表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異郷より。  作者: TKミハル
楽園の夢
165/369

それは、始まり 1

 短いです。

 大陸の中央に位置し、あらゆる人と物が行き交うとされるシーヴァース。

 その北側の丘陵地帯、城下町を見下ろすかのような王城の地下に、古代の遺跡への入り口が発見されたのはごく最近のことだった。


 地下倉庫として利用されていた場所が老朽化によって崩れ落ち、中身を取り出すため掘り進めていたところ、たまたま太古の用水路をぶち抜き、その先に、遺跡への通路らしきものを発見したのである。


 滑らかな壁が青白く隧道のように続いて、そこを辿れば、もはや門というのもはばかれるような石柱の囲いに行き当たり、その向こうの階段を下りると阿呆みてえに広い洞窟に出た、というのはたまたまその場に居合わせた日雇い坑夫の言葉で、王ガルシアの箝口令も間に合わず、その事実はあっというまに世間に広まった。


 仕方なくその遺跡の調査のことを公にし、ついでにさりげなくその遺跡で発見されたものはすべて王族に権利があるとも主張して、とにもかくにも城で信の厚い騎士、兵士と、貴族の息のかかった商人や学者などで調査団を結成し、ついに遺跡調査へと赴くときがやってきた。


 王城の重要場所へ繋がる隠し通路の有無をあらかじめチェックしたうえで、本来なら倉庫へと続くはずの道から、城に住むあらゆる階層の者と、コネと金でこの場にいる権利を獲得した者たちに見送られ、調査団は荷物を抱えつつ地下通路を抜け、洞窟へと入っていく。


 湿った空気の中、迷わないよう壁に印をつけ、滑らないよう気をつけながら進み、開けた場所に丈夫な布を張って拠点を作り、その周辺を探索して、何も見つからなければ別の場所へ移動する、ということを続けて三日。


 一向に目新しい何かは見えて来ず、調査団の中ではそろそろ焦りが出始めていた。風が流れるからには、どこか裂け目か出入り口があるはずだと、確かめながら探すのに未だ見つけられていない。


「しかしよ、こんな広い洞窟……今まで見つからなかったってえのが不思議なぐらいだぜ」

 兵士の一団のうちの一人がしゃべっているのに対し、その近くで火にあたっていた、貴族のコネで入ってきた考古学者の一人、エドウィンが絶好の機会とばかりに口を開く。


「いやそれはですね、おそらく私たちが気づいていないだけで、きっかけがあったと思うのですよ。ある条件が、何らかの形で満ちたことで、遺跡への入り口が出現し……」

 とうとうとしゃべりだした彼を指差して兵士たちは笑い合い、

「おい、学者がなんかいってるぞ」

「ああ、ほっとけほっとけ。どうせ戯言にしかすぎん」

さも面白い酒の肴と言わんばかりに杯を空にした。


 エドウィンは話を打ち切り、ため息をついて他の学者たちを見やる。

 彼らは自前の怪しげな薬を器から器へうつしているだけで、見る限りではなんの足しにもなりそうになかった。

 拠点はそれぞれ身分により、騎士(うち一人が調査団リーダー)、商人、兵士と学者(寝場所は仕切りみたいなものがあいだにあるぐらいでかなり近い位置)に分かれています。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