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李さん大捜索です!

不動さんが持ってきたおにぎりを食べ終えたわたしは、急に睡魔に襲われてしまいましたので、歯磨きをして眠ることにしました。


隣のベッドにいる李さんは大好物のラーメンを食べ続けています。


食べるペースが遅めであることから考えるに、きっとゆっくり味わって食べたいのでしょう。


「おやすみなさい」


それだけ言って深い眠りについたわたしですが、忍者達の戦闘の疲労が相当に溜まっていたのでしょう、どんな夢を見たかも思い出せません。


ですが、不意に唇に柔らかい感触を覚え、それで目が覚めたことだけははっきりとわかりました。


まるで誰かにキスをされたかのようでしたが、わたしにキスをしてくれるような王子様が急に現れたとは思えません。だとするとこれは夢でしょうか。


夢にしては妙にリアルな感触でしたが……


疑問が解けないまま、二度寝をしようと毛布を被りますが、目が覚めてしまったこともあってか、中々眠りに就くことができません。


仕方がないのでこのまま起きることにして、まずは顔を洗ってこようと思いました。


隣で寝ている李さんは起こさないように薄暗い医務室内を歩き、お手洗いへと向かいます。


電灯をつけて、洗面台の傍に置いてある時計を確認してみますと、早朝の四時半でした。


確かわたしが就寝したのが昨日の午後八時でしたから八時間は眠った計算になります。


睡眠時間としては十分ですので二度寝ができないのも頷けます。


顔をお水で洗って歯を磨き、再び医務室に戻ったわたしは、ここにきて異変に気が付きました。


これまでずっと寝ていると思っていた李さんの姿が見当たらないのです。


薄暗い中でも毛布の膨らみが無いことから判別できますが、念を押して部屋の明かりを付けてみますと、案の定、李さんの姿はありませんでした。


「どこに行ったのでしょうか」


ベッドに腰かけ、彼女が帰ってくるのを待ちますが三〇分が経過しても彼女が戻ってくる様子はありません。トイレにしては遅すぎますし、お夜食を摂るには相応しくない時間ですから、もしかすると彼女は誰にも告げずにどこかに行ったのかもしれません。


わたしは真相を探るべく、急いでパジャマから私服に着替えて辺りをビルの中を捜索することにしました。


眠る前に不動さんから聞いた話によりますと、このビルは夕方になると全ての従業員は帰ってしまい、残るのは基本的に不動さんとジャドウさん、スターさんの三人だそうですから、三人に聞けば李さんがどこに行ったのかわかるのかもしれません。


もっとも、問題は彼らがビルのどこにいるのかわからないということですが。


「李さ~ん! 不動さ~ん! ジャドウさ~ん、スターさ~ん!もしもわたしの声が聞こえたら返事をしてくださ~い!」


近隣住民に迷惑がかかっていないかと少し気が引けつつも、わたしは大声で彼らの名前を呼び、ビル内を駆けまわります。すると。


「はいはい」


「キャッ!?」


不意に返事がして、ポン、と肩に手が置かれる感覚がしたかと思うといつの間にかわたしの隣にスターさんが黄色いパジャマ姿で立っていました。


彼はどういう訳か大きな熊さんのぬいぐるみを抱きかかえています。


「スターさん、どうしたんですかこのぬいぐるみ!?

