3:彼女
私(?)の思惑通りに、修治君を裏野ドリームランドに誘うことが出来た。
淳君は、運動神経はいいけどちょっと馬鹿なので扱いやすい。
そして、私は前の私を思い出す。
私は、羽賀 京子。
性格はちょっと無理して明るく振舞っていた女の子。胸は大きく、顔はそこそこイケてると自分でも思っている。でも、残念なのが、全て回りに合わせてしまう性格なところだ。
この茶髪姫カットも中学校の頃、雑誌を見ていた友達がこれ似合うんじゃないっと数人で押し通され、する事に。私は黒髪のポニーテールにしたかったのに・・・修治君の好きな。
茶髪にした事により、今まで話さなかった女子だけでなく、男子まで話しかけてくるようになった。遊んでいるように見えるんだろうか。私は笑うフリをして話を合わせてしまう。そんな事をしていたら、どんどん人が増えていく。中には私の事を毛嫌いする女子グループも出るくらいに。
・・・少しは1人の時間もほしい。修治君を見ている時間がほしい。
中学の頃、修治君とぶつかって手首を掴まれた時、余りにテンションが上がってしまい、修治君に触れてしまったことは今でも覚えている。日課の全身鏡に向かって、鏡に映っている私にいつもの報告をする。修治君が何をしていた。修治君と近くに座ったなど。でも、その日は自分でもテンションが上がりすぎて、報告後、全身鏡に抱きつき、鏡に映った私にキスの練習までしてしまう。
高校生になって、同じ学校に修治君がいることに驚く。親の勧めで入った学校だったのに。
修治君が私を追いかけてきてくれたのだと思った。・・・だけど・・・話し掛けられることなく、時が過ぎていく。私の日課は、ドンドン暗い報告となっていく。なんで、修治君は私に話しかけに来ないのか。なんで、修治君と同じクラスになれないのか。なんで、修治君は・・・。
私も自分で動き出す事ができない性格だった為、自分から修治君に話しかけに行くことができなかった。
そんな中、高校三年になった時、転機が生まれたと思った。
修治君と同じクラスになったのだ。私は毎日学校に来ることが楽しみになった。
日課の報告も明るいものになったと思う。
だけど、進展はなく・・・悪いことに、高校2年の友達の勧めでサッカー部のチャラ男に付き合うように迫られることになる。こいつは最悪で、告って、私の返事も聞かずに付き合っているつもりになり、周りにいい振らしていた。なぜか、私の友達だった子も、それを受け入れるように次々と広めていった。
私は、周りを固められてしまった。
そして、・・・・ズルズルと引き込まれていく性格。
本当にどうしようもなかった。
体の関係を求めてきたけど、私は、それだけは譲らなかった。
こんな汚い奴なんかに!
そんな時、修治君が驚いたような表情で、私の前に現れた。
私は嬉しさと悲しさの両方の感覚が胸を締め付ける。
その場から逃げるように・・・嫌いな男と共に一目散にその場を離れた。
その後も体の関係を求めてきたが、私は逃げるように避けてきた。
アイツは私の他にも何人も付き合っている人がいる事を私は知っていた。
・・・というか、アイツと少し入ればすぐにわかる。
私の元友達もそうだったみたい。セフレという奴なんだろう。
なんであんな男に尽くすのか私にはよくわからないけど。
自分が好きなはずの男をドンドン押してくる。・・・・言わされてるのかもしれない。
高校三年の冬になる頃には、私は友達を選び、あの男とも会わないようにした。
修治君への高鳴る思いは募るばかり、小学校の頃から一目ぼれして・・・。
そんな時、元友達が困っているとスマホで夜中に呼び出され、何を思ったか、裏野ドリームランドまで言ってしまう。噂でも色々危険だと知っていた場所に。私はまた流されてしまったのだ。
そして、私を待っていたのは、その元友達達と・・アイツだった。
アイツらは、逃げ出した私を複数人で捕まえ、無理やり、裏野ドリームランドの中へと連れて行く。
