第3話「ダンジョン育成開始」
私が全裸だった事件から約3分。
なにか布でもいいから欲しいんだよ私は。
「答えてくれ、ナビ子さん……!」
《……ダンジョン育成をして、マスターレベルを上げてください》
「さっきからそれしか言わないね!?」
それより、下を見てもつま先しか見えない…………なんてことは無く、お腹もバッチリ見えてしまう絶壁具合に、私は混乱していた。
「あれ、私こんな小さかった? もうちょいあったよね? え?」
体をじろじろ見ていると、いつも視界の端にあったものが無いことに気づいた。
頭に手を置き、髪の毛を触る。
「髪が……ショートになってる……だと!?」
誰か……私に鏡をください。
×××
どういうことかナビ子さんに聞いても、「ダンジョン育成しろ」としか言わないので、仕方なくコアの前に来た。
コアに触れると、ブォンッとダンジョンのマップの様なものが現れる。
画面を指で適当にスライドさせていると、右側に、『DP』と書かれたものがあることに気付いた。
それを押すと、いきなり画面に文字が沢山出てきた。
一番上にある『第一階層』という文字が、下に続いている文字より色が濃いので、押してみることにした。
《現在のダンジョンポイントは500Pです。100Pを消費して、『第一階層』を解放しますか?》
目の前に、『はい』『いいえ』の文字が浮き出てきた。
これは『はい』を選択するのが正解っぽいので、指で押す。
《100Pを消費して『第一階層』を解放しました。現在のダンジョンポイントは、400Pです》
ナビ子さんの声と共に地面が揺れ始めた。
「えっ」
地面というより、この部屋自体が揺れている。
ゴゴゴォとか聞こえてくる。
とっとっとりあえずどこかに掴まろう。
そう思った瞬間、大きな揺れが私を襲った。
裸体で地面にお尻から打ち付けられる私。
「うぶっっ!」
暫くしたら揺れは収まったものの、臀部の痛みは引かなかった。
「いてて……」
起き上がりながら、部屋を見渡しても、変わったところは何も無かった。
痛いお尻を押さえながらコマの前まで移動する。
すると、『第一階層』の文字だけが濃くて、その下の文字はすべて薄かったはずが、濃くなっている文字が増えていた。
『魔物【スライム】』
『宝箱』
目に付いたのはその2つだった。
第一階層を解放したことで、出来ることが増えたってことかな。
『魔物【スライム】』を押すと、何やら数字が出てきたので、『1』を選択すると、解放するか問われ『はい』を押す。
《50Pを消費して『魔物【スライム】』を一体解放しました。現在のダンジョンポイントは350Pです》
今回は揺れることが無かったが、コアが突然光り出した
光が徐々に薄くなっていくと、何かが光の中央にいるのが分かる。
…………スライムだ。
水色の液体っぽい、ゲームだと1番雑魚キャラに位置付けられる魔物。
スライムが、コアから生まれたのだ。
「えーと……こ、こんにちは」
「ぽよんぽよん」
挨拶をすると、それに応えるようにスライムが飛び跳ねた。
どうやら襲われるような心配はしなくて良さそうだ。
それどころか、嬉しそうに私の周りを飛び回っている。
可愛いのでスライムを触ってみると、ぷにっと弾力のある体をしていた。
「かわよ」
ひたすらぷにぷにしていると、スライムがいきなり動き出し、マスター室の扉の前まで行ってしまった。
「外に出たいの?」
私の言葉に、スライムはこれまでにないくらい飛び跳ねる。
うん、かわいい。
「でも、さっき出れなかったんだよね」
扉まで移動しながら開けようとして、ナビ子さんに「無理」と言われたことを思い出す。
「あれ、まてよ」
ダンジョンから出ることはできません。
確かナビ子さんはそう言っていた。
もしかして、さっきはマスター室しか無かったから出られなかっただけで、今は『第一階層』というのが解放されているから、この扉を開けても、私はダンジョンにまだ居ることになるのでは。
そんなことを考えながら扉を引くと開かなかったので、押す。
ギギィ……。
ずっと閉ざされていたかのように、扉が鳴る。
扉を開けて見えたものは、上に続く階段だった。