1/10
序節 -ささやかな抵抗-
例えば今日、世界が終わるとする。
朝起きて、飯食って、歯ぁ磨いて、仕事に行く支度しながらニュース見てたらニュースキャスターがマジメな顔で「今日で世界が終わります」とか言い出したとする。
もしも、もしもそんなことになったとしたら、それを信じる人間はどれだけいるのだろうか。
きっとほとんどの人は信じないだろう。俺だって信じない。世界はそんな簡単に変わらないってことを知ってるからだ。
きっと俺も、大勢の人も、あほらしい、と鼻で笑い飛ばして、今日もいつもと同じ電車に揺られるのだろう。
変わらない。世界は今日も変わらない。明日も明後日も1年後もまったく変わらないし、まして絶対に終わらない。
誰かが拒んだって、誰もが叫んだって、今日も明日も世界は回る。
そんな世界に刃向かってみたくなって。ちょっとした抵抗をしてみたくなって。気持ちばかりの反抗をしたくなって。
俺、卯郷桐哉21歳は、退職届を提出した。