やりすぎたみたいだ
武器のスキルを一つ追加しました(´・ω・`)
時は少し遡る。
商業都市ヘルメニア。元は小さな町だったこの都市は、初代領主となる商人が移り住んだ。彼は西の大国聖マロス皇国と東に位置するアイギス王国の中間点にある点に着目。ヘルメニアは、商業に力を入れることによって一気に発展した。
現在は、三代目であるアットス・フォン・トーラスによって貧困にあえぐこともなく、民たちは豊かに楽しく日々を過ごしている。
「トーラス様。此度の三日間、本当にお世話になりましたわ」
「いやいや!姫様、頭をお上げください!アイギス王国の第二王女であらせられるシュシュ様がオイみたいな一領主に頭なんか下げちゃダメですよ!」
「ふふ、そんなことないですわ。第二王女でも人は人。感謝の気持ちを表しただけです」
シュシュは金色に染まった美しい髪を揺らしながら頭を上げ、アットスを正面から見つめる。そして、微笑みを浮かべてもう一度頭を下げた。
アイギス王国第二王女、シュシュ・ロートレス・アイギス。若干17歳にしてその美貌はさることながら、己の立場に驕ることなく、どんな人にも優しく平等に接することで王国民に絶大の信頼を得ている。
「では、次は武闘会のときにお会い致しましょう」
「はい。姫様、王城までの無事をお祈りしています」
シュシュはもう一度丁寧に頭を下げると、待たせてあった場所に乗り込んだ。
「カイツ君、姫様を頼んだよ」
「はっ!この命に変えてもお守りするつもりです!」
「うん。騎士長にもよろしく伝えておいてね。あと、次の武闘会はうちがもらうとも、ね」
「はっ!」
トーラスは護衛の責任者を務めるカイツ・ロスターニアに愛嬌のある笑みを浮かべると、走り出した馬車が見えなくなるまで見送った。
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「大将、そんな気を張ってなくても大丈夫っすよ〜」
「お前は逆に緩みすぎだ。いつモンスターが出てくるかもわからないのだぞ」
「ここらは冒険者たちが定期的に見回りしてるから、大丈夫だと思うんすけどね〜」
「そんなこと言ってる暇があったら、しっかり周囲を警戒しておけ。もう日が暮れているのだからな」
「了解っす」
日が暮れて月明かりが照らす中、カイツを先頭に馬車の周囲を警戒しながら王城までの道を進んでいく。道は整備され、馬車が二台並んでも通れるようになっている。
風もなく、静かな夜。耳に聞こえるのは馬が歩く音と、騎士たちが身につけている鎧が擦れる音しか聞こえない。
静かすぎる、とカイツは思う。嵐の前の静けさのようなものを感じていた。無常にも、カイツの感じたものは的中してしまう。
ヒュっと、何かが飛んでくる音がした。
「うぐっ!?」
馬車の御者をしている男の驚いたような声が聞こえ、カイツは咄嗟に振り向いた。御者の脇腹あたりに矢が刺さっているのが見て取れた。それと同時に、馬車の中から見えたのだろう、シュシュが息を呑むのも感じ取れた。
「敵襲!御者が矢を受けた、誰か馬が暴走する前に馬車を停めろ!全員、馬から降りて臨戦態勢だ!死ぬ気で馬車を守れ!」
カイツは一気に簡潔な指示を出す。配下の騎士たち八名は即座に行動に移る。自分の馬から降り、馬車を中心に剣と盾を構えながら展開する。先ほど軽口を叩いていた騎士も真剣そのもので、いざというときは変わるな、とカイツは思う。
矢を盾を使って防いでいると、次第に矢が飛んでこなくなった。どうやら予備まで使い切ったらしい。馬車から見て左手の林から無数の人影が飛び出してきて、囲まれてしまう。その数はぐるっと見回しただけでも、二十人はいるようだ。
約二十人の盗賊団か……?聞いた事がないな。
「さすがに弓矢じゃ防がれちまうかい、騎士さん方ぁ!」
その中でも、軽装鎧の下に盛り上がった筋肉を持つリーダーと思しき男が大声で言った。その顔には嘲笑うかのような表情が張り付いていた。
「あっし達は別に殺し合いをしに来たんじゃあないんですぜ。ただ、馬車の中にいるはずのお姫さんを引き渡して欲しいだけなんでさあ」
