帰省
まとわりつくような暑さを振り切るように僕は故郷の商店街を歩いていた。
ここに帰ってきたのは10年ぶりだ。別に帰りたくなかったわけじゃない。ただ、なんとなく毎日に追われて過ごしていたら月日が経っていただけのことだ。
仕事で取り組んでいる企画がひと段落し、久しぶりにまとまった休みがとれたので帰ってみることにした。
久しぶりの故郷は懐かしさよりもどこかよそよそしさがあり、僕の知っている故郷ではない気がした。
10年も経っているのだからそう思うのも無理はないか。心のなかでつぶやきながら歩いていると前から男性が一人歩いてきた。
こちらを見つめて驚いたような、嬉しいような顔をしている。
「タケヒト!?タケヒトだよな!」
「あ、あぁ。」
「久しぶりだなー。帰ってきてるのか?」
「まとまった休みがとれたから帰ってきたんだ。」
「そうかぁ。何年ぶりだろう?高校卒業以来だもんなぁ。」
「そ、そうだな。みんな卒業したら進学やら就職やらで県外にでちゃってるし集まる機会も中々ないしな。」
そうやって僕たちは10分程度立ち話をして、今度飲む約束をして別れた。
どこかよそよそしかった故郷が彼と話したことで自分の知っている昔の故郷に戻った気がした。
暑さの合間に吹いた涼しげな風と共に懐かしさが僕の中に沁みわたっていった。
とても有意義な時間だったように思う。
ただ一つ、彼が誰なのか僕は全く知らないことを除いては・・・・・・




