強力タッグ!メープルさんとレイさんです!
ジャドウの指示にレイは首を横に振り。
「私が従うのはメープル様のみ。あなたの指示には従わない」
「フン……ならば好きにしろ」
するとレイはメープルに手を伸ばし。
「メープル様、タッチです」
「ありがとう。そろそろ闘いたいと思っていたところだったの」
レイがタッチすると、メープルがリングに上がり、顔面を血だらけにしたヨハネスを見下ろし口に手を添えて笑うと、腕を掴んでヨハネスを立たせる。
すると背後に待ち構えていたレイが彼の首を背後からチョークスリーパーで締め上げる。
そしてメープルは浮き上がったヨハネスの両足を掴まえ、パッパと慣れた動きで4の字固めを極めた。
悪魔も思いつかぬ同時攻撃に痛みに強いはずのヨハネスは絶叫。
激痛から逃れようと手を懸命に伸ばすが、彼のいる場所は敵側のコーナーであり、美琴はその反対側にいるので届くはずがない。
手が空を切るたびにメープルは一層4の字固めに力を加えていく。
「どうするかしら。素直に降参した方が身のためだと思うけど」
「どうせ君は僕が降参を示したところで見逃しはしないよ」
「察しがいいのね。残念だけど、スター流の門下生は全滅させることにしているの。
特にあなたのようなスターに心酔しているような弟子はね」
「その言葉はジャドウさんに言ってあげるといいよ。
僕はどちらかというと、カイザーさんの方を慕っているからね」
「でも少しはスターのことも尊敬しているはずよ。
あなた達は何も知らないから彼を慕うことができるのよ」
言葉の最後に明確な怒りを込め、より一層4の字を深く極めていく。
このままではヨハネスの両足が粉砕されるのも時間の問題だ。
「聞くところによるとあなたはスターにとても可愛がられているそうね。
そのルックスなら愛されるのも頷けるけれど……それだけにあなたを倒したらスターがどれほど悲しむか見てみたくもあるわね」
「君には悪いけど、僕はまだ天国に行くわけにはいかないんだ」
「強がりね。でもここからどう抵抗するつもりかしら」
「こうするのさ!」
ヨハネスは自慢の髪を伸ばし、一本一本を剣状にすると、それでもってレイの掌や腕を突き出してチョークスリーパーから逃れる。
支えを失ったメープルとヨハネスは共にマットに寝転がる。
そしてすぐさまヨハネスは身体を反転させて切り返すと、そこから鎌固めをメープルにかけ、彼女の身体を弓なりに反らしていく。
「髪を武器にするなんて変わっているわね」
「よく言われるよ」
ところが優勢なはずの彼は鎌固めを解除し、美琴の元へ駆け寄ると、手を出した。
「ちょっとダメージが大きいみたい。代わって貰えるかな」
「勿論です」
ヨハネスに代わり、美琴が今度はリングイン。
格闘の構えをとり、メープルに宣言する。
「参ります」
「また会ったわね。あの時は話をしただけだったけど、今回は違うわ。
あなたの実力、私にどれほどのものなのか、教えて頂戴?」
穏やかな口調だがその全身からは禍々しいオーラを放っている。
HNΩをあっさりと始末した時と何も変わらぬ威圧感。
どうして彼女は同じ仲間であるはずのスター流の門下生を傷付けるのか。
そしてブラックリストに載っていたのは何故なのだろうか。
疑問を抱きながらも美琴は対峙する。
メープルは服からフルートを取り出し。
「闘いの前に一曲聴いては貰えないかしら」
口にフルートを当て、繊細な音色を奏でるメープル。
瞼を閉じて風に髪を靡かせる彼女の姿は美琴には悪人とは思えなかった。
演奏に耳を傾けていると、突如、カイザーの大きな声が飛んできた。
「彼女の音色を聴いてはいけない!」
「もう遅いわよ」
「どうしたというのでしょう。急に頭が割れるように……」
美琴は両手で頭を押さえ、その場にうずくまってしまう。
「私のフルートの音色は聴いた者に激しい頭痛を与えるの。
両腕が塞がっては、返し技は使えないわね」
魔の音色に髪を乱しながら七転八倒する美琴の姿をメープルは嘲笑する。
彼女は特に打撃を加えるでもなく、ただフルートを演奏するのみだ。
しかし、美琴にとってはどんなパンチよりも威力のある攻撃に感じられた。
肩で息をし、苦痛に耐えながらも、どうにか頭から右腕を離すことに成功する。
頭痛は収まってはいないが、今はそれに我慢しなければ、反撃の活路を見出すことはできない。
一歩、一歩近づいていくと手刀を振るい、彼女のフルートに当てる。
一撃でコンクリートを粉砕するほどの美琴の掌から繰り出される手刀は、フルートをあっという間に破壊してしまった。
美琴は深呼吸をして息を整え、メープルを見た。
「これで音色を出すことはできませんね」
「そうね。これで私も武器に頼ることなく自前の戦闘力だけで闘えそう」
ブゥン!
怪しげな音と共にメープルの掌に緑のエネルギーが凝縮されていく。
それを美琴めがけて放つが、彼女はそれを弾いて無効化してしまった。
「HNΩだったら今の技で爆発していたところね」
連続してエネルギー弾を放つが、全て美琴は弾き返す。
けれどメープルの目的は彼女に攻撃を当てることではなかった。
無数のエネルギー弾により視界を遮った彼女は、一気に間合いを詰めると美琴の腹に拳を打ち込もうとする。
けれど美琴は彼女の腕を掴み、軽々と持ち上げると、反対方向に投げ返してしまう。
蹴りを打てば足を取られて、軸足を奪われマットに転がされ、掴みにいけば逆に投げられてしまう。
試合がはじまってから美琴は一度として自ら攻撃をしていない。
全てメープルが放った攻撃の力を利用して返し技に移行しているのだ。
攻撃をすれば返し技を食らい、かと言って攻撃をしなければ決着は付かない。
美琴の狙いが分かったメープルは彼女に告げた。
「考えたわね。あなた、私に降参して欲しいんでしょう」
「はい。わたしは誰も傷付けたくありません。できることなら、誰も傷付けることなく闘いを終わらせることができたらって……いつも考えています」
「甘すぎて吐き気がしそうね。攻撃を全部返して相手の戦闘意思を奪う……
これがあなたのファイトスタイルなのね」
「はい」
「他の相手には通用したかもしれない。でも私には効かないわね」
「どうしてでしょうか」
「私があなた達スター流を……いえ、スターを憎んでいるからよ!」
「どうしてスターさんを憎むのですか?
あの人は確かにちょっと変わったところがあるかもしれません。
でも、とっても優しくていい人なんです。
わたしは森から町に出て、空腹だったところを彼にご馳走して貰って――」
パァン!
美琴がここまで語った時、乾いた音が闘技場に木霊した。
メープルが彼女を張ったのだ。
「あなた、何もわかっていないのね。彼がどれほど酷い男かを!」
「酷い……ですか?」
「そうよ。私も嘗ては彼を信頼して素晴らしい人間だと思っていたわ。
でも、私の想いは砕かれた。あの掟のせいで!」
キッと美琴を睨む瞳。その中には憤りと怨み、そして深い悲しみが宿っていた。
彼女は続いてカイザーを睨み。
「どうして私を守ってくれなかったのよ。あなたならスターに意見できたはずなのに!」
「……すまん」
「誰が肯定したとしても私だけは認めないわ、スター=アーナツメルツの存在を!」




