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Ωさんの最終奥義です!

※今回はいつもより残虐描写が強めですのでご注意ください。

頭突きを食らわせる度に血が噴き出す額。一撃で倒せないことは重々承知だ。


しかしどれほど強固な素材で構成された頭であろうと幾度も攻撃を続けていれば、やがては亀裂の一つくらいは入れられるのではないだろうか。


敵の両脇を両足で強く挟んでいるから締め付けることは敵わずとも体勢を安定させることができる。


そこから繰り出されるヘッドパットは通常もの何倍の威力を誇るのだ。


もう何度頭突きを打ったかわからない。数えることをやめてしまった。


だが小さな水滴でも打ち続ければ岩をも凹ませることができるという。


自分がしているのはまさにそれだ。両親や祖父が見たらパスティス王家らしくないと叱責されるだろう。だが、それでも構わない。


今の自分に一番大切なのは王家の誇りなどではないのだから。


だが、単調な攻撃ばかりではやがては敵も防御してくるだろう。


ここら辺で戦法を変えてみるのもよいかもしれない。


ムースは大きく身を引き、倒立の体勢になると、脚力で相手を後方に放り投げた。


再び頭部をアスファルトにめり込ませるHNΩだが、効いていないようで頭を引き抜こうとする。


そこに一瞬の隙があった。


ムースは飛び上がり、上体を起こしかけた彼の顔面に飛び蹴りを打つ。


不意を突かれての攻撃に対応しきれず、HNΩはまともに食らって後退する。


この機を逃しては絶対にいけない。たとえ足が砕けようとも、ポンコツロボに損傷を与えてみせる。


ムースは流星のようなドロップキックを連射し、四方八方から縦横無尽に相手の背や甲板、そして頭部を蹴りまくる。


短時間かつ短距離の移動であるならば背中のブースターを使い、超高速を出せるHNΩだが、基本的には俊敏さではムースに劣る。


バッタのようにジャンプし、電線やビルの屋上から加速を付けて打ってくる彼女の鋭い連蹴の前には翻弄することしかできない。


捕まえようと手を伸ばしても、それっより早く空中に跳び上がるのだから、厄介なものだった。


それでも自らの装甲に自信を持つHNΩは身体の負担を度外視した無茶な攻撃の連続により、自分が動くまでもなくムースは自滅するだろうと計算し、敢えて相手の誘いに乗ることにした。


ダメージ率が二〇〇パーセントといえどもいつまでもその威力は維持できないし、俺の装甲には全く歯が立たないだろう。


相手の反応を確かめるべく、HNΩは本日三度目の演技をした。


片膝を付くことによりダメージを負っているように見せかけたのだ。


果たして少女は撒いた餌に食いつき、アルゼンチンバックブリーカーをかけてきた。


打撃は効かないと知り、今度は関節技を挑むとは。


HNΩは心の中で呆れていた。


自分はロボ。従って痛覚は存在しない。そんな技を仕掛けたところで、痛みに耐えかねギブアップなど絶対にするはずがない。その事実を、この女は分かっているのだろうか。


だが、この時HNΩは自らの身体に起きつつある異変に気づいてはいなかった。


ムースはロボを担ぎ上げたまま、豪雨の中で跳躍しては着地を繰り返す。落下の速度を合わせることで、より彼の身体をヘシ折りやすくしているのだ。


自らの身体からネジやナットが放出されているのを見て、ここにきて初めてHNΩは自身が少なからず損傷を受け始めていることを悟った。


ロボに痛覚がないとはいえ、体を構成する骨格や回路などは存在する。


それを切断されてしまえば、流石の彼も機能停止という道を辿らざるを得なくなる。


それだけは御免だ。


人間、それも少女に破壊されたとあっては殺し屋ロボとして轟かせてきた地位も名誉も地に落ちる。


そんなことはあってはならない。


成し遂げた依頼は一〇〇パーセント遂行する。


同じ台詞を口にして三下の李如きに呆気なくやられた目黒怨とは年季が違う。


俺の方が強く、依頼金も高い。


やつと同格かそれ以下になってしまえば、依頼主は減り、金は稼げなくなる。惨めな思いは御免だ。


俺はこれからも大金を稼ぎたい。


稼ぎまくって自らを改良し、必ずやあの男を倒したい。


ここで破壊されては俺の夢は幻に終わる。それだけはいけない。暇潰しにはなるかと期待したが、少々面倒臭いことになった。この女も依頼の対象に入っている。


わざわざ遊ぶ理由はないはずだ。


仕方あるまい。


少々後始末に手間はかかるが、依頼を達成できないよりはずっといい。


あと一分。残り一分ジャストでこの女を始末し、その後は美琴の番だ。


「次で終わりにしよう」


ムースの反らす力が弱まったのを察知したHNΩは顎と太腿のクラッチを外して技から脱出。


右腕を剣状に変形させ、一気に間合いを詰めてムースに斬りかかる。

全ての力を出し尽くしたムースにそれを躱す体力はなく、腹部に斬撃を食らってしまう。


だが、彼女のコルセットのみが切断され腹を露出させるだけにとどまった。


「浅いですわね。そのおかげでわたくしはこんなはしたない恰好をさせられる羽目になりましたわ」


冷や汗を流しながらも軽口をたたく彼女にHNΩは電子音で笑い。


「今のは俺の最終奥義の序曲に過ぎない。本当に恐ろしいのはこれからだッ!」


ムースを左腕で首を絞めながら高々と抱え上げ、空いた右腕を鋭利な細槍に変換させる。


HNΩはムースのへそに細槍を根本まで深々と差し入れた。


彼女の縦長のへそから体内に侵入した槍は彼女の身体の中で無数に分裂し極細槍と化し、五臓六腑を貫いた。無数の槍は背中まで貫通し、彼女の背後から鮮血が迸る。


「がはっ……」


口から血を噴き出し、ムースの青い瞳は白目を剥く。


「任務完了だ」


体内から腕を引き抜いたHNΩは、血染めとなったムースを蹴飛ばし踵を返す。


「まずは一人目は始末した。次は美琴の番か」

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