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異ノ覇-コトノハ-  作者: 徳永慶喜
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逃すと思うか?

 

 否応なしに頭の中に流れ込んでくる記憶に、俺は顔を歪めた。

 なんだこの記憶は。どうなってる。ハクアミロスは、カムランは、ピータンはどうなったんだ。


「答えろ! カムランは何で消えた! お前はあの後ピータンをどうした! 槍の民は今、どうなってるんだっ!」


 記憶は途中で途切れていた。俺が分かるのはモルガナの恥ずかしい記憶だけだ。カムランに勝った事でモルガナの中で恥が恥が(そそ)がれた、ということだろうか。


「アナタがどこまで分かっているのかが分からないのだけれど、教えてあげない。答えてあげる義理もないのであるからして」


 モルガナが笑う。モルガナから何となく伝わってくる感情は、俺を苛立たせるのに充分だった。


 1つ分かったことがある。これは恐らく意思疎通の能力の影響だ。キスの影響なのか、はたまたモルガナに動物に近い何かがあるのかは分からないが、何故かまるで動物に対して発動した時のような効果になっている。


「……そろそろかしら」


 モルガナは呟くと横に手をかざし、大きな闇を開いた。

 そこから何かを持ったユリリアが現れる。


「モルガナ様、指示の通り取ってまいりました」


 ユリリアは手袋をモルガナに手渡した。真実の手袋だ。

 ……忘れてた。


「真実の手袋⁉︎」

「何故彼女が?」


 フィルとクリスティーナがそれぞれ疑問を口にした後、俺を見る。


「……後で話すよ」


 そう言うとフィルは困ったように笑い、クリスティーナは地面に唾を吐いた。


「これは借りておくわ。便利なものと聞いたのであるからして。火が出る手袋なんですって?」


 モルガナはそう言って手袋をしまった。

 間違った情報が伝わっているな。まぁいいけど。



「ふぅ……もう良いわ、アナタがただの能無しだということは分かったのであるからして。そろそろ終わらせましょう」


 モルガナが続けて呟く。


「もう結界を解いてもいい頃かしら、いい加減チマチマした転送はウンザリだわ」


 モルガナが手を頭上にかざすとそこに向かって森中から黒い靄が集まって行った。その闇がどんとんモルガナの中へ入っていく。


 この森、妙に薄暗いと思っていたが、まさかこいつの闇だったのか⁉︎


「アナタ達を招待するわ、覇王様の国、イルヘルミナへ!」


 モルガナが叫ぶと同時に俺やフィル達を囲むように闇が現れた。闇は霧のように広がり俺たちを包み込み……突然消えた。


「少しも移動、してませんね」

「失敗でしょうか。お姉様念の為クリスから離れないで下さいね?」


 そう言ってクリスティーナがフィルと手を繋ぐ。しっかりと恋人繋ぎだ。やっぱこいつやばい。


「なにこれ、どうして⁉︎」


 一方モルガナは驚きを隠せない、といった様子だった。



 ……まさかあれか。

 俺がまたまたやってしまったか。

 イデア無効とか。覚醒しちゃったのか⁉︎




「どうしてイルヘルミナに繋がらないの⁉︎」




 どうやら違うらしい。



「まさか、カムラ=ヌムルグが……⁉︎」


 モルガナがそう呟くのを俺は聞き逃さなかった。

 つまりカムランは覇王の元へ、イルヘルミナへ送られたのか。そしてその影響でイルヘルミナに転送できなくなったってことは……カムランが何かやったってことだ。

 カムランは生きてる!



「帰るわよユリリア!何かあったのだわ!」


 モルガナはそう叫んで自らの背後に大きな闇を開いた。ユリリアが頷く。


「ああ、もう繋がらない!近くなら……」


 などと一人呟くモルガナに俺は叫んだ。


「逃すと思うか?」


 まるで主人公みたいだ、俺。

 俺の言葉にフィルとクリスティーナが武器を構える。



「アナタ達に構っている時間は無いのであるからして!この際どこでもいいわ!消えなさい!」


 モルガナはそう叫ぶと俺達に向け手をかざした。再び俺達を囲むように闇が作られる。


 くっそ、周りが見えない。

 ……ん?何だか周りが騒がしく……。


「ヨイチ様っ!」


 フィルが叫び、押し倒す様に俺に覆いかぶさった。

 そんなフィルの背中を、何かの影がかすめる。


「ぐぅっ」


「お姉様ぁっ‼︎」


 クリスティーナがフィルに駆け寄り何やら唱え始めた。治療系のイデアでもあるのだろうか。


 それにしても、さっきの影は……。



「動くな」


 低く落ち着いた声が響いた。闇が少しづつ晴れ始め、やがて声の主をはっきりと視認することが出来た。

 その声の主は毛むくじゃらで耳がピンと縦に立っていて鼻が長く立派な牙が生えていた。

 犬、いや狼男だ。俺たちの周りを無数の狼男達が囲んでいる。

 その中の一人が俺に向かって立派な爪を向けながら言った。



「貴様ら、何者だ?」



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