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コミュ障な僕と自動拳銃  作者: イーノックZ
第1章 入部編
4/40

第2話  美少女からの勧誘


6月26日 水曜日



「では、帰りのショートホームルームはこれにて終わり。明日の5時間目は体育祭や文化祭の役割分担を決めるから、なるべく休まないように。以上!」



 教卓の前に立つ担任の合図とともに、今日1日の学校生活が終了した。

 クラスメイト達は各々親しい友人と共に教室を出ていく。この南沢北高等学校生徒600名の内、何かしらの部活動に所属している生徒の割合は9割以上。たぶん、これからみんなは部活動に向かうのだろう。でも、僕は何も部活動に所属していない。いわゆる帰宅部というものだ。

 帰宅部の僕が学校に残っていても意味がない。なので通学カバンを肩に背負い、そそくさと教室から飛び出す。


 それにしても今日1日授業に集中できなかった。理由は、昨日の夜、奇妙な生物チュパカブラに襲われた件のせいだからだ。

 昨日のことはニュースになっているだろうと思い、昼休みに携帯でチェックしてみたものの、奇妙な生物に襲われたというニュースは1つも報道されていなかった。

 その代わり、『南沢市北区のコンビニで強盗殺人事件! 店員・客、計3人が殺害される!』というニュースが報道されていた。

 もちろん僕はそのコンビニにいたわけであるが、なぜ強盗殺人事件になっているのか不思議で仕方がなかった。もしかしたら … 昨日助けてくれたあの八幡宮優奈という人と関係があるのかな?

 しかし、そんなことを気にしていても仕方がない。目指すは、心休まる自分の家! 1秒でも早く家に帰りたい。昨日のことなんか忘れて、帰ってゲームでもやろう。そうしよう。


 そして階段を駆け下りて4階から3階へと差し掛かり、さらに階段を駆け下りようとしたときだった。

 僕は思わず足を止め、立ち止まってしまった。

 なぜなら … 目の前の階段の中腹辺りに1人の女子生徒が立ち止まっており、こちらを見上げていたからだ。

 茶髪で腰まで伸びているロングヘアー、端正に整った顔立ち、それに色白の肌。男ならば誰しも見とれてしまうほど美しい容姿をしている彼女は、昨日の夜、奇妙な生物から僕を助けてくれた人物だった。

 

 彼女の名は、2年2組所属の八幡宮やはたみや優奈ゆうな

 校内のミスコンで優勝した実績を持ち、男子からいつも告白ばかり受けているという噂が絶えない有名人だ。男子たちの間ではファンクラブが結成されているんだとか。


 一瞬、えっ? どうしよう? と思ったが、僕には女の子に話しかけるという勇気がないため、そのまま彼女の横を通り過ぎることにした。

 しかし、



「ねぇ、待って」



 なんということでしょう。話しかけてきたではありませんか。



「あ … えっ?」



 とりあえず周りを見渡してみたものの、階段には僕と彼女以外は誰もいない。



「あなたよ、あなた。だって、ここにはわたしとあなた以外に誰もいないでしょ?」


「ぼ … 僕?」


「そう」



 そう言って、彼女は長い髪を手でかき分けながら僕に近づいてくる。

 いや … 待ってください。いくら昨日助けてくれたと言っても、僕なんかに話しかけてくるなんて … あっ、そう言えば、お礼をまだ言ってなかったっけ。



「あ … あのっ、昨日は助けてくれて、ありがとうございました」


「あ、そのことならどういたしまして」



 彼女は思わず見とれてしまうほどの美しい笑みを浮かべる。



「あ … あの、僕に … 何の用ですか?」


「あなたと話したいことがあるの。少し時間いいかしら?」



 えっ、話? 僕、人と会話をするのが苦手で … しかも相手が女子だとなおさら緊張してしまう。もしかして … 話って昨日のことかな?

 思わず、僕は視線をあらゆるところに行ったり来たりさせてしまう。

 そんな僕の様子を見て、彼女はクスッっと笑った。



「すごく動揺しているわね。もしかして女の子に話しかけられたこと、始めて?」


「う … うん」


「そっか、まぁいいわ。とりあえず、あたしについてきて頂戴」



 そう言って僕の腕を掴んだかと思うと、そのまま引っ張っていく八幡宮優奈さん。

 僕はなす術もなく彼女に引っ張られ、ついて行くしかなかった。







「ほら、着いたわよ」



 こうして僕が連れて来られた場所は、特別教室が密集している北校舎1階にあるとある教室の前だった。

 教室の扉には、『オカルト❤研究部♪』と描かれたイラスト付き手書きの張り紙が貼られてある。



「あ、あの … 何で、僕を?」


「んっ、何でわたしがあなたをここに連れてきたって?」


「う … うん」


「うーん、部活勧誘ってとこかな? だって神照君、帰宅部なんでしょ?」



 ええっー!! クラスが違うのに、なんで僕が帰宅部だってことを知ってるの!? ていうか、こんな美少女が僕のことを知っていること自体嬉しいんだけど!



「は、はい … 僕は、確かに帰宅部ですけど、何で、そんなこと … 知っているんですか?」



 一方、八幡宮さんはというと、手で自分の長い髪の毛先をいじくりながらこう答えた。



「覚えてない? 確か1年の時、同じクラスだったわよね?」


「は、はい … それは、覚えてます」


「へぇ~、わたしのこと覚えていてくれたんだ。嬉しいわ」



 ここで八幡宮優奈さんから頭をポンポンと撫でられた。

 そう、八幡宮優奈さんの身長は僕よりも高いのだ。僕の身長が160cmだから、彼女の身長は170cmくらいあるだろう。いいなぁ … 身長が高いって。


 あっ、そんなことより、同じクラスだったとはいえ、なぜ僕のことを知っているのだろう?



「あのぅ … えーと、な、何で僕のこと … いくら同じクラスだったけど …」


「覚えているハズないって? まぁ、確かにわたしと神照君は一度も会話をしたことが無かったわね。でもわたしはちゃんと覚えているわよ。神照君って可愛い顔してるし、モテそうな雰囲気出してるしね」



 可愛い顔 … 校内で最も美しい八幡宮優奈さんからそう言われ、ものすごく嬉しい。でも … 複雑な気分になる。要するに女の子みたいということを意味しているからだ。



「でも、神照君っていつも一人で居てたじゃない? クラスメイトの誰とも話すこともなかったし … わたし気になって、一度声を掛けようかと思ったくらいなんだけど … タイミングが無くてできなかったわ」



 あぁ … 僕のボッチぶりは、そんなに印象的だったのか。



「神照君って人と話すのが苦手? 今もこうしてわたしとも視線を合わせてくれないし」


「ぁぅ … ご、ごめんなさい!」


「ううん、別に謝らなくてもいいんだけど … もしかして神照君って、コミュ障って呼ばれるやつでしょ?」


「あっ … えっ … 」



 あーあー、言われちゃった。



「反応を見る限りそのようね。じゃあ、ここで1つ尋ねるけど」



 そして、彼女はこう尋ねてきた。



「そのコミュ障、克服したいって思わない?」


「こ、克服?」


「そう。わたしが手伝ってあげるわよ。だから、このオカルト研究部に入部しなさい!」


「ええっ!?」



 なんと、八幡宮優奈さんに部活勧誘されてしまいました。



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