。


新たな生命の誕生にアルベルトは瞳に涙を浮かべ、妻のベアトリクスへ向き直る。


「お疲れさま」


ねぎらいの言葉を掛けつつアルベルトは最愛の妻の額へ軽く口付けた。


夫の行為にベアトリクスは産後の疲労からか薄い笑みを浮かべつつも、その腕に抱く新たな生命に再び視線を向け、次いでアルベルトの腕に抱かれている兄となったカルロスへと視線を向けた。


「カルロス…、貴方の弟よ…」


疲れた声でベアトリクスは夫の腕に抱かれている長男のカルロスへと声を掛けた。


だが、当のカルロスは弟の顔を覗き込むと不思議そうな顔で父と母を向後に見やる。


「どうしたんだい、カルロス?」


息子の様子に父親であるアルベルトが声を掛けた。


「とうさま、この子まるでサルみたい」


弟の顔をマジマジと覗き込みながらそう告げる息子の様子に、アルベルトとベアトリクスはお互いに顔を見合わせながらクスクスと笑みを浮かべた……

最初の一歩…というか、主人公が産まれた場面なので一歩どころか『半歩』と言ったところです。


これからどう展開していくのか、生温かい目で見守ってください。

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