早く終わらねぇかな。
あれからもう随分長い時間が経とうとしている。
奴らはお互いの恥ずかしい過去をぶちまけながら激しい戦いを繰り広げていた。
この喧嘩で俺達が知ったギーグ&ギールの過去を幾つかあげよう。
・ギーグは子供の頃身長を5センチ誤魔化していた。
・ギールはよくいたずらをして皆の前で父親に尻を叩かれていた。
・ギーグは昔友達が少なかった、と言うかほぼいなかった。
・ギールは仲間に良いところを見せようとしてイノシシの群れに殺されかけた事がある。
・ギーグが告白して振られた女をギールが口説き落とした。
・ギールはその彼女に結局振られ、夜に1人で泣いていた。
etc…………。
あいつらバカなのか?
既に俺の中には、俺を殺そうとしたギールへの恐怖も、男としてのギーグへの尊敬も無かった。
あるのは「早く終わらねぇかな」という感情だけだ。
だがしかしフィルに言わせると、戦いのレベルは非常に高いらしく、フィルはずっと食い入るように兄弟喧嘩を見つめている。
クリスティーナは喧嘩が始まった時「死ぬほどどうでもいいです」と言って読書を始めた。
俺もなんか持ってきとけばよかったな。
「なぁクリスティーナ、もう一冊くらいもってないか?」
「ありますが」
「おっ!じゃあそれ俺に」
「嫌です」
「せめて頼みを全部聞いてからにしてくれよ……」
あぁ、暇だな。
それから約30分後。
俺が地面に書いた的に石を投げる遊びに飽きつつあった頃に、いつまで経っても集合場所に現れない俺達を心配してロラーンがやってきた。
「あぁ、ギールが来てたのか」
さも普通のことかのようにロラーンが言う。よくあることなのだろうか。
「ギールって覇王の手先なんだろ?何かこう嫌悪感とか、憎しみ、とかないのか?」
不思議に思った俺が尋ねるとロラーンは呆れたように笑った。
「あいつに?はははっ、ねぇな。あいつはちょくちょく遊びに来るんだよここに。いや、兄貴と喧嘩しにか?とにかく、あれぐらい日常茶飯事だ」
「え?でもだって久し振りだって……」
「あぁ、ここ1年くらい来てなかったなそういえば」
そんなレベルの久し振りかよ。
なんなら俺がばあちゃんに会ってない期間の方が長いわ。ばあちゃん、元気かな。
「なぁ、慣れてるなら止めてくれよ、いい加減出発したいんだけど」
「止めれるわけないだろ?爪の民4人がかりでも止まらねえよ、あの兄弟どんだけ速くて強いと思ってんだ」
「ちっ、使えねぇ」
「あんだとこら!」
しかし、あの調子だと日が暮れても戦い続けてそうだ……よし。
「クリスティーナ、行ってこい」
「はぁ?貴方から先に片付けられたいのですかゴミが」
クリスティーナが本から目線を1ミリも外さずに答える。
まぁそんなことは予想済みだ。
「もしお前があいつらの喧嘩を止めてくれたら、俺の持ちうる能力を総動員してフィルにお前のことを『お姉ちゃん』と呼ばせてやろう」
「はい⁉︎」
俺の魔法の言葉に、隣で喧嘩を見つめていたフィルが素っ頓狂な声を上げる。
「ま、ままま稀他人?い、今の言葉は本当ですか?お姉様が私を、お姉ちゃん??新しい……新しいです!!ふふふ……ふふふふふふふ」
「クリス⁉︎よだれ!よだれ垂れてますよ⁉︎目が血走ってますよ⁉︎クリス⁉︎」
「お姉様待っていて下さいね!今!お姉ちゃんがあの喧嘩を止めてきますからね!」
「クリス⁉︎言っていることの矛盾に気づいて下さい!」
クリスティーナの様子に目をグルグルさせるフィル。
焦ってるフィルも可愛いなぁ……。
「速さなど私の前では意味を成さぬという事を知りなさい!犬ども!」
クリスティーナはそう言うと、兄弟喧嘩の仲裁に入るべく、実体化させた槍を片手にふらふらと歩いて行った。
ふっ……ちょろいな。




