李さんと目黒さん、荒野での決闘です!
李は目黒の乱れ撃ちを避けながらも、宙高く舞い上がり、そこから蹴りを放つ。
つま先に力を集中させた鋭い蹴りは目黒の右手に命中し、彼の愛銃を弾き落とした。
「飛び道具などに頼らずに、拳と拳で勝負しようよ」
「後悔しても知らんぞ」
「望むところだよ」
拳を構えた両者は一気に間合いを詰め、互いの拳を打ち合う。
拳と拳が激突する度に放たれる衝撃波により、周囲の草木は吹き飛ばされる。
目黒は李の顔面を狙うべく拳を穿つが、李は彼の攻撃に合わせて自らも拳を打って防き、顔へのヒットを許さない。
上半身への攻撃は防がれると判断した目黒は彼女に素早く足払いを見舞って体勢を崩させ、僅かな隙を突いて彼女の甲板に強烈な一撃を叩き込んだ。
後方へ滑る李だったが体勢を立て直して急停止。
彼女の中国服は胸部分が裂け、露わになった素肌が打撲により紫色に変化していた。
胸の苦痛に思わず片目を瞑り、歯を食いしばって苦悶の表情を見せる李に目黒は冷ややかに笑い。
「愚かな奴よ。負傷した身でこの俺と闘り合うなど狂気の沙汰だ」
「僕だってできることなら、万全の状態で君と闘いたかったさ。
だけど僕には時間が無いんだ……ッ!」
自らに向かって駆けだした彼女を、目黒は腰を落として手を広げて待ち構える。
そしてショルダータックルを敢行した彼女をキャッチし、スープレックスで後方へと叩きつけた。
堅い地面に頭を強打した李だが、頭を二、三度振って再度立ち上がる。
だが、相手は先ほど落とした銃を拾い、彼女目がけて発砲してきた。
高い光線音が鳴り響き、彼女の服を次々に撃ち抜く。
「どうした、李さんよ。ご自慢のスピードで逃げたらどうだい」
舌を出して笑いながら撃ちまくる目黒。
だが李は地面に根を張ったかのように強く踏ん張り、彼の攻撃を全て受ける。
撃たれる度に服が破れていく服は腕や腹など素肌の大部分を露出する格好となっている。
これまでは防御力が高い服がダメージを軽減してくれていたおかげで致命傷は避けられていたが、高威力のエネルギー弾をまともに浴びれば彼女の身はかなり危険だ。
「馬鹿な奴だ。そんなビキニみたいな格好になって。俺を色香で惑わそうとでも言うつもりか? お前などの色香が俺に通じるとでも?」
「思っちゃいないさ。僕の作戦はもっと奥が深いよ」
「お前のような小娘の策などたかが知れている。能書きはそれぐらいにして、地獄へ行きな」
銃口を向け、止めを刺すべく引き金を引く。
カチッ。
間の抜けた音だけが出るが、光線が発射される様子はない。
幾度も引き金を引くが結果は同じ。
「まさか……!?」
銃の異変に気付いた目黒は銃の電池残量を見ると、メモリはゼロになっていた。
「貴様ァ! 最初からこれを狙って――」
「君と僕ではここの出来が違うようだね」
自分の頭をコツコツと叩き、目黒を挑発する。
目黒の銃は充電式であり、光線を撃つにはそれなりの電力を消耗する。
使用には限りがあることを以前の闘いで学んでいた李は彼に銃を撃たせることで電気を消耗させたのだ。
「これこそまさに、肉を切らせて骨を断つ!」
李の踵落としを右肩に食らい、悶絶する目黒だが彼はダウンしない。
辛うじて踏ん張ると彼女の顔面に再びパンチを当てようとする。
李は爽やかに笑って。
「そんなに拳の打ち合いが好きなら、思う存分付き合ってあげるよ」
彼の手首をパンチが当たる寸前にキャッチし、腕力で彼の拳を開き、互いの小指を絡める。
「この構えは――」
「スター流奥義がひとつ、指切り拳万!」
ガッチリと絡められた小指はいかに目黒が外そうと苦心してもビクともしない。
その超至近距離から李の必殺の左の拳が機関銃のように撃ち込まれていく。
捻りを加えられ威力の倍増した拳は一撃、また一撃と確実に、そして凄まじい速さをもって彼の顔面に炸裂する。
撃ち込まれる拳は次第に速度と威力を増していき、頑強な目黒の口を出血させ、体を大きくのけ反らすまでの威力へと進化していき、彼が大きく身を引いたことで足が浮き、彼の身体全体が宙に浮いた状態となる。
膠着かつ無防備の状態を逃すような李ではなく、全身全霊を込めて拳を見舞う。
目黒の顔面は地面と李の拳にサンドされ、まるでアルミ缶のようにぐしゃりと潰れてしまった。
真っ青な血で染まった拳を離し、距離を置いた瞬間、禍々しいオーラを感じ取り、彼女は大きく目を見開く。
目黒は幽体離脱のようにスーッと地面から起き上がると、右目のスコープを妖しく光らせた。
見ると彼のひしゃげた顔面が徐々に元の形に戻っていくではないか。
顔面のダメージが完全回復した目黒は冷たい目で李を見る。
彼の氷のような凍てつく視線には流石の李も恐怖を感じ、全身を強い寒気が襲ってきた。
寒気のあまり両肩を抱きしめる彼女に目黒は今までとは違う、ねっとりとした陰湿さの漂う声で告げた。
「俺はお前が怨めしい」
「……ッ!」
驚愕する李に目黒は普段は収納してある背中の悪魔の蝙蝠を思わせる翼を展開し、全身から紫色のオーラを放出した。
「骨の髄まで教えてやろう。怨みの力の恐ろしさというものを」




