そんなの捕まるしかないじゃないかっ!
今起きたことをありのままに話すぜ?
フィルに変身したユリリアにクリスティーナが槍を投げつけたんだ。凄まじい怒りようだったぜ。
そしたら信じられないことにその槍が暗闇に飲み込まれたんだ。いきなり真っ黒な闇が出てきたんだぜ?信じられるか?
そして更にその中からロリータ服の美少女と、俺の護衛フィルが飛び出してきたんだ。そしてそのままドガバキ戦ってるんだぜ。何てことだ。とても理解出来ないよ。もう頭はパンク寸前だZE!
「お、お姉様ぁぁぁあああ!!!」
おっとこいつを忘れてたぜ。クリスティーナはイデアでフィルをサポートしようとしてるみたいだ。
さっきから水を口の中に溢れさせるイデアとか、水の剣みたいなのを生み出すイデアとかで戦ってるが、全部闇に飲まれて消えちまってるんだ。
HAHAHA、まるでファンタジーみたいだ。俺はてっきりなんちゃってファンタジーに迷い込んだもんだと思ってたんだが、こんなガチのバトルを観れるとは思ってなかったよ。
……え?俺かい?俺がどうしてるかって?それは……ほら、今はいいじゃないか。今はバトル観戦に集中しようぜ。
「何をしている。早く逃げるぞ。巻き込まれたら助からないぞ!」
ユリリアがそう言って俺を引っ張る。
……あぁ、そうだよ。逃げてるよ、悪いか。
こういう異世界召喚とかの主人公は普通、すごい力とか与えられてるから、
「俺も戦うっ!女の子だけに任せておけるかよ!」
とか
「俺が戦っているうちに逃げろ!」
とか言って一緒に戦ってるけど、俺には無理ですからね?
だって、俺は
「よし!話し合いで解決しよう!」
か
「呪い解いてやるぜ!」
しか出来ないんですよ?
せっかくついた筋肉もお子様レベルらしいし。
どうする事も出来ません。逃げます。
ユリリアも戦うタイプではないらしく俺と一緒に逃げている。
……ん?
「なぁ、俺は何でお前と一緒に逃げてるんだ?俺たち敵同士だよな?ていうか、お前は強い味方が助けに来たんだよな?一緒にいなくていいのか?」
俺の手を引くユリリアが分かりやすく目を逸らす。
「何のことだ?私は心の底から何の他意もなくお前を助けようとしているだけだぞ。別に森を燃やしてしまったから怒られるのが怖いとか、そういうことではないからな」
わっかりやすーい。
ベストオブわかりやすいで賞をあげよう。
……いやでもこれまずくないか?今俺はポンコツとはいえ覇王の部下に捕まっている状態だ。
そして恐らく転送魔法みたいなのを使える強い上司も近くにいる。
それはつまりいつでも戦いをやめて、俺を連れて転送魔法で離脱できるって事だ。
そして何よりまずいのは、敵が二人とも美少女って事だ。
捕まっているという状況が、悪くないと思えてしまう。
実際今も俺は可愛い褐色巨乳女子と手を繋いで森をデートしている気分だ。
……まずいな、このままだとこの世界の希望が潰えるかも知れない。俺は今覇王に捕まってもいいかも知れないと思っている。
だってユリリア可愛い!
くそっ!なんて手を使うんだ、覇王め!まさか覇王も美少女とかいう最近流行りの手法を使う気じゃあるまいな。
そんなのっ!そんなの捕まるしかないじゃないかっ!
「どうした、何をにやけている?殺されるかも知れない、という恐怖で気でも触れたか?」
ユリリアがそう言ってニヤリと笑った。
いや、お前からそんな恐怖は感じないよ。
でもそうか、捕まったら殺されるのか。忘れてた気がする。
まぁこの場面ならこいつと逃げる以外の選択肢は無い気がするし。
「何でもないよ、さぁ逃げよう」
俺が爽やかに笑いかけるとユリリアは急に顔を青くした。
笑顔が不自然だったのだろうか。
だがどうやらユリリアは俺を見て顔を青くしているわけではないようだ。視線は俺を通り抜けて向こう側へ向いている。
なんだろう、振り返りたくないなぁ。
「逃がさないわ、稀他人さん」
恐る恐る声がした方を向くとそこには暗闇があった。
そこから美少女が顔を出して笑っている。ちょっと卑怯なくらい可愛い。
そんな事を考えていると、俺は美少女に暗闇に引きずり込まれた。




