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コミュ障な僕と自動拳銃  作者: イーノックZ
第1章 入部編
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第3話  表:オカルト研究部、裏:超常現象調査部

「だから、オカルト研究部に入部しなさい!」


「ええっ!?」



 いきなりの部活勧誘に、僕は思わず素直に驚いた。



「あ、あの … ちょっと待ってください。オカルト研究部ってなんですか? 八幡宮さんは、吹奏楽部の部員じゃ … 」



 そう。僕が知っている限り、八幡宮さんが所属している部活はオカルト研究部という部活ではなくて、吹奏楽部だったハズだ。

 去年の文化祭で吹奏楽部演奏の時に、彼女の姿があったのを覚えているから。



「ふふ、実は掛け持ちしているの。わたしは吹奏楽部部員であるけれど、同時にオカルト研究部の部長を務めているのよ」



 そんな話、初耳です!



「どう? 入部しない?  … って言っても、神照君は強制的にオカルト研究部の部員になってもらうけどね」



 えっ? 強制って … ひどくないですか!? 拒否権なし!?



「ちょ … ちょっと聞いてもいいですか? そのオカルト研究部って …」


「何をする部活 って聞きたいのね。詳しい説明は部屋に入ってからするわ。とりあえず中に入って」



 そう言われて、僕は恐る恐る『オカルト❤研究部♪』と書かれた紙が貼ってある扉を横にスライドさせる。



「し、失礼します」



 とりあえず中に入ってみると、そこは普通の教室となんら変わらない広さの部屋だった。

 部屋の中央には大きめのテーブルがあり、その周りを囲むように椅子やソファーが並べてある。それに黒板にはいろいろと落書きがしてあり、漫画本・テレビ・ゲームなどがあちこちに散乱している。

 まぁ … 普通の部屋だと言えば、普通の部屋だった。 



「さぁ、そこにあるソファーに腰掛けて頂戴」


「は、はい」



 言われたとおり、僕は部屋の窓側の方に置いてあったソファーに腰掛ける。

 八幡宮優奈さんはというと、丁度僕と向かい合うような形でもう1つのソファーへと腰かけた。そして彼女は大胆にも足を組んだ。

 それにしても彼女は綺麗な脚をしている。オーバーニーソックスに包まれている脚には無駄な筋肉がなくモデルのように細い。そしてソックスとミニスカートから露わになっている絶対領域と呼ばれる太股部分は、透き通るように白くてほどよい肉付きである。

 僕の視線が知らず知らずのうちにその脚に吸い寄せられる。



「神照君?」


「あっ … はい!」



 ヤバい! 脚をガン見していたのがバレてしまったか!? もしかして気持ち悪がられてしまうんじゃ …



「あなた、ボーっとしているように見えたけど … 大丈夫?」


「あっ、はい、大丈夫です!」


「そう、ならいいわ」



 よかった … どうやらバレていなかったようだ。

 それにしても八幡宮優奈さん、少しだけ口元を吊り上げてニヤリと笑ったような気がするんだけど … 僕の気のせいか?



「さて、まずはこの部のことについて説明するわね。この部はオカルト研究部っていう名前なんだけど、これは表向き名なのよ」


「表向き名?」


「そう」



 表向き名って … どういう事ことなのか。オカルト研究部という名前が表向き名ならば裏の名前があるってことなのか?



「それでね、裏名っていうか、正式な名前があるんだけど、それは … 超常現象調査部っていう名前なわけ」


「は … はぁ … 」



 超常現象調査部? まったく聞いたことない名前だ。



「表向き名の『オカルト研究部』での活動内容は、市内の不可解な事件・現象を調査して校内新聞に発表するというもの。これは神照君でも知っているわよね?」


「は、はい」


「正式名称『超常現象調査部』の活動内容は、まぁ … 簡単に言うとね、未確認生物(UMA)の退治といったところよ。昨日、神照君も見たわよね。わたしがチュパカブラを退治するところを。あれも活動内容の一部なわけ」



 なるほど、未確認生物を退治するのが本来この部の活動内容だったという訳か。納得、納得 … って納得するわけあるかっー!!

 


