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プロローグ
某県郊外、葛城――。
都心から少し外れた場所に位置するこの場所は、深夜ともなれば人気が無くなり、交通量は途絶える。
現実に居ながら、まるで虚構の世界に紛れ込んだかのような、不思議な感覚……。
そして、何処からともなく集う、数多の走り屋たちが繰り広げるスピードの競演。
街を包む闇の中を駆け抜けるテールランプの残像、静寂を掻き消すスキール音。後方に流れていく景色。
何も知らない者から見れば、狂っている様にしか見えないだろう。
――だが、この場所ではそういった行為でしか、“自分”を表せない。
今夜も葛城には、走り屋たちの様々な想いが飛び交う――。