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異星の少女~そらリターンズ~  作者: ゆきのいつき
14/24

第十三話 姉妹……かみ合わない思い

今回はあまり動きないです……。

 海水浴で色々あった翌日。


 ネットの世界ではちょっとした、というより、かなりの盛り上がりを見せていた。


 なぜか?


 言わずもがな、世界最大の動画投稿サイトに異星の美少女、ソラ姫の画像や動画が投稿されたからである。


 何の動画か?


 もちろん、先だってのあのお騒がせな大学生たちとのからみを中心とした海水浴シーンの数々だったりするわけである。あの多数集まったギャラリーの中に、ちゃっかり今回の投稿者が居合わせたのだろう。


 投稿動画にはソラ姫が天使モードに入る前、なぜか大学生に絡まれる前からの海辺で戯れているときの映像まであり、騒ぎになる前から実はその存在がバレバレだったことが伺いしれる。

 それにしてもそんな動画は、当然本人に確認されているはずも無く、プライベートな様子を収めたそれは、訴えられても文句は言えない代物である。がしかし、そんな動画や画像の投稿は昔から枚挙にいとまがなく、削除されてもまた新たな投稿があり……という風に、いたちゴッコとなっていて規制しきれていないのが現状のようである。

 ちなみにソラ姫に向けられたそのような盗撮行為は、実のところ星船アリスにかかればバレバレで、そこになんらかの悪意や害意、ましてや殺意など向けられようなら滅殺めっさつの憂き目にさらされるのは至極当然のことだといえよう。

 とはいえ、そんな些事にまで口を挟み、ソラ姫に対し余計な干渉をし過ぎることもアリスの本意ではないため、直接影響を及ぼすようなことでも起こさない限りあえて何も動くことはないアリスなのであった。(まぁそもそも、盗撮が些事なのかどうか? 意見の分かれるところであるような気もするが……)


 いくつか上げられた投稿動画でも、PVを稼いでいたのはやはり天使モードのソラ姫であるのは間違いないが、案外海辺ではしゃぐその姿にも多くのPVが集まっていた。それと同時にコメントも多数書き込まれ、その中にはなんとも怪しいものも複数混じっていた。


