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10.犯人はコンビニにあり

――むにゅん。

 ぬおお、クロの僅かながらの膨らみに手首が触れてしまったあ。


「クロ、俺の手を上から押し付けるんじゃない」

「ですが、くすぐったい故……」

「ま、待てえ。そう言いながら俺の手を動かす……うああ」

「ゆうちゃん殿、そ、そこは……はううう」


 自分からやってんじゃねえかよお。揺するな、揺するなあ。こりこり、むにゅむにゅ。

 こら、あかん。あきまへんで。このままでは……いけないワールドへ突入してしまうぞ。

 仕方ない……俺はクロの手をつかんで、彼女の太ももの上に乗せる。

 

「そこから、手を動かすなよお」

「ハアハア……」


 聞いちゃいねえ。手を太ももの間に入れるなあ! 変な事を想像してしまうだろうが。

 このままじゃ全く進まないと思った俺は、クロにブラジャーを巻きつけホックを止める。

 

「クロ、自分でそのブラジャーによせろ」

「はうう、ハアハア。ん? 何か言ったです?」

「だあああ、だからああ」


 俺は再度同じことをクロに説明すると、ようやく理解した彼女が俺の指示通りに動く。

 これで装着完了だ。後はノースリーブのニットを頭に被せて……残すはホットパンツだけだ。

 

「ズボンをはくのだ」

「むむむ」

「こらああ、俺の方を向いて片足をあげるな! 見える、見えるからあ。パンツを先にはけええ!」

「む、難しいです……」


 猫耳をペタンと頭につけて、難しい顔をするクロだったが、今度は両足を同時にあげてお尻が半分浮いている。

 「んんん」と頑張る声が聞こえて来るけど……違う意味に聞こえてしまうぞ……

 

「分かった、分かったから、立ってくれ」

「はいです!」


 俺は片足をあげさせて、次に反対側の足をあげさせ、ようやくパンツを上まであげることができた。

 同じようにホットパンツをはかせようと、片足をあげさせた時……クロがよろけて。

 

「あ、ゆうちゃん殿、元……」

「待てえ! その先は言うな!」


 俺は腰にへばりつき頬ずりするクロを引っぺがすと、ようやくホットパンツをはかせることに成功した。

 つ、疲れた……。

 

 だが、苦労の甲斐あってか素っ裸の時よりこっちの方が断然可愛いと思う。褐色肌によく合う黒色のノースリーブのニットに、肉球マークのワンポイントが入った濃紺のホットパンツ。

 ホットパンツから伸びたすらりとしたしなやかな脚が目に眩しい。

 

「うん、これでおっけーだ」

「ゆうちゃん殿、ありがとうです。して、どうですか?」

「か、可愛いと思うよ……」

「ゆうちゃん殿ぉー!」


 クロが感極まったように俺へ抱き着いてくる。俺はよしよしと彼女の頭を撫でると、彼女は猫耳をペタンと頭につけて目を細めた。

 

「クロ、ちょっくら親父さんに報告してくるよ」


 俺はクロから体を離すと自室からキッチンへと向かう。

 

 ◆◆◆

 

――キッチン

 キッチンには白髪オールバックのダンディな親父さんが、パイプ椅子に腰かけ競馬新聞に目を通していた。そして、部屋の天井から吊るしたテレビも競馬が放送されている。

 どんだけ、競馬が好きなんだよお。ま、まあいい。人の趣味にあれこれ言うもんじゃあないな。

 

「親父さん、ちょっといいですか?」

「お、勇人君、順調だとマリーから聞いてるよ」

「おお、そうでしたか。先ほどマリーたちの制服を用意するのにお金を使ったので、報告にと思いまして」

「いくらでも使ってくれて構わないとも! 足りなければ言ってくれたまえ」


 親父さんの声を聞きつけたのか、どこからともなく骸骨くんが二体それぞれジェラルミンケースを両手に抱えてカタカタとやってきた。

 あれに全部札束が入っているのか……一つ一千万として……ゴクリ。俺は余りの金額に喉を鳴らす。

 

