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不動さんとムースさん、因縁の対決の幕が開きます!

スター流に戻ったわたしと不動さんは早速スパーリングをすることにしました。


練習とはいっても不動さんは決して手を抜くような人ではなく、わたしをムースさんと勘違いしているのではないかと疑問に思う程激しく攻めてきます。


わたしもやられっぱなしではいけませんので、彼の攻撃を躱したり、受け流したりとダメージを軽減させます。


わたしの身体には無意識で相手に受けたダメージを何倍にもして反射する能力が備わっているのですが、どれだけ攻撃を跳ね返されたとしても、彼はそれをものともせずに向かってきます。


その姿はまるで猪突猛進の機関車のようです。


「ハァ……ハァ……ハァ……」


「どうした? その程度でもう息切れか? だからお前はガキなのだ」


「不動さん、そろそろわたしをガキというのは止めてもらいませんか」


「止めてほしいのなら、条件を出してやる」


不動さんはリングに大の字に倒れたわたしを見下ろしニヤリと笑うと。


「立て! 今からお前に俺のスター流超奥義を伝授してやる!」


「スター流……超奥義」


スター流超奥義は以前に聞いたスターさんの説明によりますと、数多くあるスター流奥義の中でもごく一部の人しか習得できないと言われている超難易度の技のはずです。


それを伝授するということは、口では悪いことを言っているようですが、もしかすると不動さんはわたしを認めているかもしれません。


そう考えると、なんだか嬉しくなってきます。


「頬が赤いが、どうかしたか?」


「いえ、何でも……」


「まあいい。

俺があのゴミクズに敗北するなどあり得んだろうが、念のために保険をかける必要がある。

俺が敗北するようなことがあれば、お前が闘うということだ」


「……はいっ!」


「良い返事だ。では、はじめるとしよう。見事俺の奥義を習得できたら、お前の名を呼んでやるのも考えてやる」


「本当ですか」


「お前のような半人前が俺の奥義を習得できるなど、天地がひっくり返ってもあり得ぬだろうが」


「わたし、やってみます!」




ムースさんと初めて出会ってから三日が過ぎました。


わたし達は約束通りにスタードームに行き、控室で試合が行われる時を待ちます。


早くに会場入りしたのでまだ時間はあるのですが、わたしは彼女と闘うと想像しただけで、自分の足が微かに震えているのを感じとりました。


怖いのです。


人を玩具と称し、殺めることに何の罪悪感も抱かない冷酷非情さに加え、不動さんをあっさりと絞め落としたという事実。


その二つがいかに恐ろしい相手であるかということをわたしに警告しています。


闘わなければいけないことも、彼女に勝って人を殺めることをやめさせなければならないこともわかっています。


スターさんから能力を与えて貰ったとはいえ、自分で発動したこともなく、使いこなせるという保証はどこにもありません。


作戦を立ててはきましたが、果たして彼女に通用するかはわからないのです。


そんな不安を抱いていますと、不動さんがわたしの頭にポンと手を添え、くしゃくしゃと頭を撫でました。


「な、何をするんですかっ!