じゃなくて、李さんがどこに行ったか知りませんか」


「わたしは毎日この熊ちゃんを抱いていないと眠ることができないのでね。フワフワで温かくて抱き心地抜群だよ。李ちゃんの行方は知らないよ」


「ありがとうございます! 大声で呼んだりしてすみません!」


わたしは彼に頭を下げると急いで他の二人に訊ねるべく、彼の元を離れ、駆け出しました。


ですが、目の前にはいつものスーツ姿になったスターさんが大きく手を広げてわたしの行く手を遮りました。


「ストップだよ、美琴ちゃん」


一瞬で先回りするだけでなく、服まで着替えるとはやはり彼の実力は底が知れません。

彼はウィンクを一つして、わたしに口を開きました。


「李ちゃんの捜索もいいけれど、折角こうして二人きりになったのだから、ここはひとつアレをしよう」


この雰囲気からわたしはあることを連想してしまい、顔がみるみる真っ赤になっていくのがわかります。


「もう! こんな時に何てことを言うんですかっ」


「何が? わたしは君の卒業式をしてあげようと思ったんだが」


「……卒業式……?」


「そう! 君はスター流を卒業できるに値する実力を得たとわたしは確信している」


卒業式という答えを聞き、自分の考えのあまりの恥ずかしさに穴があったら入りたい気持ちになりました。


でも、こんな朝早くから卒業式など聞いたことがありません。


それに今は李さんの捜索を優先しないといけません。


お断りしようとしますと彼はわたしの腕を掴んで走り出しました。


「美琴ちゃん! 急いでいるからこそ、緊急時だからこそ、スター流の卒業式はやる意味がある! これをすれば李ちゃんの捜索にもきっと大きく前進するだろう!」


「……本当ですか……?」


「ジト目はやめたまえ。本当だとも! 少なくとも、わたしはそう思う! なぁに、5分とかからないから安心したまえ!」


彼に半ば無理やり連れてこられたのは会長室でした。


彼は部屋に入るとすぐに机の中から大量のキャンディーの入った瓶を取り出し、机の上に置きますとわたしを手招きして。


「これより、スター流恒例の卒業式をはじめようかと思う。

さあ、美琴ちゃん、好きなキャンディーを一個だけ選んで!」


キャンディーを選べと言われてもお腹は空いていませんし、キャンディーと卒業式の何の関係があるのか見当も……


ここで李さんの話を思い出しました。


スターさんは超人キャンディーと呼ばれる人を能力者にさせるというキャンディーを卒業生に渡すという話です。


けれど既に超人的な身体能力を有するわたしが食べてもいいものなのでしょうか。


もしも今より強力な能力を身に着けてしまえば、最悪の場合、人を殺めてしまうことも考えられるわけです。ここは慎重に選ばないといけません。


ですが多くの種類がある上にスターさんが色ごとに何の能力があるかを説明していないので、自らの勘にかけるしかありません。


瓶の中に手を入れ、中から一つのキャンディーを取り出します。


それは水晶玉ほどもある特大サイズの白色をしたキャンディーでした。


そのキャンディーを見たスターさんはいつもにも増して目を輝かせ。


「やあ! これは大当たりだ!よかったね、おめでとう!

では、早速食べてみたまえ! 美味しいから!」


言われるがままにキャンディーを口に入れて中でゴロゴロ転がしますと、口の中いっぱいに甘いミルクの優しい味と香りが広がります。


そしてキャンディーが口の中で全て消えた後、スターさんに言いました。


「とても美味しいキャンディーでした。でも、わたしは一体どんな能力を身に着けたのでしょうか?」


「それは後のお楽しみだ。早めに卒業式が出来てよかったよ。

実は一人欠員が出ることになるから心配していたんだ」


「欠員? どういう意味です?」


「ああ、こっちの話だよ。さあ、卒業式も終えたし、医務室へ戻った方がいい。李ちゃんも帰っているかもしれないし」


スターさんは少し引きつった笑いと冷や汗を浮かべると、わたしを軽く突き飛ばしました。

すると急に体が軽くなり、目の前の景色が霞んでいきます。


「スターさん、これは一体……」


「心配しなくてもいいよ。医務室に飛ばされるだけだから」


彼の言葉を聞いた次の瞬間、わたしは彼の発言通りに医務室のベッドに腰を下ろしていました。


どうやら彼の瞬間移動は他者の移動にも効力を発揮するようです。


ふと窓の景色を見てみますと朝日が昇ってきて、景色が薄らと明るくなってきました。


ベッドを見ますが、彼女はまだいません。


李さん、朝食までには帰ってきてくださいね。

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