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ヨハネスさんの2つの忠告です!

目の前に積み重ねられた皿の山。


現在合計五つの山が出来上がっているのですが、数えてみたところ一つの山につき、二〇枚もの皿が積み重なっています。一体誰がこれほどの量を食べたのでしょうか。


わたし?


それともムースさん?


いいえ、どのどちらでもありません。


何とその皿は全てヨハネスさんが完食したものなのです。


遡ること一時間前。


メニュー表を眺め暫し考えこんでいたヨハネスさんは、不意にテーブルに設置されてあるブザーを押して。


「このページのメニュー、全てください」


一ページ分とはいえ、それを全て注文するとなるとかなりの量があります。


それにお金も相当にかかるはずです。なぜ、彼女はそのようなことをするのでしょうか。


思い切って訊ねてみますと、爽やかな笑顔で答えが返ってきました。


「悩む時間が勿体ないからね。それならページにある全メニューを注文した方が早いと思わないかい。大丈夫、お金はちゃんとあるよ」


ヨハネスさんがコートの懐から取り出したのは革製の長財布でした。


中を見せてもらうと大量の紙幣が入っています。


どうやらヨハネスさんはお金持ちのようです。


ここでムースさんがニヤッと笑って。


「ヨハネス様でしたっけ?

あなたは調子に乗ってつまらないことをしましたわね」


「何のことかな」


「金銭面の問題は大丈夫としましても、あれほど大量のお料理を注文して食べきれるわけがありませんわ。せいぜい無理に食べて豚のように肥えるがいいですわ。

そしてあなたの風船のように膨らんだお腹をわたくしが針で刺して破裂させてあげますわよ」


ムースさんの言い分はわたしも最もだと思っていました。


細身で小柄な体に大量の食べ物が収まるはずがないと考えていたのです。


ですが、そんなわたしたちの予想は見事に裏切られてしまいました。


ワッフル 二三枚


パフェ 一二杯


ケーキ 三五皿


ドリンク 多数


それらを僅か一五分で完食してしまったのです。


ですが、それでも食べ足りないらしく、彼女はその後一時間も次々にメニューを注文しては食べるを繰り返し、結果的に冒頭の皿の山を作り上げることになりました。


積み重ねられた皿の多さで、ムースさんの姿は完全に向こう側に隠れてしまっています。


しかも驚くべきごとに彼女のお腹は食事前も食事後も細いままで全く変わっていません。


一体、どんな体の構造をしているのでしょうか。


そもそも、この人はわたし達と同じ人間なのかと疑問に思うようにまでなってきました。


大量の皿で視界を遮られたムースさんを無視して、ヨハネスさんは口をナプキンで拭いて切り出しました。


「食事も終わったし、話に入ろう。

君達が知りたいのは隊長――つまりはカイザーさんの居場所だよね?」


「はい。でもどうしてそれを――」


「僕に知らないことはない。

彼はフランスはパリでレストランを経営している。そしてお店が休みの時は人気のない山奥の家で一人暮らしをしているよ」


「教えていただき、ありがとうございます」


お礼を言いますと、彼はコートの懐から小さな薬瓶を取り出し、私に差し出しました。


中には緑色の液体が入っています。


「……これは?」


「超人キャンディーの副作用を消す薬だよ。長生きが嫌になったら飲むといい。但し」


ここで彼女は真剣な顔で。


「飲むか否かは慎重に考えてから決断するべきだと僕は思う。何故ならこの薬は猛毒なんだ」

「猛毒……ですか!?」


周りのお客さんを驚かせないように、出来るだけ小さい声で訊ねます。


すると彼女は頷いて。


「効果が強すぎて不老長寿だけでなく獲得した能力も、最悪の場合は命さえも落としてしまう危険なものなんだ。あまりにもリスクが高い道ではあるけど、選択肢の一つとして、持っておく分には損はない」


「そのような危険なものを美琴様に飲ませる訳にはいきませんわ!」


突如として会話に割って入ってきたのはムースさんです。


彼女は先ほどまで大量の皿の前で呆気に取られて動きを見せていませんでしたが、わたし達の会話を聞いていたのでしょうか、いきなりわたしの手から薬瓶を奪ってしまいました。


するとヨハネスさんがくすりと笑って。


「念のために言っておくと、君がそれを全部飲んでも何の問題もないよ。

副作用を消す薬は食べたキャンディーの能力によって別々のものが作られるからね」


「それでしたら、わたくしが飲み干した方が良さそうですわね」


ムースさんはあっさりとそう言って瓶の栓を抜こうとします。


ですが、あまりにも堅く詰められているのか、どれだけ力を込めても抜ける気配は見えません。


力尽きて薬をテーブルに置いたところを素早くヨハネスさんが奪い取り、自分のコートに戻します。


「今はまだ君にコレを渡すのは早かったみたいだね。

欲しくなったらいつでも連絡をしていいよ。すぐに送ってあげるから」


彼はわたしに名前と電話番号の書かれた名刺を差し出すと、椅子から立ち上がります。


「待ってください! もう行くのですか?」


「用事は終わったからね。そうだ、最後に二つだけ忠告しておくよ。

一つ 自分の能力を過信しないこと。

二つ 今すぐこの建物から逃げること」


「……えッ?」


「それでは僕はこれで失礼するよ」


言葉の真意を確かめる前に、彼は指を鳴らして消えてしまいました。


スターさんもそうでしたが、もしかするとスター流のトップクラスの人たちは全員瞬間移動ができるのかもしれません。


「美琴様、危ないですわッ!」


不意にムースさんが大声を出し、いきなりわたしの頭をテーブルの上に押し付けました。


その時わたしの耳に聞こえたのは


大きな爆発音でした。

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