「ソラ姫マジ天使!」

「あのかわいい足に踏まれたいっ」

「ああ、ぺろぺろしたいっ」

「貧乳はステータスだっ!」


 そんな中にあって時折真面目なコメントもあったりするのも多くの人が目にする動画サイトならではのものか。


「なにこれ、恐い!」

「手も触れずに大の大人を身動き取れないようにするなんて、考えると恐いよな」

「超能力なん?」

「ソラ姫怒らせたら氷付け&ペシャンコの刑」


 なんとも困ったネットの住人たちである。


 そしてそんな騒ぎはネットだけに収まらず、マスコミの恰好のネタになっていた。


『おそまつ、T大の学生たち』

『国家レベルの恥さらし』

『多くの人が集まる海水浴場で醜態!』


 マスコミ……、特にワイドショーなどで面白おかしく、散々叩かれた大学生たちだった。



☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



「お姉ちゃん、またやらかしたでしょ? もうTVで散々放送されちゃってるよ?」


 朝一番、侍女たちに身だしなみを整えてもらったソラ姫がリビングの方へ降りていけば、早速春奈につっかかられる。


「ふぇ? 何が?」


 一晩寝て、すっかり過去のことになった昨日の出来事のことがとっさに思い浮かばず、素で聞き返すソラ姫。


「な、何がって昨日の海でのことに決まってるじゃん。

 お姉ちゃんったら、また羽広げて、しっかり力まで使っちゃって。TVもだけど、思いっきりネットで画像出回っちゃってるよ? どーすんの、これ~」


 あまりに無頓着なソラ姫の態度に少々むっとしながら、それでも説明をする春奈。


「海……。ちから? えーっと。

 ああっ、あの酔っぱらいの人たちにお仕置きしたときのこと?」


 ソラ姫は、いやなことを思い出したとばかりにちょっと顔をしかめ、そう答える。


「お仕置きって……、たくぅ。

 そう、それ! その時の様子をどっかのバカが動画に撮ってて、それをネットに投稿してるのっ。

 ほんとお姉ちゃん、ばっちり写っちゃてるよ。一緒に行ったお姉ちゃんのお友だちとかも、まぁさすがに顔はぼかしてあったけど、しっかり写ってるしさぁ。目立ちすぎ。

 お姉ちゃん! マジ、もっと自粛しよ? お願い」


 普段の春奈からは想像出来ないほどの、真剣みのある表情と言葉でソラ姫、いや、蒼空に頼み込む春奈。


「はぇ~、そうなんだ? ボクTVとかネットに出ちゃってるの? かわいく撮れてるのかなぁ? 変なのあるといやだなぁ。あ、でも水着だし……うわぁ、は、恥ずかしいっ」


 なんともずれたところで返事をするソラ姫。あれだけの日差しにさらされていたにもかかわらず、変わらず雪のように白い肌を赤く染める。

 そんな、あまりに緊張感がなく人の話しを聞かない姉の態度にプチっと切れる春奈。


「あーもうお姉ちゃん、人の話しちゃんと聞いてる?

 これ以上目立つことすんなって言ってんのっ!

 知らないよ? 変なやつらに付き纏われたり、危ない事件に巻き込まれたりなんかしても~!」


 ちょっと涙目になりながら、興奮気味にそう訴える春奈。

 のん気なソラ姫も、それにはさすがに慌ててしまう。


「はわっ、は、春奈、ゴメン! その、ボク、気をつけるから。

 うん。あんまり目立たないよう注意するから……。だから機嫌直して?」


 自分より頭一つ背の低い、かわいらしい姉がそう言って哀願するような表情を向け謝ってくる。

 女の、妹の自分ですらちょっとくらっときてしまいそうな、そんな表情を見せる姉、蒼空を見て春奈は余計に心配になってくる。


「う、うん。わかってくれればいいの。わかってくれれば。

 そ、それじゃお姉ちゃん……、朝ごはんにしよ? もう準備出来てるよ」

 

 そう言いながらも春奈はやはりどこか不安で、その胸の内になんとも言えない気持ちが残り、それは消えることがない。


 ――蒼空、お姉ちゃんは、今や異星人として生きてる。その体は地球上のどんな生き物よりも強くて、どっかのアニメや特撮のヒーローも真っ青な力も持ってる。

 しかもあの星船アリスが大切に大切に守ってくれてる。それに……、あの侍女たちも、まぁ、いるし。

 心配するのがバカらしいほどの常識外れぶりだけど。

 それでも。それでも、あのお姉ちゃんのかわいくって無防備な姿見てると、どうしても心配になってきちゃうんだもん。

 たく、妹をこんなに心配させるなんて、ほんと困ったお姉ちゃんなんだから。うん、お母さんにも言ってもらわなきゃ。私の言うことなんて聞きゃしないんだから――。


 春奈はそんなことを思い、朝ごはんと聞いてうれしそうな顔をしてダイニングテーブルへと向う姉を見て、なんとも深いため息を付くしかなかった。



☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



「アリスぅ、朝から春奈がなんか恐いんだ。どうしちゃったのかなぁ?

 はうぅ、もしかして……、その、お、女の子の日なのかなぁ?」


 その日、朝食を済またソラ姫は春奈のあまりにピリピリした雰囲気にとうとう恐れをなし、久しぶりにアリスの元へと帰ってきていた。アリスとは額の守護石でいつも繋がっているとはいえ、やはりその中に戻ってくるとほっとし、安らぎを覚えるソラ姫なのである。そしてそんな安心感からか、ぽろりとそんなことを言ってしまう。


「姫さま、そ、それはさすがに……少々……違うと思いますわ」


 横に控えていたフェリがソラ姫の言葉を聞き、さすがにちょっと呆れた表情を浮かべながらも優しく訂正する。


「ふぇ、フェリさん? それってどういう……」


 ソラ姫がその言葉に反応し、フェリの顔を覗き込むような上目使いでしっかりと見つめてくる。

 ああっ、姫さま、なんとおかわいらしい……。その目つき、反則です!

