白砂上の、黄金宮
リリアナ視点につき、暗いです。短いうえに直接表現ではありませんが凌辱シーンがありますので苦手な方ご注意ください。
そしてこの話は驚くほど短いので、近いうちにもう一話(短めのもの)UPします。
しくじった。
あと少しというところであの男、ブレナンはあたしを置いて逃げ出し、薄汚れた路地に一人、残された。
『この売女、手間ァかけさせやがって』
四対一では勝ち目はなく、追っ手に脇腹や顎を殴りつけられ激痛が走る中、襟首をつかまれ引きずられていく。
『仕置きしとけ。……ああ、大事な商品だ。目立つ傷は残すなよ』
細目のせいで笑っているような表情のまま、男が下っ端に命令を下すと、手近な空き家に引きずり込まれ、ドアが閉められた。
『へへへ……せいぜい楽しませてくれよ』
『ん?どうした?泣き叫んだっていいんだぜ。どうせ誰も来ねえんだからよ』
待ちきれないのか鼻息も荒く服を切り裂く男を、せめてもと睨みつけてやる。
埃まみれの部屋で手ひどく扱われる仕打ちに耐えながら、思う――――――。
世界が所詮、こんなものなら。力あるものだけが頂点に立てる世界なら――――――あたしは、強くな、る。強くなってこいつらを、一人残らず、、、
豪華な調度品の整えられた待ち合い部屋で、リィザは回想から覚醒てゆっくりと目を開いた。知らず冷や汗のにじんでいた手を見つめ、再びぎゅっと握り込んだ。
大丈夫。あの頃の借金まみれの無力なあたしとは、違う。
腹黒い貴族や闇の組織幹部クラスがこぞって出席するオークションのオーナーになって一年。舞台裏からでも表の異様な盛り上がりは感じ取ることができた。
ここではすべてが手に入る。地位も名誉も宝石も恋人も。都合のいい奴隷や、悦楽を得られる夢の薬もすべて。
上客に媚を売って、情報を集めて。血の吐くような努力をして、自分で身請け代を稼いだ。破産させた男も数知れず、おまえのせいで、と呪詛を吐く声も、ともに逃げようと叫んだ懇願もすべて足元へ消え、あたしは今、ここに存在している。
やっと掴んだ、あたしの場所。誰にも邪魔させはしない。
白砂上の黄金宮、すなわち砂上の楼閣。