電子頭脳と武器を総動員!必死です、HNΩさん!
全快となったHNΩはΣMDCのエネルギー弾を次々にカイザーに撃ち出す。
対するカイザーは弾の軌道に合わせて拳を見舞い、光弾の威力を打ち消していく。
命中すれば高威力だがかき消されてしまっては意味をなさない。
放たれる緑の禍々しい弾は全て彼の拳に相殺されていき、一撃の命中も許さない。
「普通に撃つだけでは効果が無いか。ならば、これはどうかな」
Ωは自身の真上に向かって撃った。
弾は青い空に吸い込まれていき、やがて見えなくなってしまった。
誤射ではない。それはHNΩの余裕綽々の態度からも見てとれる。
では、一体何の為に。
カイザーが答えを導き出すよりも先に動いたのはHNΩだった。
掌を閉じて拳を作り、それを開く。
危険を察知した美琴が空を見上げると、まるで流星群のように無数に分裂した光弾がレーザービームとなって地上に降り注ぐ。
HNΩは空中で待機させていた光弾を破裂させることにより広範囲での攻撃を可能としたのだ。
「まともに撃っては当たらない。だが、無数かつ広範囲なら話は別だ。
カイザーよ。お前はこの果てしなく降り注ぐ光線を防げるか。
それとも背後の仲間と共に朽ち果てるか。俺は後者にかけてやる」
「甘いぞ」
一つの光弾から別れたため、威力自体は分散している。
だが、その速度と量は以前とは比較にならないほどパワーアップしている。
いかに低威力とはいえ、いつまでも食らっていてはカイザーも持たないだろう。
そのように踏んだHNΩだったが、次の瞬間、彼の一つ目の顔から冷や汗が流れ出た。
カイザーがドーム状のバリアを展開し光線の雨を防いだからだ。
防御壁に当たった光線は一瞬にして消滅し、内部まで届かない。
「バリアを貼るとは考えたものだが、その防御がいつまで持つかな」
上空に何発もの光弾を撃ちこみ物量で圧倒する作戦を敢行するΩ。
しかし、それでもカイザーの牙城は崩れる気配を見せない。
ΣMDCは目黒の銃と同じく電池式である。
けれど彼とは違い予備の電池を何本か用意していたΩだったが、度を越えた乱射によって、それらの電池も全て使い切ってしまった。
これは決してHNΩの準備不足ではない。
たった一度命中しただけでも美琴を戦闘不能に陥らせるほど高威力の弾である。
並の能力者ならとうに力尽きていても不思議ではない。
どれほど攻撃しようと亀裂の一つさえ入らないカイザーの盾の防御力が異常なのだ。
弾切れが起きたことに気づいたカイザーはバリアを解除し、ゆっくりした足取りで敵に近づく。
大地を踏みしめ、戦闘によってできた瓦礫を足で粉砕しながら接近する巨人。
その全身からは赤いオーラが噴き出し、今にもΩを飲み込みそうなほどの威圧感を放っていた。
「どうした、HNΩ。使い物にならなくなった武器を持っても意味などなかろう。
それを捨てて、私と拳で闘りあってみろ!」
「へへへへ、新型になったΣMDCを耐えきるとは、やるじゃねぇかカイザーさんよ。
だが、アンタはどうやらお忘れのようだ。俺は全身が武器になるってことをなーッ!」
これ以上の接近を許すまじと両肩のハッチを展開し、超小型ミサイルを全弾発射。
「効かぬ……」
右腕を軽く振るったカイザー。
それにより生じた衝撃波で、全てのミサイルは彼の身体に到達する前に消し炭となってしまった。
皇帝を意味する名を持つ男はため息を吐き。
「武器はあくまで補助的なもの。
武器に重きを置き頼りにしているようでは、それを失った後には無力さと虚しさしか残らない」
「黙れ! ロボの俺にとっては身体全てが武器だ。どう闘おうと俺の勝手だろうが」
「確かにお前の言うことにも一理はあるが、私の目から見た今のお前は棒きれを振り回すだけの駄々っ子に見える」
「……貴様……ッ!」
「HNΩ、お前に一つだけ問う。お前はなぜ、殺し屋を続ける。
人類と共に共存し穏やかに暮らすという選択を頑なに拒む理由は何だ」
カイザーの口から放たれた疑問にHNΩは暫し硬直する。
そして彼の脳裏に浮かんでいたのは遠い過去の記憶だった――




