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異ノ覇-コトノハ-  作者: 徳永慶喜
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問題はしりとりが成立するかどうかだ。

 無駄に激しい兄弟喧嘩が終わった約3時間後、俺たちは荒野をかける馬車に乗っていた。

 いや、車を引いているのは馬ではなくギーグとロラーンだから正確には馬車ではなく爪の民車かもしれない。他の動物に引かせるより速いらしい。

 車内では俺の隣に拘束されたギールが座り、正面にフィルとクリスティーナが座っている。他のメンツは敵襲を警戒しながら車と並走している。遅くとも3日程度で着くそうだ。


 ガタガタと激しく揺れる車内でフィルは外の風景を眺め、クリスティーナは本を読み、ギールは少し前からいびきをかいている。

 ……暇だ。ぶっちゃけ暇だ。俺も出発してすぐの頃は凄まじいスピードで過ぎていく車の外の光景を感動しながら見ていたが、ずっと変わらず荒野なんだもの、すぐに飽きがくる。

 とは言え暇つぶしに使えるものを持っているわけでもなく、別に今眠い訳でもなく……というかこの揺れの中本読んたり寝たり出来るこいつらはおかしいと思う。


 仕方ない、しりとりでもして時間を潰すか、そう考えてフィルに声をかけようとした時だった。ある疑問が俺の脳裏をかすめた。このメンツでしりとりは成立するのか?


 今、俺達の会話が成立しているのは意思疎通の能力のお陰だ。意思疎通の能力はフィル達の言葉を俺にわかりやすいよう自動翻訳してくれる能力だ。トマトっぽい食べ物がもしトマーンとかいう名前でも俺の耳にはトマトと聞こえる都合のいい能力となっている。そしてそれは相手に伝わる時も然りだ。


 そしてこの指輪も俺達の会話の役に立っている。テレパシーで俺が聞いたことをそのまま伝えてくれる指輪だとコンスタンティンは言っていたが、正確には少し違うのだろう。恐らくこの指輪は俺がフィル達の言葉を聞いて、それを日本語に訳し、さらにそれをギール達の言葉に訳したものをテレパシーで送っている、とかじゃないと会話成立しないし。……しかし意思疎通の能力が勝手にやってくれている事だが、そんな複雑な事を一瞬でやって俺の頭にパンクしないだろうか。


 まぁそれは置いておこう。問題はしりとりが成立するかどうかだ。


 結論から言って、恐らくそれは無理だろう。

 しりとりには言葉の最後の文字を使わなくてはならない、という不動のルールがある。そこがネックだ。

 例えば、俺がトマトを思い浮かべながら「トマト!」と言うとする。そしてさっきの話を流用するとフィル達の言葉ではトマトはトマーンだ。なんとフィル達の中ではその時点でしりとりが終わってしまうのだ。さらに例えトマトの名前がトマーンではなくトマテシアだったとしてもしりとりは成立しない。フィルはトマテシアの次だから「あ」から始まる言葉を言うだろう。だがギール達の言葉でトマトがテメイテだった場合、「何言ってんだ嬢ちゃん、次はて、だろ?」となる訳だ。


 なんと言う事だ、俺達はしりとりすらすることが出来ない。他の民との間でしりとりもさせられなくて、何が稀他人だろうか。



「おい、ヨイチ。今日はこの辺で夜営にしよう」


 馬車を引いていたはずのギーグの言葉でふと我に帰る。

 気付けば外がかなり暗くなっていた。

 あまりに暇すぎてどうでもいいことを考えてる間に随分と時間が経っていた様だ。


「あぁ、今降りるよ。今日の晩飯はなんだ?」

「私が今から狩ってこよう、何がいい?」

「何でもいいけど俺には調理前の動物は見せないでくれ、あまりグロ耐性が高くないんだ」

「情けないことだ。だがまぁ了解した。少し待っていてくれ」

「あぁ、テントの設営でも手伝ってるよ」


 兄弟喧嘩を終えた時より少し落ち着いた様子のギーグを見送ると、俺は宣言通りテントの設営を手伝いに向かった。


 ……うん、でもグロ耐性とか通じる辺りやっぱりこの能力便利だな。

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