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冥府の王に花束を  作者: りとむ


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1/8

プロローグ:湖の畔で・終


そして、静寂が生まれた。


誰の喋る声も、動物の鳴く声もない。

暗闇に包まれた闇の中には、雲に覆われた僅かな月明りと、人影が二つ。

一つは地面へ倒れこんだ妙齢の女性、もう一つは立ったまま()()を見つめる小さな影。

伏した人影は動く気配を見せず、もう一つの人影は呼吸に応じて僅かに肩を揺らしていた。


「これで、わたしは……」


静寂の中、小さな声がこぼれる。

それは少年のような、それでいて少し高い声。

小さな影の傍らには、その身には似合わぬほどの()()()()が落ちていた。


声の主は、呼吸を落ち着けるように大きく息を吐くと、近くにあった木の根元へと体を預け座り込む。

両腕で抱え込むようにした姿から、表情を伺うことはできない。


「わたしは……」

繰り返す言葉は、少し震えていた。


「君は、成し遂げた」

それに応じるのは壮齢の男性のような声、少ししわがれている様な、太い声だ。

太い声の主は、姿も見せぬまま続ける。


「君は、見事成し遂げたのだ。

 君の殺したこの女性のおかげで、君は……」



「そんなこと私は望んでない!」



髪を振り上げ、少女は立ち上がった。

雲の隙間から差し込んだ僅かな月明りに、綺麗な緑色の瞳が反射する。


「君が望んでいるかどうかは、問題ではない。

 重要なのは、君が彼女を殺したという事実」


壮齢の声は、少し溜めて言葉を紡ぐ。


「君が、次のカロンだ……死の代行者、カロン。カロン・ナヴィータ」

「わたしは……」


その声を最後に、少女は再び木の根元へと座り込んだ。


「今は休め。どちらにしろ、もう運命は決まってしまったんだ」


暗闇に、僅かな衣擦れの音が響き、やがて止んだ。

森は再び、静寂に包まれた。




次回更新予定:11月13日

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