そして、近くあったミラーハウスへと連れ込まれ、手や足を押さえつけられ、裸にされる。
私は泣きながら抵抗したが、誰も私を助けてくれなかった。
私は泣きながら鏡を見る。涙を流しながら酷い顔をしている私の顔が鏡に移るが、その表情がすぐに変わる。そして、私に呟いた。
「どれだけ馬鹿なの。」
私に酷いことをしようとしている連中は夢中で、その声には気付いていなかったが、私にはしっかりと鏡の中の私が喋ったのが聞こえた。
私は、鏡の中の私を見る。
鏡の中の私が手を伸ばす。
鏡から私と同じ手が出てきて、私の両手を押さえつける元友達2人の襟を掴み、そのまま鏡の中へと引き込む。
それにより、私の両手が解放される。
その間に周りで笑っていたアイツの女達が次々と近くの鏡に引き込まれていく。
この薄暗いミラーハウスで、次々に人が消えていくことに私以外気付いていなかった。
「お前等、押さえとけっていっただろうがぁ!!うまくいったら後で・・・お、おい、お前等?」
そして、ついにアイツが、自分1人と私だけになっていることに気付く。
「ど、どこにいった?おい・・・お前・・・何をした?」
「はぁ~い、乱暴やさん。」
「!?」
いきなり後ろから声を掛けられた事に驚くアイツ。腰を抜かし、下半身を出しながらガタガタと震えている。
「きょ、京子が2人・・・、トリックか、何かだろぉ?脅かしやがって。少しお灸が必要なようだなぁ」
「あらぁ~こわぁ~い。そんな怖い・・・最低野郎は。」
立っている京子に向かって、拳を振り上げるアイツ。アイツが殴ったと思った京子は鏡であり、殴ったはずの拳が鏡の中に吸い込まれていく。
「な、なんだ?こ、これは・・・おい、助けてくれ・・引っ張ってくれ。」
アイツは、裸で寝そべっている私に向かって、手を伸ばす。
私はそのまま手を伸ばさずに、鏡に飲み込まれているアイツを睨むように見る。
アイツの断末魔は、私の耳には入ってこなかった。
「フフフ。どう? 人に流されて痛い目を見た気分は。」
鏡から出てきた私は、裸の私の顔を見下ろしながら右手を差し伸べてきた。
「ありがとぉ。」
「うう~ん。お礼を言うのはこっちの方。」
「!?」
差し出された右手に、手を合わせたとき私の意識が体から離されそうになる。
「その体貰うね。・・・アンタじゃ修治君と幸せになれない。私が物にしてあげる!」
私は驚愕した。鏡の中の私は、私とは正反対の性格ではっきり言葉にし、すぐに行動に移すタイプであった。そして、体の自由が奪われていく。
「い、嫌ぁ・・・、わ、私の体を・・修治君を奪わないでぇ・・・。」
「今頃?・・・私とアンタは一心同体。なのに、思いの修治君とはいつまで立っても距離が縮まらない。修治君があんなに苦労しているのに。」
「・・・・。」
「アンタじゃあ役不足よ。消えなさい。」
そして、私の意識は、鏡の中へと吸い込まれていく。私が吸い込まれると同時にミラーハウスが緑色に光る。
私は彼女(もう1人の私の事)が、鏡に映るたびに現れる。だけど、裏野ドリームランドの鏡でないと私としての感情や動きを表に出す事が出来ない。
彼女は寝起きの顔で、鏡に映った私に対して、
「今日はお友達を連れてきてあげる。修治君は渡さないけど。」
たぶん今の私がよく一緒にいる愛ちゃんと凜ちゃんの事だと思う。
私は鏡の中で、やめてーと心で叫んでみたが、彼女には届かなかった。
そして、夜になり、ミラーハウスに、彼女は淳君と一緒に入ってきた。
友達って淳君?なんで?・・・そんな事より早く逃げるように言わないと。
ここはミラーハウス、私の声が届くはず。
「こわぁ~い。」
「え?京子ってこういう所苦手なのか?」
「うん。ちょっと寄り添っていいかなぁ?」
「ま、まあいいけど。あんまり引っ付かれると・・・」
彼女は淳君と腕を組んで、ミラーハウスを進んでいく。
なんで、淳君に抱きついているの? 相手は修治君じゃないの?
