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お断りします!わたしにチームリーダーなんてできませんっ!

カイザーは用意されたパイプ椅子に腰かけ、スターの約束通り美琴達の姿をビデオカメラで収める。


本心を言えば彼も加勢したいのだが、そうすれば相手がどのような手を打ってくるかわからないところがあった。


下手に相手を刺激して人質の魂を危険な目に遭わせるわけにはいかない。


ならばヨハネスと美琴に託した方がずっといいではないか。


カイザーは真剣な目で2人を見守る。


リングに上がったヨハネスと美琴はどちらがチームリーダーを務めるかという話になり、美琴は経験の多いヨハネスがリーダーになった方がいいと遠慮し、ヨハネスは実力が未知数の美琴に懸けてみるのも面白いと言い出した。


そこで2人は折衷案で時と状況に応じてリーダーを変えようという案に落ち着いた。


そして先発はヨハネスが出ることになった。美琴は自軍コーナーで待機。


対する相手チームは謎の怪人が出るらしかった。勝負の開始を告げる鐘はない。


互いが攻撃をした時が始まりの合図なのだ。


「はあああああッ」


「……」


赤と金、長い髪を振り乱しながら両者はロープに飛び、リング中央で肘打ちを鉢合わせする。


初コンタクトは互角だった。


怪人がハイキックを放つとヨハネスはそれを腕で受け止め、彼の足をキャッチ。


股が開いたところで急所の蹴りを打ちこもうとするが、逆に相手の急所蹴りを食らってしまう。


涙目になり、唇を噛み締めつつも、怪人の頭を掴んでヘッドロックに捉え、ロープを使用した目潰しを敢行。


圧力と速度により摩擦熱が発生し、ロープの擦る音と共に怪人が苦痛の声を上げる。


「どうだい。僕は他のメンバーと違って容赦はしないよ」


ヨハネスは懐に隠し持っていたメリケンサックを装備し、怪人に斬りかかるが、怪人はそれを避けると腕を振ってメリケンサックをヨハネスの腕から外させ、宙高く舞い上がる。


そこから打点の高いドロップキックを甲板に命中させ、この試合がはじまって初のダウンを奪う。


けれど怪人は軽快な動きで立ち上がると、背後に回ってバックドロップを炸裂させるべく、高々と持ち上げる。


「おっと、そうはいかないよ!」


ヨハネスはくるりと身体を反転させると、ボディプレスで反撃。


しかし体重の軽い彼は容易く弾き返されてしまう。


怪人は仮面の奥の瞳を光らせ、口を開いた。


「お前はこのような時でもそのような暑そうな服装をしているのか?」


「君に言われたくはないね」


ヨハネスは鹿撃ち帽子にインバネスコートという探偵スタイルを貫いていた。


けれどもこの服装は怪人にとって暑い上に動きを制限する枷にしか見えなかった。


「これは単なるファッションじゃないよ。ちゃんとした意味があって着ているものなんだ」


「ならばその意味とやらを証明してみるがいいッ」


仮面の怪人はヨハネスに突っ込んでいくと、拳を固めて打撃のラッシュ。


しかし美少年は避ける素振りをみせず、ノーガードで食らってしまう。


「ヨハネスさん、逃げてくださいっ!」


美琴は手をメガホンのようにして助言を送るが、ヨハネスは逃げない。


それどころか無数の打撃を受けているにも関わらず薄く微笑むばかり。


怪人は異変に気付き、打撃をストップ。


「貴様……そのコートは!?」


「ようやく気付いたようだね。僕のコートは身を守る盾としても機能する」


「打撃を吸収する素材を使用しているようだな」


「そうだよ。つまり、君のパンチやキックは僕には一切効かない。

残るは関節技しかないけど、君はどうするつもりかな」

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