どうにかしてお前をぶちのめす方法がないものか
今回の話は夢の中の世界、ということで地の文無しという小説としてはかなり変わった形式にしています。
これはこれで楽しんでいただければ幸いです。
「こんばんは。与一さん」
「あっお前は、昼間の天使的なサムシング!」
「どうも、天使的なサムシングことコンスタンティンです」
「可愛く笑うな、ウインクするな。っていうか何だこれ、今俺はどうなってるんだ?」
「貴方の肉体は今眠っている状態です。毎回毎回時を止めて貴方に会いに行くのも面倒なので今後は夢枕に立とうと思います」
「夢枕って、お前は天使なのか幽霊なのかはっきりさせてくれよ」
「見て分からないんですか?天使です。はーと」
「可愛いから悔しいよな。……そうだ。お前俺は間違えて送られたって言ってたけど、予言だの何だので俺が稀他人だって事になってたんだけど。どういう事だよ」
「はい、今回はそれを伝えるために会いに来ました。簡単に言ってしまうと場繋ぎです」
「……場繋ぎ?」
「はい!人を異世界に送るって凄まじいエネルギーを必要とするんですよ。ですが今回送られてきたのは失敗作の与一さんでした」
「失敗作言うな、それで?」
「間違ってしまったのでちゃんとした人をまた喚ばなければなりません。ですがもう一度人を呼び寄せるエネルギーも残っておらず、割と世界はピンチです」
「うんうん」
「そこでこの世界は考えました。『じゃああれじゃん?この失敗作にいろいろ付け足して、まぁ世界救えるかな?って位までにしたらいいんじゃね?』と」
「適当だな世界。っていうか世界に意思があるのかよ」
「漠然とですけどね。そして世界は過去を改ざんし、予言の名をヨイチに変えました。頑張っても名前を変える、程度の事しかできなかった様ですね。そして与一さんにある程度の能力を与え与一さんをインスタント稀他人化したのです!」
「……それで、世界が救えればよし、救えなくて死んだとしてもその頃にはエネルギーもまた溜まってちゃんとしたやつが喚べるよね、ってことか?」
「理解が早いですね!はい!そういう事です。何ですかやめてください首締めないで……ぐっぐぇ……」
「ふざけんなよお前ら!人の命を、主に俺の命を何だと思ってんだ!」
「ゲホッゲホッ、場繋ぎって言ってるじゃないですか。それにそれを決めたのは僕じゃなくてこの世界ですから。何ですかまたやるんですか時止めますよ」
「……はぁ、まぁいいよ。それで、おれは何が出来るんだ?ある程度の能力って言ってたけど呪いを解く以外にできる事はあるのか?」
「意外と前向きですね」
「一応目を覚ませば明るい未来が待ってるからな」
「あまり期待しないほうがいいと……いえ、何でもないです」
「おい、どういう事だ。答えろ、目を反らすな」
「それでは能力について説明しますね」
「おい!」
「まずは僕がたまたま貴方に与えた意思疎通の能力。たまたま稀他人の能力とかぶってますね」
「かぶりかよ」
「まぁそう言わないでください。僕があげた意思疎通のほうが性能が上です。貴方は人間だけでなく世界にいるありとあらゆる存在と意思疎通をする事ができます。犬なんかとも喋れますよ?」
「マジか!凄いな!」
「まぁ漠然としたイメージみたいなものが伝わってくる感じですけどね、動物に言語はありませんので」
「ところでこれはどういう仕組みなんだ?言語を翻訳してるのか?酒は酒って聞こえるし、キャベツっぽいものはちゃんとキャベツって聞こえるんだが」
「それは貴方の脳が勝手に似ているものに変換しているだけですね。一つ一つの固有名詞を覚えていたら大変なので、そういう機能もつけておきました。逆に相手に伝えるときも同じ事が起きます」
「凄いな天使……」
「えっへんもっと褒めてください」
「調子にのるな」
「それでは次の能力に行きましょうか」
「こいつ、都合が悪くなるとすぐ無視しやがる」
「二つ目は解呪の能力ですね。右手の手のひらに紋章があるでしょう?」
「あぁ、ある」
「それに触れたものを無条件で解呪しますので普段は手袋などをつけておいてください。そして左手の手のひらをご覧ください」
「……ん?何だこれ、数字?29?」
「はい、それは解呪の残り回数です。無駄遣いしない様に今つけておきました」
「使用限度があるのかよ!」
「ある程度の能力って言ったじゃないですか」
「……わかったよ。あとは?」
「以上です」
「は?」
「以上です」
「おいちょっと待て。この二つだけか?なんかこう……あるだろう!戦いに使える……ほら、予言だとどんな攻撃も通じないとか言ってたぞ!」
「通じます」
「どんな呪いも受け付けないとか」
「受け付けます。解呪出来ますけどね」
「どんなイデアも使いこなす、とか!」
「あぁ、イデアですか。それなら使えますよ」
「マジか!っていうかイデアって何なんだ?」
「簡単に言えば魔法ですね。詠唱によって発動します」
「やっぱり魔法なのか」
「与一さんが好きな漫画とかゲームとかとは発動方法が違いますけどね。この世界のイデアは自分の魔力でドーン、とかじゃなく、自らの魔力を声に乗せて世界に普遍的に存在している精霊に伝え、命令を実行させます」
「へぇ……なんか難しそうだな」
「やってみたら簡単ですよ?まぁセンスの問題ですが」
「センス?」
「出来る人は幼い頃から使えますが、出来ない人はどれだけ修行を積んだとしてもできないそうです」
「なるほどな、でも使ってみたいな。せっかくの異世界なんだから」
「なら目を覚ましたらカムランにでも習えばいいんじゃないですか?彼も使い手ですよ、与一さんは見たはずです」
「あぁ、あれか。神殿作ったやつ。あれはすごかった。あの時だけはカムランがかっこよく見えたもんな」
「まぁ与一さんは魔力量も少なくないみたいですし、センスさえあれば可能ですよ」
「そんなこともわかるのか!よし、頑張ってみるかな!」
「まぁ与一さんが頑張ったところでたかがしれてると思いますけど」
「どうにかしてお前をぶちのめす方法がないものか」
「やめてください物騒ですね」
「お前のせいだろうが」
「あ、そろそろ朝ですよ。時間は止めてないので朝がきちゃうんですよね。目が覚めても全然疲れが取れてないかも知れませんが頑張ってくださいね」
「なっ、おい」
「あ、そうだもし僕がたまたま見てるときにピンチだったら夜を明かしたよしみで助けてあげますからね。それと稀他人になったことで体に変化が生じているはずです、起きたら確かめてみて下さいね!それでは、ごきげんよう!」
最悪の目覚めだ。まさか最後に投げキッスを食らうとは。しかし、変化ってなんだろうな、よし、確かめてみるか。