「み、未確認生物の退治って … ど、ど、どういうことですか? そ、そもそも実在する生物じゃないですし … 」


「あら、忘れたの? 未確認生物は実在する生き物よ。昨日、神照君だって見たじゃない」


「あっ … !!」



 彼女の言う通りだ。昨日、僕は見たじゃないか。未確認生物の中でも有名なチュパカブラの姿を。

 未確認生物が実在するなんて今でも信じられないんだが、実際にこの目でチュパカブラを目撃してしまっている。あれは見間違いじゃない。確かにこの目で見た。



「チュパカブラ。未確認生物(UMA)の中では有名な生き物よね。体長は1mくらいで、大きな頭と真っ赤な目をしていて、生き物の血を吸い取ることが特徴」



 すると彼女は1冊のノートをバッグの中から取り出すと、それをテーブルの前に置いた。



「チュパカブラの生態についての詳しい内容は、このノートに書いてあるわ」



 お言葉に甘えてノートを拝見させてもらうことにする。

 ノートを捲ってみると、そこはチュパカブラの生態に関しての説明文がズラリと記してあった。ところどころにチュパカブラのイラストや写真まで載ってある。



「チュパカブラは動物に吸血することで知られているわ。性格は凶暴中の凶暴。動くものに反応して、鋭い爪や牙で攻撃してくるわ。あと、部員以外は誰も知らない情報なんだけど、チュパカブラのメスは相手に卵を産み付けて、その個体数を増やすとされているの。これは昨日、神照君も見たよね?」



「は、はい」



 なんだか、チュパカブラを説明しているときの彼女はとてもイキイキしているように見えた。


 今、彼女から話を聞いた上で昨日のことを振り返ってみると、コンビニで遭遇したチュパカブラはメスだったということであり、店内にいた3人に襲いかかったときに相手に卵を産み付けていたということなのか。

 その後、3人の体内から新たなチュパカブラが腹を突き破って出てきたわけであるが、思い返すだけでもゾッとする光景だった。



「あの時、わたしが駆けつけなかったら、神照君は間違いなく殺されていたわね。本当に間に合ってよかったわ」


「昨日は、そのぉ … 助けてくれて、本当にありがとうございました」


「ふふ、いいのよ」



 八幡宮さんは小さく笑い、足を組み替えた。

 一瞬、僕の視線が彼女の太股に行ってしまったが、直ぐに逸らす。



「この部の活動内容について、大体のことは分かってくれた?」


「は、はい … でも、何でUMAの退治なんですか?」


「UMAは人間を襲うからよ。」


「ひ、人を … 襲う?」


「そうよ。詳しいことはよく分かっていないのだけれど、UMAというのは非常に好戦的として知られているわ。毎年、UMAが人を襲う事件が多発していて、去年だけでも日本国内で1024件も発生しているの。だからわたし達、超常現象調査部の部員がその危険なUMAから街の安全を守る役割を担っているワケ」


「ぼ、僕たち、高校生 … ですよね?」



 僕の問いに対し、八幡宮さんは微笑んで頷いた。



「そう、わたし達は高校生。街の安全を守る役割なら警察や自衛隊に任せればいいことなのに、わたし達高校生がその役割を担っている。普通なら『なぜ?』って疑問に思うよね」


「は、はい」


「なぜだと思う?」



 そう質問を投げかけられたが、僕にはさっぱり分からなかった。

 警察・自衛隊には出来なくて、高校生には出来ることがあるってことなのかな。うーん、この2つの違いと言えば … 単に高校生の方が、年齢が若いってことしか思い浮かばないけど。



「高校生の方が、年齢が … 若いから?」


「ブッブー、間違い。正解は … 数よ」


「数?」


「そう。日本国内にある高等学校数は5183校。それに比べて警察署の数は1270署。陸自の駐屯地に至っては156庁しかない。つまり数が多い高校の方が、その分だけ早急に対応できるというメリットがあるのよ」



 警察署よりも数が多い高校は、その分だけ全国に分散しているということ。

人に危害を加えるUMAが出現したとしても、早急に現場に駆けつけて駆除することができるってことだ。



「それに警察や自衛隊などの場合だと目立つし、かえって活動しにくいでしょ? そもそもわたし達は世間では知られてはいけない活動をしているのだから、目立っちゃいけないの」


「目立っちゃ … いけない?」


「例えば … 街中でぞろぞろと警官や自衛隊員を見かけたら、何かあったのか、って思うじゃない? それに比べて、街中で高校生を見かけたとしても何も思わないよね」


「まっ、まぁ … 高校生なんて、そこらへんにいますからね」


「だから、高校生であるほうが隠密性に優れているってこと。マスコミに嗅ぎつけられることもないしね」



 八幡宮さんからいろいろと話を聞いた結果、この部の活動について大体は理解できた。

 しかし、1つだけ疑問に思うことがある。


 ――― なぜ、彼女は僕を勧誘してきたのだろうか?


