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試合の結果は引き分け……でもわたしの中では敗北でした……

「ヨハネスさん、李さん……」


美琴はマットに両手両足を突く。溢れ出る涙が止まらない。


ヨハネスは大切な仲間で李は初恋の人。


そのどちらも、彼女は一瞬にして失ってしまった。


泣き声を上げる彼女に対し、メープルはかん高い笑い声をあげて。


「どう? 少しは分かったかしら。愛する者を失う悲しみがどれほどのものか」


「……はい」


「遠慮することはないわ。あなたも私と一緒に悪の道に染まりましょう。

この闘いを仕組んだのは私なのだから怨みの力で私を倒すという手もあるわよ」


メープルが耳元で挑発するが、美琴は強く首を振って否定した。


「いいえ。わたしは闇には染まりません。

ヨハネスさんと李さんを失ったのは悲しいです。

でも、だからと言って他の誰かを憎んだとして、彼らが喜ぶでしょうか。

わたしはそうは思いません」


「偽善ね。本当は感情をむき出しにして私に攻撃したい癖に」


「この闘いの結末は、たぶん、ヨハネスさんが自ら望んだ形だったと思います。

だからわたしはあなたと落ち着いて話ができているのでしょう。

もしもあなたが目の前で李さんと協力してヨハネスさんの命を奪っていたら、きっとわたしは冷静さを失っていたかもしれません」


「あなたのいい子ちゃんぶりには呆れてものも言えないわね。まあいいわ。

今回は引き分けにしましょう。また、会いにくるわ」


メープルはリングを降り、空となったアタッシュケースを手に持ち、出口に歩みを進める。


そして髪を雨で濡らしながら、こんなことを口にした。


「前に会った時にいた女の子、名前はなんといったかしら?」


「ムースさんです」


「あなたには感じらなかったけど、あの子からは強烈な匂いがしたわ。甘い恋心の匂いがね。

でも、安心して。彼女がどんなに願っても、その恋は実ることがないのだから」


「……やっぱり、ムースさんは誰かに恋をしていたのですね。

今は彼女は地獄監獄にいますが、いつの日かあの監獄から自由の身になった時、その想い人に想いを伝えられたらってわたしはいつも願っていますよ」


「あなたはお気楽でいいわね。それじゃあ、ごきげんよう」


手を振り、メープルは去っていく。


「私は本部に戻るが、君はどうする?」


「もう少しだけ、ここにいさせてください」


「わかった」


カイザーは空を飛び、決闘場から離れていく。


誰もいなくなったリングで一人、雨に打たれながら美琴は立ち尽くした。


そして膝から崩れ落ち、着るもののいなくなったトレンチコートと鹿撃ち帽子を握りしめ、彼女は再び大声で泣きだした。


「ごめんなさい、李さん! ヨハネスさん!

わたしにもっと力があったなら、あなた達を救えたかもしれないのに!

わたしのせいで大事な命を失ってしまうことになってしまって、本当に、本当にごめんなさい!」


大粒の雨に撃たれ仲間を守ることのできなかった謝罪を幾度も口にする美琴。


タッグ戦の結果は引き分け。けれど、美琴にとっては非常に大きな敗北だった。

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