 ソラ姫の愛らしい仕草にくらっときそうになるが、なんとか気を取り直しその理由を口にする。


「春奈さまは地球の、ごく普通の一般的な人類種でございます。いくら姫さまの妹君であらせられるとしても、スカーレットを御身に宿されておられます姫さまとでは、その、周囲の環境といいますか、状況への認識力に甚だ差異がございます。

 春奈さまは心配なのです。

 ソラリスさまと共にある姫さまにとって、この地球における周囲の状況というのは、御身を脅かす何者も存在しえない当たり前のこと。まさに空気のごとく当然のこと……でありましょうけれど、春奈さまにとっては……」


 そう言いながら自分も腰を落とし、ソラ姫と同じ目線まで頭を下げると再びソラ姫を見て話しを続ける。


「春奈さまにとっては、やはり小さな姿をしたかわいらしくて愛すべきお姉さまなのです。姫さまには失礼ながら、庇護したいという気持ちも強く持たれているようにお見受けいたします。

 ですので、ですので姫さまが昨日なされたような行動や、世の中に知れ渡るようなお派手な行動をお取りになられますと……それはもう、心配なのでございましょう。

 そして……それは姫さま、僭越ながら私どもも少しばかり思っていることでもございます」


 フェリはそう言いながらもソラ姫のその頭に恭しくも手をやり、その艶やかな紫がかった白い髪を手櫛で整える。ソラ姫は思わず目を細め、気持ちよさげな表情を浮べ……そしてぼそりと言葉を漏らす。


「ボク……そんなつもり全然なかったのに……」


 確かにソラ姫……蒼空は、この体になってから、もっといえばアリスと繋がってからというもの、周囲に対する警戒感や、危機感というものが希薄になっていたのかも知れない。

 もちろん生理的に苦手なものや恐いと感じるものは存在する(お化けや幽霊、台所のG、あと、例えは悪いが母親や春奈とかもそうだろう)が、その体で感じる万能感は半端なく、ただの人であったころの感性を取り戻すことはすでに出来ないのかも知れない。


 ソラ姫は春奈の気持ちがわかってあげられなくなった自分を思い、悲しい気持ちがわきあがってくる。

 

「お姉さま、あまり気にしすぎても良くないです。

 そもそもそんな心配は不要なんですから、それを春奈さまやお母さまにもしっかりご説明してあげればいいのです。アリエージュももっと伝える努力しなさいよ」


 沈みかけた空気をぶち壊すかのようにアリスの言葉が割り込んでくる。


「ほんとにもう、横から口出ししてきたかと思えば、お姉さまに余計な心配かけること言うんだから~!」


 アリスのそんな言葉に慌てて言葉を挟むソラ姫。


「あ、アリス。いいの、ボク、言ってもらって良くわかったから。ボク、知らず知らずのうちに普通の人間だったときの気持ち、わからなくなってたと思う。それを気付かせてもらったんだもん。フェリさんには感謝してる」


「お姉さま……、ほんとお優しいんだから……。

 でも実際のところ、春奈さまの言う目立たないように過ごすっていうのはお姉さまの立場上、難しいかもしれませんね? フォリンやディアも目立て目立てってうるさいし。


 それに。


 この星のおばかさんたちも色々ちょっかいかけてきてますしね」


「はぇ? そ、そうなの?」


 ソラ姫は、アリスのそのちょっとした爆弾発言に驚き、思わずフェリと見つめ合う。


「はい! それはもう頻繁に。お姉さまのお心を煩わすのもどうかと思い、私の判断で情報の相互リンクは差し控えていましたけど……。必要ですか?」


 ううっ、アリスったら、そんな重要なことをついでみたいにぃ……。


「と、とりあえずはいい。なんかデータリンクしたら余計気が滅入っちゃいそう。

 どうせ今まで何の報告もなかったってことは、大したこともなかったってことなんでしょ?」


 ボクは多少投げやりな気持ちでそう聞いた。


「はい、全然。せいぜい毎日お姉さまの監視に……スパイっていうんでしたっけ?……が少なくとも六ヶ国分張り付いてるのと……、直接接触してこようとするやからが凝りもせずに現れるくらいです。もちろんそいつらは私が懇切丁寧に追い払って差し上げてますけど」


「あ、あはは。そ、それは、あ、ありがと」

「どういたしまして、です」




 この後ソラ姫が柚月家に戻ったとき、妙にしおらしくなった彼女を見て、春奈や日向が不思議な顔をしたのは言うまでも無く、


 それを見た春奈が、自分の言ったことをしっかり受け止めてくれた……と思ったか、きっとその時だけよね……と思ったかは知る由もないことである。

読んでいただきありがとうございます。


次回は派手……かも?

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