「誰がーーー」
「馬鹿なこと言ってんじゃんねえぞ!」
護衛の一人であるメッツが、カイツの言葉を遮り怒鳴り返した。
「おうおう、怖いねえ。ダメですかい?」
「当たり前だ!」
そう言うと、メッツは剣を振りかぶり突撃していく。
「ばっ!おい、メッツ!!」
カイツの静止の言葉は一瞬遅かった。メッツの渾身の一振りをリーダーは流れるような動作で回避し、いつの間にか引き抜いていた剣でメッツの鎧の繋ぎの部分から剣を突き刺した。
「ガハッ」
メッツはその場に倒れてしまう。そして、トドメとでも言うように、リーダーは引き抜いた剣を再びメッツの無防備な繋ぎの部分に思い切り突き立てる。それだけでメッツは動かなくなってしまう。
「おい、抵抗せずに馬車ん中にいるお姫さんをこっちに渡してくれねえかい」
「くっ!誰がそのような要求に従って姫様を渡すか!」
「自分たちの立場がわかってねぇようだな」
「なんと言われても姫様は守り通す!」
「ちっ仕方ねぇなぁ。おいお前ら!やっちまえ!」
その号令で、盗賊たちは襲い掛かってくる。カイツを含めた騎士たちは覚悟を決め、必死に反撃をした。
どれだけ時間が経ったのかはわからない。だが、護衛の中で今も立っているのはカイツただ一人になっていた。仲間たちは盗賊たちにやられ、倒れ伏している。
「そら、騎士さんどうする?もうあんた一人になっちまったぜ?」
「たとえ私が倒れようとも……姫様には指一本触れさせん!」
「死んだら守りようがねえじゃねぇか。ほら、今なら命だけは助けてやるぜ?素直にお姫さんをこっちに渡してくれよ、な?」
「断る!!」
「なら、仕方ねぇな。お前ら、殺れ」
姫様、申し訳ありません……!
「あー、君たち。リンチはよくないなあ」
突然聞こえた声と、林の中、盗賊団とは反対側の林から出てきた男の姿を見て、カイツは己の目と耳を疑った。
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俺はゆっくりと歩いて近づいていく。
今にも最後に残った騎士に襲い掛かろうとしていた者たちを含め、その場の視線が俺に集中するのがわかる。
注目されるのは苦手なんだがなー……。
「き、君!ここは危ない、早く逃げなさい!」
「いやー、逃げるつもりだったらまず出てこないでしょ。ってことで、助太刀しますよっと」
とは言ったものの、どうするかな。相手の強さがわからんから、とりあえず範囲スキル撃っとくか。
「おいおい。どこの誰かはわからんが、殺されたくなければ騎士さんの言うことを聞いた方がいいと思うぞ?」
「はい、盗賊さんは黙ってね」
俺は銃を引き抜き、構える。そこで、あることに気がついた。
あれ、スキルって使えるのか?ま、いいか。使ってみりゃわかる。
「なんだ、その玩具は?そんなものでーーー」
「《星降る夜》ツイン」
リーダーの言葉は最後まで続かなかった。俺が銃系統最大範囲火力を誇る、スキル《星降る夜》を使ったためだ。
スキル《星降る夜》は五発の弾丸を相手の頭上に撃ち出し、弾丸が分裂、そして一気に降り注ぐというものだ。さらに、両手に銃を構えているため、左右から五発、計十発の弾丸を撃ち出し、【蒼天八式・ベルクリウス】の百発百中と敵判別のオリジナルスキルによって分裂した弾丸はただ降り注ぐのではなく、俺が敵と判断した者たちを確実に貫く。つまり、一切回避不能になるのだ。
俺としては全員じゃなく、いいところ半分くらいを無力化にできればいいなと考えて、このスキルを使った。しかし、現実は違った。分裂した弾丸は包囲していた全員を貫いた。全身を貫かれた者たちは、ある者は血を撒き散らしながら、ある者は驚愕の表情を浮かべながら、そしてある者は千切れた肉片を撒き散らしながら、その場に倒れ伏した。たった一つのスキル、たとえそれが最大範囲火力だったとしても、これは予想外であった。
「な……い、一体、何を……」
「は、はは……」
うへー……完全にやりすぎたな、これ。
騎士の驚愕に震える声を聞きながら、俺は猛烈に後悔をした。
読んでいただき、有り難うございました。