 超常現象調査部の活動はUMAを退治する事。もちろん誰にも知られてはならない裏組織みたいなもの。

 だが、僕は見てしまった。昨日コンビニで八幡宮さんが銃をぶっ放してチュパカブラを仕留めた姿を。当然これだって超常現象調査部の活動内容に当たる事だ。

 もしや … この秘密の活動を知ってしまったせいなのか。


 僕は恐る恐る手を上げてみた。



「神照君、どうしたの?」


「あの … 質問いいですか?」


「ええ、いいわよ」


「な、何で … 僕を、勧誘したんですか?」



 すると彼女は、可愛らしくクスリと笑った。



「わたしが君を勧誘した理由は … 個人的な理由かな。前々から君のことを気になってから」


「ええっ … !? ぼ、僕のことを … !?」


「だって、神照君って女の子みたいで可愛いでしょ? わたしね、可愛い男の子のことが大好物なの。特に可愛い男の子が戸惑っていたり困っていたりする表情は … 最高に堪らないわ!!」



 なんか … 八幡宮さんのテンションが高くなってきた。

 興奮したように鼻息が荒く、身を乗り出して僕の顔を見つめてきている。

 そこで、彼女は大胆にも脚を組み替えた。


 男には動くモノに反応してしまう習性があるといわれている。特に女の子のスカートが揺れていたり、髪が揺れていたり、胸が揺れていたりすると、ついつい目がいってしまうことだろう。

 僕もそうだった。今 … 八幡宮さんが脚を組み替えた瞬間、自然とそこへ目がいってしまった。そしてほんの少しだけ … 見えてしまった。



「 … っ!?」



 直後、自分の顔がカーッと燃えるように熱くなるのを感じた。



「ふふっ … 神照君、顔が赤いわよ」


「あ、あえっ … いやっ … 」



 こうしてみる限り、彼女は特に気にしている様子はない。いや、むしろ … 僕の反応を見て楽しんでいるように見える。

 もしかして、さっきの脚を大胆に組み替えたのって … わざとなのか?

 どうやら先程の男の子の困っている表情を見るのが好きというのは本当のことらしい。



「まぁ、気を取り直して … 本来ならばUMAの目撃者は記憶を消去させなきゃいけなかったんだけど、神照君の場合は特別だったってわけ。分かってくれたかな?」


「は、はい … でも、僕なんかでいいんですか? と、友達一人もいない、コミュ障、です、けど … 」


「いいに決まっているわ。神照君のコミュ障の件だって、この部で活動していく中で克服できるかもしれないじゃない?」



 予想外にも、八幡宮さんが僕の手を握ってきたので思わずドキッとしてしまう。



「大丈夫よ。神照君のコミュ障、いつかわたしが克服させてみせるから」


「は … はい」


「うむ。分かってくれたのでよろしい」



 そして、彼女は1枚の書類を手渡してきた。



「はい、コレは入部届よ。ここに名前を記入して頂戴。ちなみに言っておくけど、神照君に拒否権はないから … 分かったわよね?」


「は … はい。分かりました」



 言われたとおり入部届に名前を書き込むことにした。

 そして、僕の名前が書かれた入部届を嬉しそうに手に取った八幡宮さんはおもむろに立ち上がる。



「よし! これで神照君は今日から超常現象調査部の一員ね!」



 嬉しそうな表情を浮かべている八幡宮さんは、僕に向かって手を差し伸べてきた。



「新入部員の神照君、これからわたしの名前を呼ぶときは下の名前の『優奈』って呼んで頂戴ね。よろしく」


「あっ、はい … こちらこそ、よろしくお願いします」



 差し出された彼女の手を握ろうとしたけれど、やはり女の子の手を握るなんて恥ずかしいと思ってしまい、躊躇してしまった。

 固まっている僕を見かねてか、八幡宮優奈が強引に僕の手を握ってきた。



「 … ぁ」


「ふふっ … そういう初心うぶなところが可愛いわね」



 挙動不審にキョロキョロし出す僕を見て、彼女はさらにうっとりとした表情で見つめてくる。なんか嬉しいようで、恥ずかしいようで。



「これで神照君もこの部の一員になったことだし、活動本拠地を見せておかないといけないわね」


「ほ … 本拠地?」


「そう。わたし達が今いるこの教室は、表向きのオカルト研究部の部室。でも超常現象調査部の部室は、別の場所にあるの」



 そう言い、優奈さんは部室内にある漫画本が並んでいる大きな本棚へと近づいた。

 別の場所にあるって言ったけど … そこ、ただの本棚ですよ? と思っていると、優奈さんは数冊の漫画本をタッチした。直後、本棚の側面にてのひらサイズの画面が出現し、画面に映し出された四桁の暗証番号を入力。最後に掌を押し当てた。

 すると、ビッーという大きな音と共に、本棚が横へスライドしたのである。



「う … うわぁ … 」


「どう、すごい仕掛けでしょ? 超常現象調査部の活動本拠地は学校の地下にあるのよ。ちなみに、さっきの四桁の暗証番号は『8838(やはたみや)』だから覚えておいてね」



 まさか普段生活している学校の地下に本拠地があるとは思わなかった。

 本棚が元あった場所には、今や地下へと続く階段がある。本拠地である地下とは、一体どんな場所になっているのだろうか? とてもワクワクする。



「さぁ、わたしの後に付いて来て頂戴」



 優奈さんが一足先に地下へと降りて行ったので、僕も慌てて彼女の背中を追いかけるのであった。


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