9.ユーリ 2歳
結局、ブラエフと妖精達との魔術練習は、ずっと続けることになった。開き直って魔術を学び出してからは、それなりに楽しかった。
ブラエフと出会ってから1年が経過し、俺も2歳になった。
「ユーリくん、今日で私の魔術練習は卒業です。あなたはわずか1年で私が持つ魔術の知識・技を習得しました。今日からは、私と同じ魔術の求道者です。良き友であり良きライバルとして、一緒に頑張っていきましょう。」
貴方と過ごした1年は、結果それなりに楽しかったよ。ありがとう。
言いながら右手を差し出した。ブラエフが俺の右手を握り返した。
そして、そのまま踊りだした。
うぉおおい。また踊りかよ〜。
『エルフの舞 〜楽〜 を習得しました。』
また無駄なモノを習得してしまった。。
その夜、ファザとマァムがささやかながら俺の卒業を祝う宴会をしてくれた。ブラエフは明日には再び旅に出ると言い出したことから、同時にブラエフのお別れ会にもなった。
「ブラエフさん明日からどこに行くんだい?」ファザが質問した。
「そうですね~竜に会いに行こうかと思っています。」
おっ!この世界には竜もいるのか。
「まぁ!竜に会いに行くなんて凄いわねぇ。私たちも死ぬ前に一度はお目にかかりたいわぁ。」マァムは続けて言った。
「でも竜って言ったらかなり遠くに行くのよね?この辺りも大昔は竜を見かけたらしいけど、最近は全く聞かないもの。」
「ええ。ここから西方のヨーシャ王国に行かないといけませんね。長旅になりそうです。」ブラエフの顔はどこか期待に満ちた少年のようにワクワクした顔をしていた。
竜に会えるといいね。旅の道中気をつけて。
去り際になってようやくブラエフに親しみを感じられるようになった俺は、ブラエフを気遣う心からの言葉を送ることができた。
「ありがとう、ユーリくん。次会う時はどこまで成長しているか今から楽しみです。アーネ達と仲良くしてやってくださいね。」
次の日の早朝、ブラエフはシーネ村を去っていた。
「アーネ、悲しいよ〜」
「イーネ、寂しいよ〜」
「ウーネ、落ち込むよ〜」
妖精達と一緒にブラエフを見送った。
考えてみればこの世界にはテレビも漫画も、学校さえもない。ブラエフと妖精達との魔術練習がなければ、もっとつまらない毎日だったかもしれないな。
せっかく妖精達と仲良くなったんだ。もうちょっと一緒にいるのも悪くないかもな。
ブラエフはいなくなってしまったけど、これからもよろしくな。顔を合わせたときは魔術の練習したり遊んだりしようぜ。
柄にもなくそんなことを言ってみた。
「ユーリと遊ぶ〜」
「ユーリと魔術勉強する〜」
「ユーリと魔物狩りする〜」
ん?魔物狩り?
「魔物狩り、面白い〜」
「魔物狩り、魔術使うから練習になる〜」
「魔物狩り、一石二鳥〜」
魔物なんてのがいるのか。シーネ村から一歩も出たことなかったから見たことなかった。
魔物狩りなんかして大丈夫なのかな。