「あ、いえ、お金は充分足りてますから」

「そうかね、そうかね。ガハハハ。わざわざ報告に来てくれなくても、金は自由に使ってくれていいからね」

「は、はい。ありがとうございます」


 俺が親父さんにお礼を言って立ち去ろうとした時、競馬中継を流していたテレビに緊急速報のテロップが流れる。

 ええと……


『拳銃を持った男が付近に出没しています。近隣住民の皆様はご注意ください』


 うわあ、ぶっそうだな。しばらく外出する時は注意しないとな。

 しかし、親父さんの顔がなんだか生き生きし始めたじゃないか。

 

「勇人君、これだ、これだよ!」

「え? 何でしょうか……」

「この男を捕まえたら、朧温泉宿の知名度も上がるのではないのかね? 君が接客指導、制服と揃えてくれたのだ。後は客を呼び込むだけだろう?」

「あ、ですが……『近隣』と書いているだけで、どこにいるかとか……」

「分かるとも! すぐに補足する。君はあの男を捕獲しに向かってくれないだろうか?」

「え、あ、いや、拳銃が……」

「おお、そうだった。人間は拳銃でも傷がつくのだったね。誰か一人連れて行きたまえ。骸骨くんでも構わないよ」

「い、いえ、骸骨くんは……違う意味で騒動になってしまいます」

「心配しなくとも大丈夫だ、勇人君。たとえ至近距離で拳銃を発射されようとも、ここにいる者なら君に当たる前に銃弾を掴むことができる」


 な、何だってえええ。それ身体能力が優れているとかそんなちゃちなもんじゃねえ。聞いてはいけない恐ろしいモノの片りんを聞いてしまったようだぜ……

 俺が黄昏ているのを気にもせず、親父さんは言葉を続ける。

 

「勇人君、君の所持する携帯へこの男の情報を送る。車で現地に向かってくれたまえ」

「わ、分かりました……」


 何というか、拳銃を持った男を捕獲するより、マリーたちの異常な身体能力を見られないようにする方が大変な気がしてきたぞ。

 といっても彼女らを伴わずに俺一人で行くには、拳銃が怖い。

 どうしたもんかなあ。

 

「んー、パパ、ゆうちゃん、何をお話ししてるのー?」


 俺達の会話が聞こえてきたのだろうか、マリーが目を光らせながら尋ねてきた。

 ん、「パパ」とな? 

 

「えっと、親父さんの娘がマリーなんですか?」

「そうだとも! 人間との間に出来た娘がマリーなのだよ!」

「そうなのー」


 俺の問いに親父さんとマリーが応えてくれた。なるほど、親父さんはマリーと同じ吸血鬼ってわけね。

 

「ゆうちゃんー、わたしがついていくよー」

「あ、うん」


 一番不安そうな人物についてきてもらうことになってしまったけど、大丈夫かな……。俺を守ってはくれると思うんだけど、「あー、力入れすぎちゃったー」とかで、拳銃を所持した男が明後日の方向に飛んで行ったりしそうで怖い。

 そこは、俺が何とかしよう。うん。それくらいはやらないとな! 頼ってばかりじゃダメだ。

 

 ◆◆◆

 

 俺とマリーが軽トラックに乗り込むと、ちょうど親父さんからの指示がスマートフォンに入る。

 

『例の男はここから数キロ先のコンビニに向かっている。先にそのコンビニへ行きたまえ』


 ふむ。コンビニか。親父さんの指示に従って、道を進んで行くと駐車場が非常に広いコンビニが見えてきた。

 親父さん曰く、周辺で一番駐車場が広いコンビニだそうだ。

 

『先に店内に入って、待ち構えておくといい』


 続いての指示に従って、俺はマリーと手を繋ぎコンビニへと入る。

 コンビニには若い女性の店員さんが一人だけで、他に客はいなかった。


 しかし、ここから思ってもいない事件に俺は巻き込まれることになったのだ!


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