あんたを助けることは出来ない。
「おいにいちゃん。この嬢ちゃん頭いかれてんじゃないのか?」
クリスティーナにいきなりイデアを喰らわせられ水をたらふく飲んだ後、蹴り飛ばされて凄まじい距離を飛び、岩に激突した上に何故かクリスティーナの荷物から出てきた縄で縛られただけでなくクリスティーナに槍で貫かれそうになったキザな狼男が言った。
「いや……俺もあそこまでやるとは…………」
あれフィルが止めに入ってなかったら確実に刺してたよな……。
クリスティーナ、やっぱやべぇ。
「自業自得です」
クリスティーナは言いながらキザ狼を繋いでいる縄を引く。
「おい、解いてくれよ!俺は無罪だ。まだ何もやってねぇ」
「貴方のような者がお姉様に話しかけること自体が罪なのです。わかりますか?ギルティ、有罪、死刑!」
「おい誰か言葉のわかるやつを連れてきてくれ!この嬢ちゃんが何を言ってるのかまったくわからん!渡された指輪とやらが機能してねぇ!」
「残念だけど指輪は発動してるぞ、本当に残念だけど」
俺の言葉にキザ狼が肩を落とす。
何だろう、なんか気の毒になってきた。
「あの……私は別に何とも思ってないのですが」
「ダメですお姉様!こんなことを許していては他の者がつけ上がります!お姉様とは、目も合わせてはいけない。そこまで徹底すべきなのです」
「それはちょっと……私が寂しいのですが……」
フィルが苦笑いで頬をかく。
こいつの愛は自己中心的だなぁ……。
というか。
「これってどこに向かってるんだ?」
俺の質問に同調するようにキザ狼がクリスティーナを見る。
「いえ、柔らかくて掘りやすい土が無いかな、と思いまして……ちょっと、なにを逃げようとしているのですか?」
「ふざけるな!女を口説いただけで埋められてたまるか!」
「何故私が貴方を埋めないといけないんですか!貴方が掘って自分で埋まるんです!柔らかい土を探しているのは私の温情ですよ?」
「尚悪いわ!くっそ、にいちゃん、助けてくれよ!俺はまだ死にたくねぇ!」
必死に俺に助けを求めるキザ狼。
……しょーがねぇなぁ!
「おい、クリスティーナ。流石にやり過ぎじゃ……」
「喋らないでください屑が。貴方も埋めますよ?」
「すまない狼さん。あんたを助けることはできない」
「もう少し頑張ってもいいんじゃあねえか⁉︎」
だって怖いし。
そんな俺の横でフィルが小さく息を吐いた。
「クリス。やめなさい」
少し厳しめの声。何というか、お姉ちゃんって感じだ。
「ですが、お姉様……」
「いいですか?何度も言っているように、私はモテるんです」
フィルの言葉を聞いてキザ狼が不思議そうな顔をする。
あぁ、今までのフィルの優等生な雰囲気に騙されてたんですね、その子も大概アホの子です。
「私がモテるのは当たり前なんです。だって可愛いんですから」
「それはそうですが……!」
「いい加減慣れてください。私はこれからの旅でそれはもう幾度となく口説かれる事でしょう。ひっきりなしに、私の可愛さと美しさ目当てに。貴方はその相手を皆埋めていくつもりですか?」
昨日の夜、俺達の会話を聞いて顔を真っ赤にしてた人の発言とは思えないな。あれなんだろうな、モテてはいるけどそこから先には発展しないんだろうな…………クリスティーナがいるから。
「私は口説かれても何とも思いません。私を口説いている人は私の何を知っているというのですか?何も知りません!そんな者に心を動かされるフィルルグではありません!私は、軟派な者には屈しない!」
「……お、お姉様……」
何かよくわからないスピーチを終えてフィルは清々しそうな、そしてクリスティーナは感動した様子だった。
「……どうでもいいけど早く縄解いてやれよ」
俺の素直な感想だった。




