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先達より
古の書物は語る――――――かつて栄えた魔法文明の人々の欲は深く、自らの肉体や家畜の延命、改良に留まらず、とうとう高度な思考能力と魔法力を持つ生命を生み出すまでに至った。
だが、人々が得た巨大な力はやがて暴走を始め、多くの犠牲と文明の崩壊を招く結果に終わる。
神への願いの代償は大きく、眠る竜は牙を剥き、海に潜む魔物は汝を藻屑と化す。求めるものよ、心せよ。いずれまた同じ道をたどるやも知れぬ。己が何を望むのか、しかと見定め選ぶがいい――――――と。
しかし人々の探究心は尽きるところを知らず、旅人は吟遊詩人の歌の物語に思いを寄せ、未知なるものに胸躍らせる。
これはそんな時代、新しい世界に焦がれた一人の少女の冒険譚である。