解いた髪が台無しになっちゃいます!」


慌てて頭を抑え、不動さんを見ます。


彼はフッと口角を上げて笑いますと、力強い声で言いました。


「案ずるな。今日、お前に出番はない」


「どういう意味ですか!?」


「俺があのゴミを完膚なきまでに叩き潰すからだッ!」


宣言して立ち上がりますと、係の方がドアを開きました。


「不動さん、美琴さん。出番です」


「行くとするか」


バキボキと拳を鳴らし、嬉しそうに告げる不動さんの後を付いていきます。


そして、控室を抜けた先に広がっていた試合場の光景は――


人、人、人。


三百六十度、どこを見ても観客席にはぎっしりと人で埋め尽くされています。


ムースさんがテレビ局を通じて宣伝したからでしょうか、これほどの多くの人が集まっているとは思ってもいませんでした。


わたしにとってはスター流としてデビューする初めての試合になります。


緊張しますが、この闘いは絶対に勝たなければなりません。


もっとも、不動さんがムースさんに完勝してくれるのであればそれに越したことはないのですが。


ムースさんは先にリングの中に入ってわたしたちを待っていました。


ですが、よく見ると普通のプロレスのリングとは一風変わっています。


四方が高い金網に囲まれているのです。


「ムースさん、このリングはどうなっているのですか?」


「ゲージ・デスマッチですわよ。

リングの中に入って、KOするまで闘うのがルールですわ。もちろん、中に入ったら上空にも金網を設置しますのでご安心なく」


ゲージ・デスマッチ。見るからに恐ろしい試合方法です。


少し金網に触れてその感触がどれほどのものか、確かめてみましょう。


手を伸ばして金網に触れた瞬間、パチィンという強い音とショックがわたしの身体を駆け抜けました。ビリビリと腕が痺れます。


「この感覚、まさか電気――」


「その通りですわ。金網にちょっとでも触れたらバチバチ感電してしまいますの。何度も当たったら丸焦げになってしまいますわね。面白いと思いませんか」


にっこりと微笑むムースさん。


この方の考えには賛同しかねます。


すると、無言だった不動さんが口を開きました。


「金網電流デスマッチとは考えたものだが、これがお前の用意したサプライズとやらか?」


「いいえ。サプライズはこれですわ!」


彼女が指を鳴らしますと、地面から何かが盛り上がり、飛び出してきました。


よく見てみますと、それは肉体治癒装置で、中にはわたしがよく知る人物が入っていました。


「李……だと!?」


不動さんが驚愕するのも無理もない話でした。


そうなのです。中に入っていたのは紛れもなく李さんだったのです。


恐らく、入院している彼女をムースさんが連れ出したのでしょう。


意識を回復しない彼女をこのような場所へ連れ出すなど言語道断です。


今すぐにでも病院に連れて帰って安静にさせなくてはなりません。


「彼女を離してくださいッ!」


「お断りしますわ」


「仕方ありません。あまり強引な手段は使いたくありませんが、力づくでも病院へ連れ戻します!」


一気に加速し、彼女の肉体治癒装置に近づき、両腕を伸ばします。


ですが、わたしの身体が到達する瞬間に見えない力で弾き飛ばされてしまいました。


もう一度挑戦しますが、結果は同じ。


「どうして近づくことができないのです!?」


「彼女の肉体治癒装置にはバリアが貼られておりますの。解除するにはわたくしを倒すしかありませんわ。それと、李様の装置をよくご覧なさい」


指摘されて注意深く観察しますと、何と肉体治癒装置には時限爆弾がセットされていたのです。


しかも恐ろしいことに、時限爆弾のタイマーはどんどん数字が進んでいきます。


今で残り時間は61分を切りました。


ムースさんはリングの中で大きく手を伸ばし。


「どうします? 彼女のバリアと時限爆弾のタイマーはわたくしを倒さない限り効果は消えません。

彼女を助けたかったら、リングに上がってきてくださいな」


何と言う人なのでしょう。


意識不明の李さんを盛り上げるための道具に使うだけでは飽き足らず、時限爆弾まで設置するなんて。


わたしは今まで、これほど良心の欠片もない人間を初めて見ました。


確かにわたしは争いは好みません。


ですが、彼女の行いは明らかに度が過ぎています。断じて許すわけにはいきません。


意を決して一歩踏み出しますと、大きな右手がわたしの行く手を遮断器のように遮りました。


「ガキ、先ほど言ったはずだ。今日は、お前の出番ではないと」


「でも――」


「あのゴミクズには因縁がある。ここは俺が奴を往生させる」


「ですが不動さんは彼女と闘うと力が弱くなってしまいます」


「そんなことは関係ない。あのゴミには丁度いいハンディだ。

それに、今のお前の面はお前らしくない」


「え?」


「鏡を見ればわかるだろうが、今のお前は怒り顔になっている。そのような怒り顔など、お前には似合わない」


「不動さん……」


「そして何より、奴に怒りをぶつけるのは、この俺『怒りを以て人を救いに導く』不動仁王の役目だ」


不動さんはゆっくりと金網に近づいたかと思うと、凄まじい速さで駆け上がっていき、リング内へと入ります。


彼が着地するとその体重でリングに轟音が上がります。


不動さんはその名の通り仁王立ちになりますと、怒声を発します。


「この世に存在する価値もない最低最悪のゴミクズよ。

貴様を跡形もなく消し去り、往生させてやる。光栄に思うがいい」


「それは楽しみですこと」


二人が告げたと同時に上空に金網が取り付けられ、試合開始の幕が切って落とされました。

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