私は声を上げようとする・・だけど、声が外に出ない。
その間に、彼女達は、ミラーハウスの中央部である大広間に辿り着く。
「後、半分くらいかな。早く出ないと、修治に怒られそうだな。」
「修治君がどうしたの?・・・それより・・・。」
「なぁ!きょう、京子なんで、ワンピースを脱ごうとしてるんだぁ。」
「淳君は私に興味ないかなぁ。」
「な、ない事はないが・・・しゅ、修治と約束したんでな。」
「お互い黙っていたら分からないよぉ。」
「・・・。」
「できれば恥かしいから後ろ向いててね。 っといっても鏡だから見えちゃうかもしれないけど。」
淳君は彼女の言われた通り、後ろを振り向き、私と目が合う。私は無我夢中で逃げるように言ったのだけど淳君が気付いたのはもっと違うとこだった。
「あれ?京子。白いワンピース着てなかったけ?なんで・・・すでに裸なんだ。」
「淳君はスケベねぇ。」
彼女は、私の真横にある鏡に淳君を押す。鏡に触れた淳君が鏡に取り込まれていく。
「な、なんだこれ!?お、おい、京子、これなんだ?」
「ウフフフ、ごめんねぇ、淳君。特に理由はないんだけど消えてくれないかな。」
「なぁ・・・。」
淳君はあっという間に私の横の鏡に取り込まれ、鏡の中から鏡を叩いていた。
私は涙を流していた。まったく関係の無い人を鏡に押し込んでしまった彼女に対して。
「淳君を助けようと何か声をかけようとしてた見たいけど・・・その程度の念でどうにかできると思ったの?このミラーハウスは念の強い者が強者になれる。アンタ程度のちっぽけな修治君を思っていた念だけでどうにかできると思って?
それに引き換え、私の念は、修治君を何をしてでも手に入れたいという念とアンタへの憎しみの念で強大なものになっているみたいよ。ミラーハウスで私に勝てる人はいないわ。前の持ち主もアンタにちょっかいを出そうとしたので消しておいたわ。でも勘違いしないで・・・アンタが死ねば、私も死ぬ。私はアンタが嫌い。それだけは覚えておいて。」
そうこうしていると、愛が辿り着いてしまう。私は愛を逃がしたいと強く願いながら鏡を叩くが音が一切に鏡の外へと漏れなかった。その間に、そこで待っていた彼女に小走りで近付いてくる愛。
「あれ?淳は一緒じゃないの?」
「淳君、なんか走って行っちゃって。はぐれちゃった。」
「うおぉ~い、アイツめぇ。こんな可愛い京子ほったからしてどっか行ったとか。後で締めてやる。」
「ウフフフ。」
「なぁ、なんだ?京子。」
「京子ちゃん、なんか可愛いっと思って。」
愛が、淳を締めてやると左手の平に右拳をぶつけていた時に、後ろから抱きついた彼女。
愛は慌てて、彼女を振り払い、後ずさりしていく。そして、鏡に近付いていく。
「だめー!!愛ちゃん、鏡に近付いちゃ!!」
私は力いっぱい鏡の中で叫ぶが、声が外に漏れることはなかった。淳君も同様に叫んでいるようだ。
そして、不幸にも横を気になった愛が、鏡に映った私と淳君を見つけてしまう。
「淳?・・それに裸の京子?・・こ、これはい」
彼女から視線を一瞬でも外してしまったことが不幸となった。
彼女はそのまま愛の顔を鷲掴みにして、後ろの鏡に押し付けていた。
「え、えっ、か、鏡に吸い込まれる。こ、これって、京子?」
「アンタが悪いのよ、愛。私の最愛の修治君をあんな女狐とくっつけようなんて。」
「え? 最愛の修治? わ、私、知らなかったの!!だ、だから、た、助けて。」
「知らないで済まさないわよ。 私と修治君の邪魔をする奴は、誰であろうと全て殺す。」
「・・きょ、京子・・・ほ、ほん・・。」
鏡の中に完全に取り込まれた愛を見て、ニコリと笑う彼女。
修治君、来ちゃ駄目・・・。絶対駄目。彼女に殺される・・・。
私はまだミラーハウスに入っていないであろう修治君に念を送る。
だけど、今、私の目の前に、彼女と、修治君、修治君の腰にべったりと引っ付く凜ちゃんがいた。




